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    住まいと暮らしに関わるニュースを掲載します。

    イクメンはつらいよ ~育児参加の現実~

     男性にも育児参加が求められる中、地域は知らず知らず子育てに取り組むパパたちを遠ざけていないだろうか。昨年、約3か月間の育休を取得する中で耳にしたのは「地域の育児環境は女性中心に作られている」という育休仲間のボヤキ節。そんな中で奮闘した体験をもとに、あえて“男目線”でリポートする。(地方部 斎藤健二)

    女性中心の「子育てひろば」

    • 渋谷区の「パパ・ママ入門学級」で沐浴(もくよく)指導を受ける男性
      渋谷区の「パパ・ママ入門学級」で沐浴(もくよく)指導を受ける男性
    • あい・ぽーとの「まちプロタイム」では、シニア男性が読み聞かせなどを行う
      あい・ぽーとの「まちプロタイム」では、シニア男性が読み聞かせなどを行う

     2004年から「子育てひろば(注)」における男性の利用状況を調査している長野県短大の金山美和子講師(幼児教育学)の元には、県内外から育児に携わる男性から様々な声が寄せられている。

     長野県の男性は、勇気を振り絞って足を運んだ「ひろば」で、女性スタッフから「お父さんは、子どもと一緒にお面をつけてアンパンマン体操を踊ってください」と言われて面食らった。「ママたちが踊らない中で、自分がさらし者にされた」気分だったという。新潟県の男性は「ママたちが自分を避けるように遠巻きに集まっていた」と、孤立感に襲われたことを打ち明けた。

     また、長野県内のひろば運営者は自治体の担当者に「男性の利用が増えている」と報告すると、「父親は『家族サービス』で普段行けない所に子どもを連れて行くのが務め。ひろばに来る必要はないのに」と言われ、あぜんとしたという。

     金山講師は「出産前後は、自治体主催の両親学級などで男性が子育てを学ぶ機会があるものの、地域のネットワークに入り込めないと、子の成長とともに学ぶ機会が減る。男性の育児推進にとって損失」と話す。

     記者も育休中、「外に居場所を作ろう」と、近所の子育てひろばへ毎日のように出かけた。利用者は運営スタッフを含め、すべて女性。育休宣言をした国会議員の不倫がニュースになっていた頃は、他の参加者にやたら話しかけるのも下心を疑われるようではばかられた。「親子の絆作り」と題した講座で講師が呼びかけるのは「お母さん」「ママ」ばかり。「父子に絆は必要ないのか」と反発したい気分にもなった。

     (注)子育てひろば 主に0~3歳児を子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育ての悩みを相談できる場として自治体やNPO法人が運営。2000年以降開設が相次ぎ、都内には2015年9月現在で871か所ある。男性の平日利用は、週に1人いるかどうかという所が多い。

    仕事と育児の板挟みでうつ症状も

    • 夫婦で子育てひろばを利用する浜田さん(左)
      夫婦で子育てひろばを利用する浜田さん(左)

     出産後のホルモンバランスの変化などが要因とされる産後うつが、欧米では2005年頃から女性だけでなく男性の間でも報告され始めた。日本でも仕事と育児の責任で板挟みになった男性の間で症状が出ているという。

     男性は仲間作りが苦手で、悩みを抱えたまま孤立しやすいとの指摘もある。2002年にひろばを開設したNPO法人東京ベーテル(江戸川区)の森木美佐子代表は、土曜日など男性が何人も利用する際には「会社は育休を取りやすいですか」などと共通の話題を振るようにしているというが、「パパ同士で会話がはずむ状況にならないのです」と指摘。「仮に長期の育休を取る男性が増えても、『孤育て』で煮詰まってしまうのでは」と危惧している。

     施設が醸し出す雰囲気も、男性には壁となることがある。東京都港区のNPO法人あい・ぽーとステーション代表理事の大日向雅美・恵泉女学園大学長によると、都内のある夫婦は一緒に子育てひろばに出向いたものの、クマやウサギのぬいぐるみが並んだ玄関に入ると、夫の様子が一変。「僕は喫茶店に行って2時間後に迎えに来るから、2人で楽しんで来なよ」とそそくさと去ってしまったという。

     このため2003年に開設された同ステーションのひろばでは、落ち着いた空間作りを重視。スタッフのエプロンや壁の色をベージュに統一してシックな調度品を置き、童謡だけではなく、クラシック音楽も流すようにしたという。「子育てひろばは親子で集う場所だが、どこも子ども目線でつくられている。母親たちにとっても、大人として憩える空間になっているとは限らないのです」と大日向代表理事は話す。

    シニア男性が活躍

    • 渋谷区の「パパ・ママ入門学級」には多くの男性が参加する
      渋谷区の「パパ・ママ入門学級」には多くの男性が参加する

     同ステーションのひろばには、ほかにもユニークな“仕掛け”がある。

     「まちプロタイム始まるよ」。平日の午後3時半、シニア男性の掛け声で読み聞かせや歌が始まった。この30分間、親子と遊ぶのは、「子育て・まちづくり支援プロデューサー(通称まちプロ)」のみなさん。同ステーションは2013年からシニア男性限定で計10日間の養成講座を開講。50人以上の「まちプロ」が、区内外の子育てイベントで活動している。その影響か、このところイベントに参加する若い父親の姿が増えてきたという。

     大日向代表理事は「団塊世代の男性は、企業人・組織人としての能力・習慣が身に付いていて、求められたことに対し、適切に応えようとするサービス精神が旺盛。職業経験がいい形で子育てに反映できるし、若い父親も参加しやすくなる」と全国各地で活動が広がることを期待している。

    飛び込んでみる勇気と好奇心も必要

     取材で訪れた東京ベーテルのひろばを夫婦で利用する自営業、浜田慎太郎さんは「一度夫婦で一緒に来ると、入りやすくなりますよ」と勧めてくれた。会社中心で生きてきた男性にとっては新しい世界。「何でも見てやろう」と飛び込んでみる勇気と好奇心も必要だ。居心地が悪いと感じることがあれば、その後にはっきり伝えて改善してもらうといい。

     また、ここに常駐するシニア男性の存在感が際立ち、ひろばの包容力を高めている気がした。父親が利用しやすいひろばは、同じく少数派の祖父母や外国人、引っ込み思案の母親らにとっても利用しやすいはず。ひろばで多様な人がつながれば、地域にもいい影響が出る。運営スタッフにシニア男性を活用することは、その一歩となるのではないだろうか。

    2017年01月27日 09時55分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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