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    幻の技「木目金」で世界で一つだけの結婚指輪

    • 木目金の魅力を語る、杢目金屋社長の高橋正樹さん(杢目金屋表参道本店で)
      木目金の魅力を語る、杢目金屋社長の高橋正樹さん(杢目金屋表参道本店で)
    • 高橋さんが研究のため、収集したり復元したりした木目金の工芸品
      高橋さんが研究のため、収集したり復元したりした木目金の工芸品

     刀のつばなどに使われていた幻の技術「木目金(もくめがね)」で「世界で一つだけ」の結婚指輪を作る職人たちが東京・渋谷にいる。高度な技術と手間がかかり、同じ模様は二つと作れないが、日本伝統の技を渋谷発の現代アートとしてアピール、和の味わいを持つ宝飾品として国内外で好評だ。(地方部 松崎美保)

    「二度と作れない」が好評

     制作しているのは「杢目金屋(もくめがねや)」(注)(https://www.mokumeganeya.com/)。研究者でもある社長の高橋正樹さん(48)の指導のもと、40人の職人が東京・渋谷の工房で作業にいそしんでいる。

     木目金とは、色の異なる金属を何重にも重ね合わせた地金を彫って鍛え、複雑な木目模様を生み出す技術。江戸時代初期に秋田のつば職人、正阿弥(しょうあみ)伝兵衛が考案したとされ、武士の刀を飾っていた。廃刀令などで技術の伝承が絶えかけた〝幻の技術〟だ。

     社長の高橋さんが木目金に出会ったのは、東京芸術大学美術学部2年生の頃。展示会で木目金の作品を目にし、人の意図を超えて金属が自然に作り出す味わいのある模様のとりこになり、独学で習得、研究を重ねてきた。

     同大大学院を修了し、1997年にたった一人で「杢目金屋」を創業した。

     「木目金」は、同じ模様は二度と作り出せない。それが、結婚指輪に独自性を求めるカップルの心をつかんだ。受注数は年々増加し、2016年は約5000組が購入した。以来、宝飾品を制作しながら木目金の研究を続け、現在はデザイン、職人の指導と、すべての作品の検品に携わる。

    • 木目のような模様が特色の「木目金」の指輪。杢目金屋ではオーダーメイドで手作りする。15〜20枚の貴金属の板を重ねて圧着し、彫ったり鍛えたりする工程を経て(写真右)制作しており、まったく同じ模様は技術的に二度と作り出せないという
      木目のような模様が特色の「木目金」の指輪。杢目金屋ではオーダーメイドで手作りする。15〜20枚の貴金属の板を重ねて圧着し、彫ったり鍛えたりする工程を経て(写真右)制作しており、まったく同じ模様は技術的に二度と作り出せないという

    知名度なく苦労も

    • 本社近くの工房では約40人が木目金の宝飾品作りにいそしむ
      本社近くの工房では約40人が木目金の宝飾品作りにいそしむ
    • 高橋さんは指導や検品を担当
      高橋さんは指導や検品を担当

     創業以来、口コミなどで徐々に注文が増えていったが、知られていない技術だけに、最初のうちは知名度の低さからスタッフ集めに苦労したという。

     技術の習得、研究にはさらに苦労した。400年前に考案されて以来、口伝で継承されてきたため、文献はほとんどない。あいまいな情報の中、高橋さんは昔の作品や材料を集めては調べ、試行錯誤を重ねた。銅や赤銅を使う伝統工芸品と違い、宝飾品には接合の難しい白金や金などを使う違いもある。

    古い作品復元して研究

     2005年からは、毎年一つずつ、刀のつばや小柄(こづか)を復元しており、研さんを欠かさない。「いにしえの作品から、当時の職人の工夫が見えてくる。その職人が身近にいるようで刺激的」と高橋さん。

     技術の伝承にも積極的だ。それも、「背中を見て覚えろ」という昔ならではの職人の世界とは違う。

     渋谷にある本社から歩いてすぐの工房では、約40人の職人を抱える。多くが美術大学や専門学校の卒業生だ。高橋さんは、複雑な工程を整理し、ヤスリを削る回数や研磨剤の量など、マニュアル化して指導している。

    もの作りの喜びを発信

     美大や芸大を出ても、食べていけるのは一握りという厳しい世界。「作ることが好きな若者に、作り続けられる場を提供したい。実社会で求められる、もの作りの喜びを知ってもらいたい」という思いがある。

     1枚の板から8の字形に作った一つの結婚指輪を、客自身が二つに「分かち合って」完成させる作品を2015年4月に始め、好評だ。来年7月に挙式を控え、杢目金屋の銀座の店舗でこの商品を購入した佐多究務さんと永井希依さんは指輪を分かち合って幸せそう。

     「一つのものからできていると実感できる」(永井さん)、「結婚式のケーキ入刀より先に共同作業ができることも他と違う」(佐多さん)と満足そうに話した。

    • 一つの木目金の板から作った指輪を客自身が二つに分けて作る商品を2015年4月から販売し、好評。そのコンセプトがグッドデザイン賞を受賞するなど各方面から高い評価を受けた
      一つの木目金の板から作った指輪を客自身が二つに分けて作る商品を2015年4月から販売し、好評。そのコンセプトがグッドデザイン賞を受賞するなど各方面から高い評価を受けた
    • 分かち合いの指輪を手にする佐多さん(左)と永井さん
      分かち合いの指輪を手にする佐多さん(左)と永井さん

     昨年からは結婚10年目の記念ジュエリーでも、客自らが工程のひとつに参加するサービスも始めた。海外からの申し込みも増えているという。

     創業以来、工房はずっと渋谷に置いている。「伝統技術ではなく、現代の技術でもの作りをしている感覚。感度の高い人が集まるこの地から発信していきたい」と高橋さん。幻の技術で、人の節目を彩る作品を、渋谷から世界へ作り続ける。

    (注)「杢目金屋」は1997年創業。ブライダルをメインに、木目金を使ったオーダーメイドジュエリーを企画、製造、販売する。表参道や銀座をはじめ、全国に直営店20店、正規取扱店31店を展開。資本金6000万円。社員数162名。2016年の売り上げは約19億円。

    • 購入者からの礼状
      購入者からの礼状
    • 和と洋が調和した店内(杢目金屋表参道本店)
      和と洋が調和した店内(杢目金屋表参道本店)

    2017年05月08日 13時06分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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