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    道の駅、アトリエ…生まれ変わる廃校舎

     少子化が進んで廃校となった小中学校の校舎が、芸術拠点や商業・宿泊施設など、地域活性化の拠点として生まれ変わるケースが増えてきた。都心部にも多く、住民らの憩いの場になっている。(配信部 大屋敷英樹)

    机、いす、黒板もそのまま

    • 2014年に廃校となった千葉県鋸南町立保田小学校の校舎(鋸南町提供)
      2014年に廃校となった千葉県鋸南町立保田小学校の校舎(鋸南町提供)
    • 千葉県鋸南町の位置
      千葉県鋸南町の位置

     「このイワシ、安くてピチピチ」「菜花もおいしそう」。詰めかけた買い物客らの声が弾む。

     千葉県鋸南(きょなん)町で3月18、19の両日開かれた特産市「ビッグマルシェ」。地場産品を住民が朝一番に運び込む手作りの市だ。鮮魚を扱うのはこの時が初めてで、市価の3分の1から5分の1の値段で並ぶマダイやヒラメが、飛ぶように売れた。

     市の会場は、富津館山道路の鋸南保田(ほた)インターチェンジ近くの道の駅「保田小学校」。その名の通り、廃校となった町立保田小学校の校舎を利用している。

     2014年、126年の歴史に幕を閉じた同小。その校舎を全面的に改築しつつ、机やいす、黒板、ピアノといった備品はそのまま残して、15年12月、農産物直売所やカフェ、レストラン、宿泊・温浴施設を持つしゃれた複合施設に生まれ変わった。施設責任者である道の駅駅長も、「校長」と呼んでいる。

    • 特産市でにぎわう道の駅「保田小学校」
      特産市でにぎわう道の駅「保田小学校」
    • シコイワシ詰め放題(1回300円)に群がる買い物客
      シコイワシ詰め放題(1回300円)に群がる買い物客

     総工費は約12億円(うち町負担は約3億円)。人口約8200人、一般会計予算が38億円規模の町には小さくない投資だったが、車だと都心から東京湾アクアライン経由で1時間強という地の利もあり、来場者は昨年約60万人。新規就農者や50人の地元雇用も生み、人口減に悩んでいた山あいの町が活気を取り戻した。農水産物の新たな販路開拓に向け、地域の期待は高まっている。

    • 「道の駅は町活性化の拠点。地元住民に愛される施設に」と強調する「校長」の大塚さん
      「道の駅は町活性化の拠点。地元住民に愛される施設に」と強調する「校長」の大塚さん

     ビッグマルシェを主催した「ようこそ鋸南プロジェクト」(町有志ら12人で組織)事務局リーダーの安田景憲(かげのり)さん(53)は「町が一丸となるシンボルで、品質の良いものを作れば売れるとみんな確信した。住民をもっと笑顔にしたい」と強調。年4回開催することも決めた。「校長」の大塚克也さん(57)も「地域振興の起爆剤に」と意気込んでいる。

    都心でも有効活用例

     廃校舎を有効活用した施設は都心にもある。

    ★プールを生き物の楽園に…原宿

    • 「ビオトープの手入れをしながら自然と癒やされている」と話す中野さん
      「ビオトープの手入れをしながら自然と癒やされている」と話す中野さん

     東京メトロ・表参道駅から徒歩7分、住宅街の中にたたずむ老人介護支援施設「ケアコミュニティ・原宿の丘」(旧渋谷区立原宿中)。陶芸や料理などの市民講座にも使われ、屋上はプールを転用したビオトープ(生物空間)が広がる。管理する「ヤゴの会」事務局長の中野慶子さん(70)によると、オオムラサキやスイレンなど100種以上が生息し、トンボやミツバチ、チョウの楽園となっている。カルガモやツバメが飛来することも。一般見学もOKで、好天ならビルの谷間から富士山も見える。「生物と触れ合う貴重な癒やしの空間。次世代に大切に引き継ぎたい」と語る。

    ★文化の発信拠点…湯島

    • 来場者が絶えない「アーツ千代田3331」
      来場者が絶えない「アーツ千代田3331」

     文化芸術活動の拠点となっているのは、東京・湯島の「アーツ千代田3331」(旧千代田区立練成中)。地下1階地上3階の旧校舎にはアートギャラリーなど芸術関係の13団体が入居。カフェや売店、屋上菜園もある。展覧会や講演会、ワークショップが盛んに開かれ、年間入場者は約80万人。担当者は「地域の祭りに参加して地元にとけこみ、常に新しく面白いことを行っている」と話す。

