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    住まいと暮らしに関わるニュースを掲載します。

    精度ほぼ100% 「人出」のスゴい数え方

    • 就任演説をするトランプ米大統領(2017年1月20日、栗原怜里撮影)
      就任演説をするトランプ米大統領(2017年1月20日、栗原怜里撮影)

     トランプ米大統領の就任式で、何人が演説を聞きに集まったかを巡り、トランプ氏側と米メディアで認識が大きく食い違い、激しい対立が生じた一件は記憶に新しい。ものすごくたくさんの人の数をちゃんと数えるのは大変だが、画像センサーなどによる計測システムを使えば、ほぼ100%の精度で把握できる。それを世界で最初に商用開発したという企業が、日本にある。またそうした技術を、避難誘導や混雑緩和など社会問題の解決に応用する研究も進められている。2020年東京五輪・パラリンピックに向けて注目度が高まりそうな「人流計測」の最前線をのぞいた。(配信部 横田博行)

    屋外イベントでは目測が主流だが…

     2016年隅田川花火大会約95万7000人、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックメダリストパレード約80万人、「カワサキ ハロウィン2016」(川崎市)パレード約13万人……。

     国内のこうした大規模イベントの来場者カウントについては、機械導入に関心を示す主催団体もあるが、サンプル地点に調査員を配置して、目測で得た数を積み上げるなどのマンパワー方式が今なお主流。主催者側は、過去の実績との照合など独自のノウハウで、実態を反映した数の算出に腐心している。

    画像から「人」だけを検出

    • 画像から人だけを検出し数えるシステムのサンプル映像から(技研トラステム提供)
      画像から人だけを検出し数えるシステムのサンプル映像から(技研トラステム提供)
    • 画像センサーによる人数計測システムのイメージ(図案提供:技研トラステム)
      画像センサーによる人数計測システムのイメージ(図案提供:技研トラステム)

     一方、1日の来場者数などを正確に把握したい商業施設や交通機関などでは、機械による自動計測の導入が進んでいる。

     画像から人だけを区別し、そこにいま何人いるかを素早く計測するシステムがある。「技研トラステム」(本社・京都市)(*注1)が1997年に商用に開発し、世界特許を取得した。

     個々の人がその場にとどまっている時間の長さ、性別や年代別の推定データも得られる。動物や自動車など、人間以外のものにも応用できる。 

     プライバシーに配慮し、画像は計測のためだけに用いられ、録画・保存されることはない。

     東京・原宿で商業ビルを運営する「ラフォーレ原宿」は、2001年からこのシステムを導入している。「時間帯別の来館者数や、お客さまが施設内にどれくらい滞留しているかが分析できるので、集客を伸ばす方法を検討したり、安全管理のための人員配置を考えたりするのに役立ちます」(清水寛館長)。

     米大統領就任式のような場でも、人数カウントに威力を発揮するだろうか。

     技研トラステム国内事業部東日本エリア(東京支店)の小森伸一課長は、センサー設置場所の確保など諸条件はあるとしたうえで、「技術的には可能です」と自信をのぞかせる。「雨が降って人々が傘を差したりすると、当社が掲げる97%という精度まではお約束できませんが、いま世の中にある他のどの方法よりも、正確性は担保できると思います」

    大手も独自技術を開発

     この「人流計測」を巡っては、大手の東芝や、日立製作所グループの日立情報通信エンジニアリングといった企業も、ここ数年で、高精度を誇る独自技術の開発に成功。近く本格的に市場展開していく構えを見せている(*注2)。

    避難行動をシミュレーション

    • 新国立劇場での避難行動研究用カメラの取り付け作業(2014年、大西さんの発表資料から)
      新国立劇場での避難行動研究用カメラの取り付け作業(2014年、大西さんの発表資料から)
    • 人流研究の立場から避難誘導支援をめざす大西さん
      人流研究の立場から避難誘導支援をめざす大西さん

     人流計測から避難誘導、混雑緩和など社会問題の解決にアプローチする研究者がいる。

     2014年8月、東京・新国立劇場で、ちょっと変わった趣向のオペラコンサートが開かれた。上演中に「地震発生」とのアナウンスを流し、観客にこうした公共の場所での避難行動を体験してもらおうというもの。

