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    住まいに関する特集コーナーです。

    防火管理者、業者に委託

    消防対策、プロの目で

    • 巡回点検で、消火設備の扉が開くかチェックする防火管理者(東京都町田市で)
      巡回点検で、消火設備の扉が開くかチェックする防火管理者(東京都町田市で)

     分譲マンションで防火管理者のなり手がなく、専門業者に委託するケースが出始めている。

     防災のプロが防火対策に携わる安心感があるが、費用がかかるので居住者の合意が必要だ。

     働き盛りの家庭や高齢者が多いマンションでは防火管理者の選任が難航することが多い。消防計画の作成、消防訓練の実施など業務が多岐にわたり負担が大きいためだ。

     そこで、防火管理者の資格を持つ社員がいる会社に委託するケースが出てきた。マンション管理のコンサルタント会社「メルすみごこち事務所」(東京)は、数年前から委託を受け始め、現在、首都圏で約10件の物件を受け持つ。

     38戸が入居する東京都町田市のマンション。今年3月に防火管理者になった同社の鈴木隆晴さんは、まず避難経路図の作成や設備の点検などの消防計画を策定。これに基づき、通路に置かれた自転車の撤去を居住者に促し、消防設備の表示灯の交換を指導するなどの改善を行った。

     鈴木さんは「住人同士ではかえって遠慮してしまいそうな防火対策も、外部の人間なら進めやすい」と話す。マンションによっては年1、2回程度という建物内の巡回点検も、月1回行っている。

     管理組合の理事長は「防火を呼びかけるチラシを掲示するなど啓発にも力を入れてくれるので、居住者の意識も変わってきた」と話す。

     管理組合向けコンサルタント会社のシーアイピー(東京)のように、防火管理者の業務だけでなく、消防設備工事の見積もりのチェックやアドバイスを行うケースもある。

     メルすみごこち事務所の場合、委託費用は年間約11万円から。居住者数や店舗の有無などで異なる。委託には管理組合総会の決議が必要だ。「アンケートなどで居住者の意向を事前に確認しておくとよいでしょう」と鈴木さん。

     ただし、外部委託によって防火への取り組みが「業者任せ」にならないようにしたい。防火対策はもちろん、火災時の避難や、初期消火活動などを実際に行うのは居住者自身だからだ。鈴木さんは「消防計画を共有し、消防訓練などに積極的に関わる姿勢が重要です」と話している。

    選任率は75%止まり

     総務省消防庁の調べでは、防火管理者を置く必要がある全国の共同住宅(賃貸を含む)で、実際に防火管理者を選任しているのは2014年3月末現在、75%。消防計画の作成率も68%にとどまる。

     公益財団法人「まちみらい千代田」が13年度、東京都千代田区の分譲マンションに行った調査では、消防・防災訓練を実施していないと答えたマンションは70%に上った。大半は訓練が義務づけられているマンションとみられ、自主的な防火対策が十分ではない実態がうかがえる。

     東京理科大教授(建築・都市防災)の関沢愛さんは、「防火管理者は専門的知識が必要な上、居住者への指導など責任が重く敬遠されがち。管理組合などが支える体制があれば、担い手も増えていくのではないか」と話す。

    防火管理者

     消防法で、オフィスビルや共同住宅など多人数を収容する建物に選任が義務づけられている。分譲マンションでは50人以上が居住する場合が対象。消防計画の作成、消防訓練の実施、設備業者が行う消防設備点検報告書のチェックなどが主な業務。資格を取得するには消防本部などが行う1~2日の講習を受ける。

    2015年07月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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