    外国人芸術家にアトリエ提供

    • 芸術の国際交流拠点に生まれ変わった「もりや学びの里」
      芸術の国際交流拠点に生まれ変わった「もりや学びの里」
    • 作成した動画をタブレットで児童に見せるマレーシア人芸術家 (アーカスプロジェクト提供 加藤甫さん撮影)
      作成した動画をタブレットで児童に見せるマレーシア人芸術家 (アーカスプロジェクト提供 加藤甫さん撮影)

     外国人芸術家と地域住民の交流の場にする試みも。茨城県守谷市の「もりや学びの里」(旧大井沢小)では、毎年8月から新進芸術家数人を招請。校舎近くに約100日間滞在してもらい、教室をアトリエにして自由に創作活動を行ってもらう。子供らの見学も自由で、ガイドツアーなど多くの交流機会もある。

     隣接する取手市に東京芸術大のキャンパスが進出したのを機に、「県南を芸術振興の拠点に」との構想が県と市で持ち上がった。1994年に始まり、31の国・地域から97人が参加した。昨年は中米エルサルバドルなど3か国の計3人が活動。マレーシア人芸術家は、市内外の住民の仕事・家庭・遊びをテーマに短編動画を57本作成したという。担当者の朝重(ともしげ)龍太さんは「現代芸術を難解と見る向きもあるが、ここなら住民が気軽に立ち寄れる。外国文化への理解も広がった」と手応えを感じている。今年3月末には、現在までの活動記録・資料を集めた図書サロンも作られた。

    「人材」「アイデア」「資金」がカギ

    • 「廃校は地域力を測るリトマス紙のような存在だ」と語る吉村さん
      「廃校は地域力を測るリトマス紙のような存在だ」と語る吉村さん

     廃校舎は、地域の「シンボル」にも「お荷物」にもなりうる。卒業生や住民の思い入れが強く、防災拠点としても利用価値が高い一方、もてあまして放置されるケースもある。学校がなくなったことで減った人口を呼び戻せないまま、地域崩壊を招きかねない。

     文部科学省によると、少子化や市町村合併で毎年、公立の小中高500校前後が廃校となっている。同省は廃校情報を公開し、各自治体側と利用を希望する企業やNPO法人、児童・老人福祉施設とのマッチングを後押ししている。2002~15年度に廃校になった6811校のうち現存施設5943校の71%(4198校)が福祉、文化、商業施設やオフィス、工場などに転用された。

     だが、学校建築に詳しい元東京電機大教授(建築計画学)の吉村彰さんは「実際に廃校を有効活用しているのは半数以下」と指摘する。廃校になると国から維持管理費が出なくなり、負担は市町村にのしかかる。吉村さんは全国の有効活用例を集めた同省の「廃校リニューアル50選」事業に携わったが、もともとは100件を選ぶ予定で臨んだのだという。

     吉村さんは「再活用には人材・アイデア・資金の3大条件が必要。地域や学校の特色を生かした施設にする工夫が大切になる」と強調。大規模空間を生かし、「役場や図書館、郵便局、コンビニ、福祉施設などを一つに集約する『まちのデパート』のようになれば理想的だ」と提案している。

    首都圏の主な廃校活用例

    ▽体験学習・宿泊施設に→「自然の宿 くすの木」(千葉県南房総市・上三原小) 竹・わら細工作りや陶芸・酪農体験などができる。6室48人収容。電話0470・47・5522

    ▽特産品販売施設に→「大子おやき学校」(茨城県大子町・槙野地小) 特産のお菓子「おやき」の実演販売を行う土産店兼食堂。そば打ちの体験教室も。電話0295・78・0500

    ▽文化財の拠点に→「茨城県埋蔵文化財センター(いせきぴあ茨城)」(城里町・北方小) 県の遺跡から出土した土器や埴輪を展示。電話029・289・3300

    ▽カフェに→「天空の 楽校 ( がっこう ) 」(埼玉県皆野町・日野沢小立沢分校)。秩父の山奥にあり、標高550メートルからの「絶景」がウリ。大きな角煮やしいたけなどが入った中華風「ちまき」が名物で、バーベキューコーナーも。電話0494・62・5431

    ▽産業育成拠点に→「IID世田谷ものづくり学校」(東京都世田谷区・池尻中) 産業振興や創業支援活動を行う。クリエイターやデザイナーのオフィス、カフェ、レンタルスペースも。電話03・5481・9011
    2017年05月17日 10時11分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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