     その際、劇場からの呼びかけで、参加者約1300人の避難行動を撮影し、画像解析により分析したのが、工学博士で国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター(茨城県つくば市)の大西正輝・主任研究員(43)。「どこの施設も消防訓練を実施しますが、実際に人を集めてやるのは大変ですし、やっただけで終わってしまって、知見が蓄積されない。人流のデータを取ってコンピューターで何回もシミュレーションすれば、どうすると避難誘導に失敗するのかあぶり出すことができます」

     この避難体験付きコンサートで大西さんらは、群衆の中の一人ひとりを高精度で見分けられる3次元撮影カメラを40台、コンサート会場各所に設置し、避難開始から完了までの観客の動きを撮影。そのデータを基に、誘導員の配置や扉の開閉状況など、さまざまな条件下で避難のスムーズさがどう変わるかをシミュレーションした。

     「人の流れというのは不思議なもので、一度きれいな流れができると、それが誤った方向であっても、皆そちらについていく。限られた数の誘導員をうまく配置して、早いうちに正しい流れを作ることが非常に大事だとわかります」(大西さん)

    安全にどう生かすか…渋滞予測の「人間」版

    • 東芝の計測技術。人の頭が画像の中心からどの位置にあるかを基に、人数に応じた見え方を「密度」で捉える(イメージ図提供:東芝)
      東芝の計測技術。人の頭が画像の中心からどの位置にあるかを基に、人数に応じた見え方を「密度」で捉える(イメージ図提供:東芝)
    • 日立情報通信エンジニアリングの計測技術。レーザーを照射して人の距離、進行方向、移動速度を捉える(写真提供:日立情報通信エンジニアリング)
      日立情報通信エンジニアリングの計測技術。レーザーを照射して人の距離、進行方向、移動速度を捉える(写真提供:日立情報通信エンジニアリング)

     大西さんはもともと画像認識が専門で、遠隔講義・会議の映像を自動撮影でどう作るかを研究していた。人流に着目する今は、「非常に混雑している場所で人をどうさばくか」が中心的な研究テーマだ。

     2012年から毎年、福岡・山口両県の関門海峡花火大会で、福岡県側会場と最寄りのJR門司港駅を結ぶ動線の人流データを収集。たとえばゲリラ豪雨の際、雨宿りできる場所へ人が殺到し混乱するのを防ぐにはどうすればよいか、といった誘導支援のあり方を模索している。医療機関と共同で、救命救急におけるチーム医療スタッフの動きのあり方を探る試みも行っている。

     2020年には東京五輪・パラリンピックがあり、これまでにない人の流れや混雑が街に生じることも予想される。「言葉の通じない外国人も増える。そういう状況にどう対応していくかが、今後重要になると思います」と話す大西さん。「車の渋滞予測がありますが、それの『人間』版を作りたいのです」

    (注1) 「技研トラステム」 1966年、日米欧の新技術・特許製品を輸出入するベンチャー企業として出発。当初は防犯機器の製造販売を手掛けていたが、取引先から「来店者数を把握したい」との依頼が寄せられたのを機に、人数計測システムの開発に乗り出した。初期の頃は、人が乗ると反応する圧力センサーや、赤外線を使ったモデルだった。画像センサー方式は、ここ20年で処理速度の向上や装置の小型化など進化を遂げている。この秋、無線装置が組み込まれデータ転送が可能な新型センサーを本格導入するという。

     

    (注2) 「大手の独自技術」 東芝は、画像のある部分に何人映っているかを「密度」で捉え、それを基に集団の人数を算出する独自技術を開発。人同士が重なって見づらかったり、非常に小さく映っていたりといった状況にも強く、誤差の小ささにおいて「世界最高性能」を自負する。日立製作所グループの日立情報通信エンジニアリングは、画像撮影でなくレーザー照射で人の存在をとらえる独自の方法を編み出した。天候や場所の明るさなどに影響されず正確な計測が可能で、画像を使わないためプライバシーの問題も心配ないとしている。

    2017年04月26日 10時17分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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