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    見に行こう! 女装の男が疾走する奇祭

     東京都江戸川区東葛西に伝わる「(いかづち)の大般若」(今年は2月26日開催)は、女装した男たちがお経の箱を担いで町内を駆けめぐり、家々で無病息災を祈る祭りで、江戸末期から続く。楽しい祭りだが、病気の妹の回復を祈る兄の思いが女装のいわれという。(地方部 池田創)

    「病気の妹に代わって女装」説

    • 奇抜な格好をして町内を駆けめぐる男たち。持っているのは大般若経(江戸川区提供)
      奇抜な格好をして町内を駆けめぐる男たち。持っているのは大般若経(江戸川区提供)

     雷の大般若は江戸時代末期にコレラが流行した際、同地の真蔵院(しんぞういん)の和尚が大般若経を背負って家々を回ると収まったことに由来すると伝えられる。ある時、結核に冒された妹になり代わり、兄が妹の長じゅばんを着、化粧をして参加し平癒を祈ったという説があり、男たちは女装するようになったという。コレラも結核も、かつては不治の病とされていた。

     前夜には真蔵院で大般若経600巻を転読(一部を読んで全体を読んだことに代える)し、成功を祈る。当日早朝、美容室で口紅、おしろい、アイシャドーなどで化粧し、真蔵院に集合。奉納された酒を酌み交わした後、ワッショイの声をあげて町内を巡る。

    • 病気の妹のために兄が化粧をして厄払いしたのが女装の始まりといわれる(江戸川区提供)
      病気の妹のために兄が化粧をして厄払いしたのが女装の始まりといわれる(江戸川区提供)
    • 住宅地図にはルートを記した書き込みがびっしり。喪中の家は回らないなどの決まりがあり、綿密に計画が立てられる
      住宅地図にはルートを記した書き込みがびっしり。喪中の家は回らないなどの決まりがあり、綿密に計画が立てられる

    祭りの後は銭湯で化粧落とし

    • 訪れた家々で男たちはお札などを渡して無病息災を祈る(江戸川区提供)
      訪れた家々で男たちはお札などを渡して無病息災を祈る(江戸川区提供)

     祭りが行われる東葛西4、9丁目は旧町名を「雷」という。祭りの中心となる真蔵院にまつられる秘仏「雷不動」に由来する。現在は区画整理された道路が直角に交わり、アパートなどが整然と並ぶが、かつては漁師町だった。

     昭和の時代に入り、祭りは一時期途絶えたが、約40年前に地元有志が復活させた。現在は区指定無形民俗文化財に認定され、2月27日前後の日曜日に毎年実施されている。

     地元住民によると、昔は家の中にござを敷いて招き入れ、裏口まで走り抜けたこともあったが、現在は住宅事情もあり、玄関先で男たちが札や餅などを渡した後、三本締めをして無病息災を祈る。午前9時~午後4時の約7時間で約500軒、約12キロを駆けめぐる。

     参加するのは地元の20~50歳代の男たちで構成される「(らい)友会(ゆうかい)」のメンバー約30人。祭りの後には全員が銭湯に赴いて化粧を落とし、文字通り「裸のつきあい」をする。吉野正敏会長(47)は「参加をきっかけにあいさつをするようになるなど、祭りは町会の絆をつなぐ大事な存在になっている」と語る。

    化粧係は美容室の3代目

    • 親子3代にわたって男たちの化粧を担ってきた小口直華さん
      親子3代にわたって男たちの化粧を担ってきた小口直華さん

     小口(おぐち)直華(なおか)さん(38)は、祖母の代から続く美容室の3代目。当日は朝5時過ぎから続々と集まる男たちの化粧を担う。

     子どもの頃は祭りは大の苦手だった。知らないおじさんたちが化粧をして大声で走り回り、家の戸をたたく。「怖くて、祭りの日には家の中に隠れていたんです」と苦笑する。

     2年前に念願だった自分の店「hair make Tres」(ヘアー・メイク・トレス)を東葛西に開店。2月になると全速力で町内を汗だくで走る男たちのひたむきな姿を見て、祖母、母が担ってきた「化粧係」を継ぐことを決意した。

    • 汗で流れないように化粧は濃いめに施される(江戸川区提供)
      汗で流れないように化粧は濃いめに施される(江戸川区提供)
    • 昭和25年頃。祭りはこの後に1度途絶えたが、地元有志が復活させた(真蔵院提供)
      昭和25年頃。祭りはこの後に1度途絶えたが、地元有志が復活させた(真蔵院提供)

     通常の女性と同じメイクでは、走っている間に汗で落ちてしまうため、「濃すぎるぐらいがちょうどいい」という。男たちは午前8時45分までに寺に集合しなければならず、時間との勝負だ。当日は早朝からスタッフら5人態勢で臨む。

     参加者の中には学生時代の友人や後輩もおり、久しぶりの再会とともに、「ありがとう」と声をかけられるのが何よりうれしいという。「今後も裏方で、祭りを支えていきたい。参加する皆さんには、当日に向けてお肌のコンディションを整えてもらえるとうれしいかな」と笑った。

    【メモ】今年の「雷の大般若」は、2月26日午前8時45分から東葛西4の38の9の真蔵院で。豚汁のふるまいあり。終了は午後4時頃の予定。真蔵院までは東京メトロ東西線「葛西駅」から徒歩約12分。祭り当日は交通規制が行われるため、公共交通機関の利用を推奨。
    2017年02月17日 12時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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