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    「暗い」「汚い」今は昔 進化する公衆トイレ

     繁華街や駅、デパートなど、公衆トイレの快適さが格段に増している。東京五輪を視野に、自治体や企業がイメージや知名度アップを図るため、温水洗浄便座の設置や消臭対策などを進めているからだ。一方、市民や団体も「より快適で不自由のないトイレ社会の到来」を目指し、独自に情報の収集や発信を続けている。(地方部 斎藤健二)

    改修と掃除で臭い抑える

    • 15年11月にリニューアルした西武池袋駅のトイレ
      15年11月にリニューアルした西武池袋駅のトイレ
    • JR恵比寿駅西口にある公衆トイレ。入り口の看板に企業名が掲出されている
      JR恵比寿駅西口にある公衆トイレ。入り口の看板に企業名が掲出されている

     JR山手線・恵比寿駅西口に地元の渋谷区が設置した公衆トイレがある。明るく清潔で、嫌な臭いがほとんどしない。2013年に改修され、以来、「カンセイトイレ」との名称を得た。

     改修を区から請け負ったのが、下水道管メンテナンス会社の「管清(かんせい)工業」(世田谷区)。改修とその後の清掃業務、さらに命名権購入をセットにして区に提案し、受け入れられた。

     「公衆トイレが敬遠される第一の理由は臭い。臭いを抑えるのが何より大事」(同社担当者)と、便器や排水管を自社技術で清掃し、臭いを出にくくした。区が行う毎日2回の清掃以外に週1回の「点検」、高圧洗浄機などを用いた年4回の「大掃除」も行っている。

     同社が名乗りを上げた動機は知名度アップ。担当者も「社名と高い技術をもっと知ってもらい、新たな受注につなげたい」と明瞭だ。

    整備費用 命名権で確保

     渋谷区にはずっと住民や観光客から「公衆トイレが汚い」との苦情が寄せられていた。費用の捻出も難しかったため、09年度以降のトイレ整備から「命名権」を導入。東京五輪を念頭にトイレ整備をさらに進める方針だ。「世界中の人が集まる場所に快適なトイレをつくれば、国際観光都市としてアピールできる」と、区のイメージアップを狙う。

     企業名が付いた競技場は多いが、トイレはまだ珍しい。命名権を利用した公衆トイレの改修整備は横浜市、埼玉県和光市などへと広がりを見せる。

    香りとBGMで癒やしの雰囲気

    • 恵比寿駅西口のトイレの内部。臭いを抑えるために使った技術をパネルで紹介している
      恵比寿駅西口のトイレの内部。臭いを抑えるために使った技術をパネルで紹介している

     駅のトイレもイメージはいま一つ。それがだいぶ変わってきた。西武鉄道は、12年に首都圏の鉄道で初めて温水洗浄便座の全駅設置計画を発表した。

     最大拠点の池袋駅のトイレも15年11月に改修が済んだ。着替えのスペースを設けたり、柑橘(かんきつ)系の香りとBGMで癒やしの雰囲気を演出したり。同社広報部も「快適なトイレは会社と駅のイメージアップに重要」と、渋谷区と同じ考えだ。

    温水便座の有無 市民が独自調査

     一般にトイレへの関心は男性より女性が高い。首都圏を中心に各地の公共施設、デパート、飲食店などでの温水洗浄便座の設置の有無を独自に調べた50代の女性が和光市にいる。

     15年前、直腸がんを患ったのがきっかけだった。排便の際は外出先でも温水洗浄便座が必要になった。そこでがん仲間らと協力し、飲食店など考えられる外出先にメールなどで問い合わせた。

     集まった回答は「データベース」としてインターネットで発表している。女性は「病気の人もそうでない人も、女性はトイレの快適性も観点にお店を評価する。その声を街づくりや店づくりに反映させてほしい」と望む。

    • 渋谷区が命名権を販売して、改修したトイレ
      渋谷区が命名権を販売して、改修したトイレ
    • 15年11月に改修された西武池袋駅の男子トイレ
      15年11月に改修された西武池袋駅の男子トイレ

    行列解消へ利用者のデータ収集

    • トイレの行列解消に向けて、NPO法人checkが行う実証実験を知らせる紙とセンサー
      トイレの行列解消に向けて、NPO法人checkが行う実証実験を知らせる紙とセンサー

     イベント会場でも、女性用トイレには長蛇の列ができる。江東区で昨夏開催した「あみゅ博」。屋外広場にウォータースライダーなどのアトラクションをそろえ、にぎわっていた。

     NPO法人「check」(金子健二代表)は仮設トイレメーカーと共同で、女子用仮設トイレの利用者数や使用時間などのデータを集めた。

     データは、いろいろなイベント主催者に、規模に応じた仮設トイレの必要数や場所を考えるための参考情報として提供する予定。

     金子さんは「データは東京五輪はもちろん災害時など、仮設トイレ設置時に役立つ。実験を重ねれば渋滞予報も出せるようになり、高齢者や頻尿に悩む人も外出しやすくなる」と意義を説明する。

    「トイレ弱者」支援へ活動

    • 外国人のトイレ利用をテーマにした日本トイレ研究所主催の勉強会
      外国人のトイレ利用をテーマにした日本トイレ研究所主催の勉強会

     快適で、必要な数と十分な機能の公衆トイレを望む声は、社会的弱者こそ強い。

     NPO法人「日本トイレ研究所」(加藤篤代表理事)は09年から、トイレの環境改善、教育など様々な活動を展開している。

     15年には東京五輪を念頭に、外国人をはじめ高齢者、身体障害者らに公衆トイレに関するアンケートを実施した。約2000件の回答から「まだまだ公共のトイレは和式が多いが、高齢者にはきつい」などの問題点をホームページに順次公表している。

    コスト増の解決策必要

    • 公共のトイレ充実にはコスト増への対応が必要、と話す東京学芸大の小澤紀美子名誉教授
      公共のトイレ充実にはコスト増への対応が必要、と話す東京学芸大の小澤紀美子名誉教授

     仮設トイレや学校のトイレもまだ和式が多い。環境学が専門の東京学芸大・小澤紀美子名誉教授は「温水洗浄便座に慣れてしまった人の中には、和式をいやがって排便せず、便秘になったり、ストレスを抱えたりしまうケースも目立ってきた」と新たな課題を挙げ、公衆トイレの充実についても「やはりコスト増の解決策を見つけなければ」と指摘する。

    2017年01月30日 10時16分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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