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    各界で活躍する著名人に影響を与えた「1冊」に迫ります。

    ラグビー日本代表メンタルコーチを務めた荒木香織さん(4)

    エディー・ジョーンズ…ラグビーにとりつかれた男

     「クレージー」――。荒木はラグビー日本代表ヘッドコーチ(HC)を務めたエディー・ジョーンズをこう表した。正確には、この英語を意味する日本語を荒木は使うのだが、ここでは英語にしておく。

     ただ、それは仰ぎ見るほどの尊敬の念があっての表現だ。

     「話を聞くと、プロ野球・中日の落合さんも似ているそうですから、同じ行動の傾向を持った人たちなんでしょう。でも、そのくらいじゃないと世界で戦うことは無理。温和な監督では弱小チームが(ワールドカップで)3勝するまでいかないでしょうし。だから(日本代表の)スタッフ全員、変わっていますよね。『私だけ違う』って1人言うてますけど(笑)」

     エディーの情報収集力のすごさもよく知られたところだ。

     「勉強家ですね。(荒木が購読している)スポーツ心理学の学術誌があるんですけど、日本代表に関係する論文があると、私がエディーさんに渡すんですよ。読みますからね。次の会見とか選手に言うこととか聞いていると、ちゃんと読んでいて(笑)、自分のものにしているんだなあと。だから、専門的な研究論文もどんどん渡しました」

     サッカーや野球など他競技も詳しく研究している。1日24時間、ラグビーのことを考えている様子も、荒木の話から垣間見えてくる。荒木の研究分野に「完璧主義傾向」があるが、「エディーさんこそ完璧主義傾向の人だ」と、荒木は言い切った。

     「夜中の3時ごろにメールが来たりします。それで私が『エディーさん、エディーさん、ちゃんと寝ましょう。そんな時間にメールをしてはいけません』とか、『エディーさん、5時まで待ちましょう』とか……しばらくはそれができるんですけど、またできなくなってしまうんです(爆笑)。ずっと考えているんですね、ラグビーのこと。『おじいちゃんやから、早起きや』という言い訳を一時はしてましたけどね(笑)。メールが1日100個くらい来たりとかね」

    • 日本代表合宿でスクラム練習を見守るエディー・ジョーンズ(宮崎市内で7月7日撮影)
      日本代表合宿でスクラム練習を見守るエディー・ジョーンズ(宮崎市内で7月7日撮影)

     こんな調子だから、振り回される周りの人は心配するやら、怒り出すやら、あきれるやら。どこまでもラグビーにどっぷり漬かるから、冒頭の言葉もうなずけるだろう。

     「だから私が『エディーさん、アカンよ。ちゃんとリフレッシュしてくださいって』。何かすることがリフレッシュではないと思うんですけど、『分かった』と言って岩盤浴行ったり、水泳行ったりしてしまう人なんですよ(笑)」

     選手たちには時に不条理と呼べるほどのトレーニングを課した。選手たちはどう受け止めていたのだろうか。

     「やっぱり、きつかったと思います。すごい練習量でしたから。すごい雰囲気でした。悲壮感が漂ってましたからね。なかなか前向きにはなれない雰囲気でしたけど、そこは(キャプテン、副キャプテンなどで構成する)リーダーズのミーティングを中心に少しずつでも前向きに進んでいけるように、選手たちは1日を過ごしていましたので。うーん、あれだけ必要だったかは分からないですけど、メンタルタフネス、特にレジリエンス(精神的回復力)を得たとは思いますね」

     そんなエディーが2013年10月、脳梗塞で倒れた。その後復帰したが、病状は大したことはなかったのだろうか。

     「大したことあったと思います。チームマネジャーの大村(武則)さんがちゃんと手配して病院に届けたので……でも、危なかったですよね。それでもリハビリして復帰できたのはすごいと思いますよ。まともに歩けなかったですからね。あれだけ普通に……普通でしょ。相当努力したんだと思います」

    2015年11月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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