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    各界で活躍する著名人に影響を与えた「1冊」に迫ります。

    ラグビー日本代表メンタルコーチを務めた荒木香織さん(1)

    南ア戦直前、「眠れない」選手が……

    • W杯の報告会でファンと一緒に写真に納まる日本代表(東京府中市で)
      W杯の報告会でファンと一緒に写真に納まる日本代表(東京府中市で)

     過去7大会のワールドカップ(W杯)でわずか1勝しかできなかったラグビー日本代表(21敗2分け)がイングランド大会で、その歴史を変えた。

     初戦で強豪・南アフリカを逆転サヨナラトライで撃破。スコットランド戦こそ落としたものの、サモアと米国を蹴散らした。「世紀の番狂わせ」と言われた戦いぶりは、世界のラグビーファンをのけぞらせ、数多くの日本人を興奮と感動の渦に巻き込んだ。

     腕ずくで勝利をたぐり寄せたのはもちろん選手たちだが、その指揮をとったのは鬼才とでも表現するしかないエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)。もうひとつ見逃せないのが、エディーがヘッドハンティングし、その分身として代表チームを磨き上げていったコーチたちの存在だ。

     そのうちの一人に、日本代表メンバーをメンタル面から支え続けた荒木香織(42)がいる。むくつけき男たちの中の紅一点、スポーツ心理学が専門の兵庫県立大学准教授だ。イングランド大会には、生後11か月の長男を連れて初戦まで帯同した。

     荒木は、代表選手の五郎丸歩がキック前に見せる「プレパフォーマンス・ルーティン」を二人三脚で作り上げた。マスコミでは、その点にばかりに焦点が当てられたが、他のプロスポーツでも聞き慣れないメンタルコーチのコンサルテーションとは果たして、どんなことをやるのだろうか。

     「時間とか場所とかはいろいろです。練習の前後とか、ご飯の前後とか、移動中とか……ちゃんと時間をとって1対1で話をすることもありますし。まあ、いろいろですけど、(メンタル面で改善する)内容とかアプローチについては、私が答えを出すことはないです。選手の話を聞いて、どうすることがいいのか2人で一緒に考えていきます。人それぞれですから……もしくは選手のオプションを自分で挙げてもらって、私が『この方法だったらいいと思うよ』とか、『これはこれをしてみようか』みたいな感じです。それに選手が『確かにそうですね』などと応じて、『じゃあ、これにする』みたいな感じで作業をします」

     話を聞くと、コーチというイメージがいきなり崩れていく。日本のスポーツでコーチと言えば、一方的に指示を出すことが多い印象があるからだ。

     その荒木の存在はNHKの番組で見知った程度だった。選手たちと同じ赤いユニホームとジャージーを身に着け、練習を終えた五郎丸の傍らに歩み寄っては、なにやら語りかける。失礼ながら、その姿はコーチと言うより、選手たちの世話を焼く女子マネジャーのようにすら見えた。

     京都にある荒木の実家で実際に会ってみて、印象はまた変わる。京都弁満載のおしゃべりで冗談を連発し、けらけらと笑う姿だ。その中に、研究者特有の観察眼で確信した日本代表、ひいては日本スポーツ界への切れ味鋭い直言が混じる。

     そんな荒木が日本代表に参加したのは、2012年からイングランド大会までの約3年半。五郎丸以外の選手へのコーチングはどうだったのか聞くと、荒木は守秘義務を理由に「読む人が読むと、誰のことだかすぐわかりますから」と難色を示した。そこを何とかと粘ると、しばらく考えた末に立川理道(はるみち)の例を紹介してくれた。

     立川といえば、南ア戦からアメリカ戦まで相手選手を泥臭くタックルし続け、大金星に貢献した選手だ。紹介してくれるのは、本人がコーチングの内容を報道陣に明らかにしていたからだという。

    2015年11月23日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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