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    旅の専門誌「旅行読売」から、旅に役立つ特選情報をお届けします。

    温泉街を青紫色に彩るジャカランダ…静岡県熱海市

    6月上旬~中旬が見頃

    • 親水公園前の歩道に立つジャカランダ(過去の満開時の写真)
      親水公園前の歩道に立つジャカランダ(過去の満開時の写真)
      ジャカランダとは?
     南米原産。ノウゼンカズラ科の花木で和名は 紫雲 ( しうん ) ( ぼく ) 。南米には数十種が分布する。大きなものは樹高30メートルになるものも。アフリカンチューリップツリー( 火焔 ( かえん ) 木)、ポインシアナ( 鳳凰 ( ほうおう ) 木)とともに世界三大花木のひとつに数えられる。花の形はラッパ状。花言葉は「光栄」や「名誉」だ。

     熱海の海岸から程近い「ニコリーフ」という名前のこぢんまりした洋菓子店に、見たこともないような鮮やかな青紫色の焼き菓子が並んでいた。 どうやったらこんな美しい色に焼き上がるのか。店主の越地孝さんは「食用にできる自然素材で紫色が出せるものは限られています。紫芋を使って一枚一枚丁寧に焼き上げています」と言う。

    自然素材による紫色、こだわりの焼き菓子

    • 「ジャカランダのさんぽ道」を手にする越地孝さん。2枚入りの袋が七つ入って1箱1080円
      「ジャカランダのさんぽ道」を手にする越地孝さん。2枚入りの袋が七つ入って1箱1080円

     2014年6月に、海岸沿いに「ジャカランダ遊歩道」が完成。熱海菓子組合に属している越地さんは、熱海市観光協会の親しい友人からこんな相談を受けた。「これから観光資源となっていくジャカランダにちなんだお菓子ができないか」。「それならば」と一念発起して作り上げた。

     名付けて「ジャカランダのさんぽ道」。少し火が入り過ぎると茶色っぽくなってしまうので、目が離せない。色と味にこだわり続ける理由はこうだ。

     「ジャカランダの青紫色の花は、葉の緑の中で映えて美しい。その花を見に来た人に、『きれいな青紫色だったなあ』というイメージを少しも壊さずに持って帰ってもらいたい。土産としてプレゼントされた人にも『ジャカランダはこんな青紫色なんだ』ということが伝わってほしい」

     昨年6月、青紫色の花が咲き誇るジャカランダ遊歩道で開催された「ATAMIジャカランダフェスティバル 2017」で出張販売した越地さんのテントの中には、忙しく働く妻・千春さんの姿があった。

     千春さんは、ジャカランダ遊歩道の完成後、お菓子作りの参考にと、スマートフォンでジャカランダの花のアップや景観を丹念に撮影し続けている。

     「もともと紫色系統が好きで、洋服や小物もついついそういう色のものを選んでしまうほどだったので、ジャカランダの花を見ていると、ずっと眺めていたいほどうっとりする」という。しかし、ジャカランダの花の前にいる時は、写真撮影や出張販売など、仕事絡みのことが多く「すぐ現実に引き戻される」と笑う。「今年は、お店の定休日に出向き、ジャカランダの見えるカフェでのんびり優雅な時間を過ごしたい」

     熱海市公園緑地課職員、戸塚二男(つぎお)さんの案内で、ジャカランダ遊歩道を歩いた。すると何度も、観光客から「『お宮の松』はどこですか」と尋ねられた。

    • 「お宮の松」と「貫一お宮の像」
      「お宮の松」と「貫一お宮の像」

     明治時代に大人気だった新聞小説「金色夜叉」で、主人公・間貫一が、ほかの男性との結婚を決めたお宮を蹴飛ばしたとされる所である。「貫一お宮の像」もある。この小説で熱海は一躍、大観光地になった。ジャカランダ遊歩道は、その魅力をさらに増すことになりそうだ。

     散歩道には「カスカイス市・熱海市 国際姉妹都市提携記念樹木」の銘板があった。1990年に、姉妹都市のポルトガル・カスカイス市から贈られ、植えられた苗が、この散歩道作りのきっかけだ。2014年の散歩道完成式にはポルトガル大使が出席した。その後、青紫色の花の在来種に加え、宮崎県日南市で育成された、青みがかった色の花の苗(日南ブルー)やピンクがかった色の苗(日南ピンク)も植えられ、一帯のジャカランダは100本以上になった。

    ビーチ脇に植えた苗木、将来は海水浴客に木陰を

    • 散歩にぴったりのジャカランダ遊歩道
      散歩にぴったりのジャカランダ遊歩道

     隣接する親水公園前の歩道にもジャカランダの街路樹が続くのだが、熱海市職員の戸塚さんが、その手前で、ビーチの脇の砂地に植えられたジャカランダの苗木を指さした。

     「砂地でジャカランダが根を張り、成長してくれたらなあ、と夢見ています。ビーチを背景に6月頃に咲く花もきれいでしょうし、夏に海水浴に来た人たちが木陰に入っている。そんな姿が目に浮かぶんですよ」

     ジャカランダ並木を眺めながら親水公園を歩くと「ワカガエルステーション」の看板がかかった建物があった。熱海市観光協会である。中に入ると観光パンフレットなどと並んで、「熱海百景シリーズ」の絵はがきが販売されていて、その中にはジャカランダ遊歩道が描かれたものもあった。

    花が頭に落ちると幸せが訪れる

     観光協会の稲村誠事務局長は「梅雨の時期は熱海の閑散期にあたるので、ジャカランダが新たな魅力になれば」と期待をかける。

     昨年6月の「ジャカランダフェスティバル」では、期間中の3度の週末に、合わせて2万人以上の人出があったという。ここのところ、熱海のジャカランダの知名度がだんだん上がってきており、「全国ネットのテレビ番組で取り上げられたこともある」という。

     「ATAMIジャカランダフェスティバル2018」は6月9~24日に開かれる。

     「ジャカランダの花が頭に落ちると幸せが訪れる」との言い伝えがあるというので、俄然(がぜん)行きたくなった。ジャカランダの木の下で、花が頭に落ちてくるのを待つのも楽しそうだ。

     そして、紫色の花の姿をまぶたに焼き付けて、焼き菓子「ジャカランダのさんぽ道」を土産に持ち帰るとしよう。

     文/藤原善晴

    熱海菓子工房 ニコリーフ
    電話0557・81・8066/10~19時/火曜休
    熱海市観光協会(ワカガエルステーション)
    電話0557・85・2222/4~9月は9時~17時30分/無休
    https://www.ataminews.gr.jp/

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    2018年05月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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