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    飲んで騒いで厄払い 山里に伝わる葬式祭り

     埼玉県秩父市(しも)久那(くな)地区に伝わる「ジャランポン」(今年は3月12日開催)は棺おけに死に装束の人が入り、僧侶になりきった住民がもっともらしくお経をあげたり、皆でお酒を飲んだりと、大騒ぎの葬式をして厄払いをする、ユーモアあふれる祭りだ。(地方部 池田創)

    疫病退散の人身御供が始まり?

    • 葬式で鳴らす鉦や太鼓の音から「ジャランポン」と呼ばれるようになった(昭和30年頃)=住民提供
      葬式で鳴らす鉦や太鼓の音から「ジャランポン」と呼ばれるようになった(昭和30年頃)=住民提供

     葬式祭りの起源は江戸時代中期(1711年頃)まで遡る。地元住民によると、集落内に赤痢が流行した際、諏訪神社に人間のいけにえ(人身御供(ひとみごくう))として若い娘をささげて祈願したことが始まりという。厄払いの行事として定着し、神社の例大祭として毎年3月15日前後の日曜日に開催されている。会場で打ち鳴らす(かね)や太鼓の音から「ジャランポン」と言われるようになった。

     元々は神道と仏教が混在した「神仏習合」の行事で、江戸時代末期までは近くの寺で葬式を行い、棺おけを諏訪神社に運んでいたが、明治時代の神仏分離で寺は廃された。人身御供役はいつしか男性になり、厄年や大病をした人物が地区内から選ばれる。

     祭りの行われる秩父市下久那地区は78戸の小さな集落。参加者は日中、地区内の下久那公会堂で宴会をして、にぎやかに過ごす。祭りの本番は午後6時頃からで、「空 悪疫退散居士」と書かれた位牌(いはい)などが並べられる。死に装束を着た人身御供役は観客から三途(さんず)の川を渡る足代としてお金をもらい、納棺される。

     葬式では大僧正役の住民が適当なお経を唱えつつ、人身御供役の経歴や人柄を紹介、斎場の公会堂は笑いに包まれる。午後7時頃になると、住民は葬列を組んで、近くの諏訪神社に向けて出発。神社の本殿前で参加者全員で万歳をして無病息災を祈願、祭りはフィナーレを迎える。

    • 「空 悪疫退散居士」と記された位牌。棺おけの前に置かれる
      「空 悪疫退散居士」と記された位牌。棺おけの前に置かれる
    • 人身御供役はいつしか男性が務めるようになった。厄年か大病をした人物が地区内から選ばれる(昭和30年頃)=住民提供
      人身御供役はいつしか男性が務めるようになった。厄年か大病をした人物が地区内から選ばれる(昭和30年頃)=住民提供

    観客の笑いを誘う大僧正役

    • 大僧正役を務める川島さん
      大僧正役を務める川島さん
    • 長年使われてきた棺おけ。「御供」と記されている
      長年使われてきた棺おけ。「御供」と記されている

     「ビールもう1杯ちょうだい」「今年はインドで修行してきた」――。下久那区長の川島康助さん(65)は、おおげさな身ぶりで、観客の笑いを誘う大僧正役を務める。「司会進行も兼ねる重要な役割。台本がないから、頭を使います」と笑う。

     急に体調を崩した前任者の指名で、7年前に大僧正役を引き継いだ。依頼されたのは祭りの10日前で、「準備もできていなかったので、まごつきました」。しかし、元々が話し好きな性格。冗談を言いつつ、いかにその場を持たせるかという楽しさにとりつかれていった。

     お経は経典を読み込み、いつの間にか暗記した。本番では、最初のうちはちゃんとお経をあげ、だんだん勝手なアレンジを交えて笑いをとるのだという。

     ジャランポンは別名「葬式祭り」だが、悲壮感はなく、会場は笑いと騒がしさに包まれる。近年は全国で地震や土砂崩れなどの災害が相次いだため、「全国各地の人々にこの笑いを届け、元気になってもらいたい」という願いを込めて、演じてきたという。

    • 冗談を交えつつ、大僧正役を演じる川島さん(中央)=2015年、下久那公会堂で
      冗談を交えつつ、大僧正役を演じる川島さん(中央)=2015年、下久那公会堂で
    • 葬式終了後、参加者は神社に移動し、万歳して祭りは終了する(2015年)=住民提供
      葬式終了後、参加者は神社に移動し、万歳して祭りは終了する(2015年)=住民提供

     今回の取材を機に、神社の本殿内を点検した際、氏子の名を記した明治時代の木の板を発見。祖父の名もあり、古くから地域で受け継いできた祭りだと再認識した。「観客の皆さんに楽しんでもらえるのが何よりうれしい」。70歳を目標に、今後も不思議なお坊さんを演じていく。

    【メモ】今年の祭りは3月12日午後6時頃から、下久那公会堂で。甘酒のふるまいあり。終了は午後8時頃の予定。会場へは、秩父鉄道・影森駅から車で5分または徒歩15分。
    2017年03月08日 16時26分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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