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    住まいと暮らしに関わるニュースを掲載します。

    いま「たき火」が熱い! 身も心もポカポカ

     寒さが一層身にしみる今日この頃。職場では上司に「取材が甘い」と指摘され、家庭では妻に「家事が遅い」と小言を言われ、どこにも居場所がないと落ち込むときもある記者。そんなときに見つけたのが「()き火かたりBar~都会で焚き火コミュニケーションを体験する場」。身も心もポカポカにしてくれそうで、カメラ片手にふらっとのぞいてみた。(地方部 斎藤健二)

    コミュニケーション作りに一役

    • たき火を囲んで談笑する参加者たち
      たき火を囲んで談笑する参加者たち

     昨年11月下旬、東京駅から電車とバスを乗り継いで30分。会場の東京都江東区立若洲公園キャンプ場は夕焼けに染まっていた。

     主催するのは、一般社団法人日本焚き火コミュニケーション協会。2015年9月から毎月1回開くようになった。

     代表の三宅哲之さん(52)は学生時代、野外活動研究会でキャンプや野宿を体験し、夜には決まってたき火をした。異性の話などで本音がポロリと出るなど、相手の別の一面を知るのが楽しかったという。

     大手家電メーカーに勤めていた時、幹部に意見したのをきっかけに出世コースから一転、左遷人事とパワハラを受けてどん底に落ちた。そんなときでも家族や友人とたき火をしている時は、嫌なことを忘れられた。「たき火は不思議な力を持っていて、冗舌になったり、ぼーっとしたり、囲んでいると素の自分に戻れる」。学生時代から続けてきた、たき火を交えたコミュニケーション作りを思い立った。

    ゆらぐ炎、手料理・・・本音ポツリ

    • 会場となった若洲公園から見る夕日。日が暮れると「たき火仲間」が集まってくる
      会場となった若洲公園から見る夕日。日が暮れると「たき火仲間」が集まってくる
    • 主催する日本焚き火コミュニケーション協会代表の三宅さん
      主催する日本焚き火コミュニケーション協会代表の三宅さん

     午後5時半。日がすっかり暮れるとランタンに火をともし、たき火のスタートだ。参加費6500円で、薪、料理、酒は三宅さんら協会スタッフが用意する。

     この日集まったのは男性2人、女性6人の計8人。ほとんどが初対面だ。たき火を囲み、互いに参加のきっかけなどを語り始めた。「落ち着いて話ができそうなので」「私は人生の幅を広げたくて。たき火だと楽しい人が集まりそうでしょ」

     スタッフが近くの炊事場で調理したミネストローネやドリア、ビールやワインを味わいながら、徐々に本音も。「家族との時間も大事だけど、ひとりでこういう場に来たい時もあるの」。女性の言葉に皆が耳を傾ける。少し間をおいて別の女性がポツリ。「その気持ち、よくわかる」。ワイワイにぎやかに楽しむバーベキューなどとはひと味違う時間だ。

     火力が落ちたら、各自がまきをくべる。揺らぐ炎を見つめ、湯気がたちのぼる料理を胃袋に流し込むと、身も心も温かくなってくる。

    • 飲み物を手に乾杯。初対面でもすぐに打ち解け合える
      飲み物を手に乾杯。初対面でもすぐに打ち解け合える
    • スタッフが作った料理でおなかも心もほっこり
      スタッフが作った料理でおなかも心もほっこり

    肩ひじ張らずにいられる非日常空間

     東京都世田谷区の会社員伊東宏さん(59)は、今年12月に定年を迎える。仕事が忙しく、恋愛や結婚などやりたいことをできていなかった、と思うことがある。同居の母は3年前に亡くなり、今は独り暮らし。会社のような上下関係に縛られないつながりを求めていたとき、SNSでこれを知った。「参加したのは自分探しの意味もある」。炎を見たり語ったりするうち、新たな思いが芽生えた。「薪の用意から料理など、参加者が力を合わせて自前で準備するたき火をしたい。共同作業の中で、いいつながりが生まれるのでは」。定年後の人生の目標がおぼろげながら見えてきたようだ。

     埼玉県羽生市の会社員根岸輝枝さん(46)は、小学生の時、飯ごう炊飯で火を見ているのが好きだった。「変に思われると心配で、周りに言えなかった」。キャンプ場に行き、独力でたき火をするのはハードルが高かった。アロマキャンドルを試したり、薪ストーブのホームページを見たりしても「何か足らない」。たき火への思いは消えなかった。

     仕事でも遊びでも、人によく見られようと、肩に力が入ってしまうが、ここでは違う。火がゆらゆらしているのを見ているだけで心が安らぐ。会話が途切れても気にならない。初対面の人たちの中でもリラックスしすぎて眠りそうになったほど。「見上げれば星も見える非日常空間。肩ひじ張らずにいられる自分に気づき、新鮮だった」

    「火のゆらぎ」人間に快適?

    • 日本焚火学会が広島市で行った2014年大会
      日本焚火学会が広島市で行った2014年大会

     かつて日本の家には囲炉裏やかまどがあり、火は生活に欠かせなかった。たき火やキャンプファイアに人が集まる機会も珍しくなく、火は集まった人たちを親密にさせる役割を果たしてきた。

     大阪ガスエネルギー技術研究所は2004年、火の心理的な効用を検証するため、暖炉のある部屋とない部屋で被験者30人に会話してもらい、親密度に変化が出るかを比べた。すると被験者からは「暖炉がある部屋の方が話し相手との親近感が高まった」との回答が多かった。同研究所は「波や泳ぐ魚などと同様、火には人間にとって快適とされる『ゆらぎ』が含まれ、集中力回復など癒やし効果があると考えられる」としている。

     1993年に設立された日本焚火学会(広島市)は年々会員数を増やし、現在は約800人。たき火を囲んで語り合うことやたき火の技術を身につけることなどを目的とする。参加資格や会費はない。毎年、広島市で行われる大会には全国から100人以上が集まる。火の「ゆらぎ効果」の実験結果について同学会は、「たき火を囲む一体感や安心感が好き、と遠くから来る人もいる。こうした感覚が科学的に実証されたのでは」と納得している様子だ。

    現代日本ではぜいたくな遊び?

    • 燃え上がる炎
      燃え上がる炎

     消防法や自治体の条例などによる制限、環境意識の高まりなどから、特に都市部ではたき火はほぼ消滅した。「火の人間史」を教える和光大(東京都町田市)非常勤講師の関根秀樹さん(56)は「キャンプ場まで行って、たき火を楽しめる余裕のある人はわずか。現代の日本では、ぜいたくな遊びかもしれない」と話す。

     記者も気がつけば、煙まみれになっているのも構わず、たき火にのめり込んでいた。海外のボランティアキャンプでたき火を囲んで、皆で歌を歌った学生時代以来の体験。18年ぶりにたき火を囲み、食べ、語るうち、あの日味わった安心感やぬくもりがよみがえり、日々の生活で肩にのしかかっていた重い(よろい)を脱ぎ捨てたような気分になった。

     薪が燃える映像を8時間流したノルウェーのテレビ番組が視聴率20%を記録した、と話題になったことがある。たき火に魅せられて集うのは、人間であることの証明――と言ったら大げさだろうか。

    2017年01月25日 13時28分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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