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    新橋芸者の心意気 一見大歓迎「東をどり」

    • 東をどりの舞台(昨年)
      東をどりの舞台(昨年)

     銀座には、今も花街の文化がある。そこで活躍しているのは、質の高い舞踊で「芸の新橋」と評される新橋芸者だ。普段は「一見(いちげん)お断り」で会えないが、年に1度だけ、「一見大歓迎」となる舞台「(あずま)をどり」の幕が、5月25日から新橋演舞場(東京都中央区銀座)で開く。93回目の今年は、2人の新人がデビュー。本番間近の稽古場を訪ねた。(地方部 松崎美保)

    総監督は日本舞踊の若き家元

     「柔らかく、慌てないで」、「もっとハッピーに」

     初日を2週間後に控えた5月中旬。高級クラブやレストランが並ぶ銀座8丁目のビルに入る稽古場では、今年の東をどり総監督を務める日本舞踊尾上流四代目家元、尾上菊之丞さんの声が響いた。

     尾上さんのすぐ後ろでお姉さんたちの踊りを食い入るように見つめるのが、小優(こゆう)さんとたまきさん。2人は昨年3月に、新橋に来たばかりの新人だ。

    • 東をどりに向け、尾上菊之丞さん(右)の厳しい指導が続く(東京新橋組合稽古場で)
      東をどりに向け、尾上菊之丞さん(右)の厳しい指導が続く(東京新橋組合稽古場で)

     芸者は「置屋」という、角界における相撲部屋のような所に所属し、ほぼ毎日、朝から踊りや三味線、茶道などの稽古を積む。夕方になると支度をし、料亭での宴席でお酌をしたり、余興を披露する。最初の1年は必ず置屋に住み込みで見習い修業し、お酌さんとも呼ばれる「半玉(はんぎょく)」としてお座敷に出た後、一人前の「芸者」になるのが伝統的。今は半玉を経ない人もいる。

     毎年志望者からの問い合わせが約20件寄せられるが、履歴書を送り、面接を経て採用にいたるのは数年に1、2人という。

    稽古に励み2人がデビュー

    • 芸者になったばかりの小優さん(右)と半玉のたまきさんが、東をどりにデビューする
      芸者になったばかりの小優さん(右)と半玉のたまきさんが、東をどりにデビューする

     芸者になったばかりの小優さんは、福岡県出身。看護学校の学生だったが、成人式を間近に控えて「自分が本当にしたいことは何なのかと考えていた頃、偶然芸者さんの画像を見て日本文化にひかれ」進路を急転換。芸事は全くの未経験だったが、インターネットで調べて直接問い合わせた。

     半玉のたまきさんは、母親の影響で5歳から花柳流の日本舞踊を習っていた。同じ稽古場に通ってきていた芸者さんに憧れ、「芸は新橋」と、師匠のつてで新橋入りした。

    「新橋は花街全部が家族」

    • お姉さんたちと談笑するたまきさん(右)高校卒業後、新橋入りした期待の19歳
      お姉さんたちと談笑するたまきさん(右)高校卒業後、新橋入りした期待の19歳

     2人を厳しくも温かく見守るのは、置屋の「お姉さん」。小優さんが所属する「菊森川」の小喜美さんと、たまきさんが所属する「千代田」の加津代さんは、いずれも芸者歴半世紀の、新橋を代表する芸者だ。「新橋全部が家族」(加津代さん)との言葉通り、置屋や流派は違えど、お姉さんが後輩を注意したり面倒を見たりする文化がある。

     新橋の料亭と置屋などで構成する「東京新橋組合」によると、新橋花柳界の始まりは江戸時代末で、花街としては比較的新しい。

     同組合頭取で、料亭「金田中」3代目の岡副真吾さん(55)は、「柳橋(現在の東京都台東区)に比べて、新橋は進取の気風を持つ街。幕末には柳橋で断られた薩長土肥の維新志士が会合を開いて明日の日本を語り合った」と話す。明治維新後は、多くのなじみ客が新政府の要人になり、花街を発展させた。

    一見さんお断りは文化

    • 芸事は未経験だった小優さん(中央)。1年の稽古で踊りもさまになってきた
      芸事は未経験だった小優さん(中央)。1年の稽古で踊りもさまになってきた

     現在は、「金田中」のほか、芥川・直木賞の選考が行われる「新喜楽」、「東京吉兆」などの料亭が残り、政財界や文化人が集う。しかし、「金ならある」ではのれんをくぐらせてもらえない。「要紹介」を意味する一見お断りは、お高く止まっているように見えるかもしれないが、「お互いの敬意と信頼の上で付き合う、江戸の〝なじみ〟文化」(岡副さん)ゆえんだ。

     東をどりは、1925年に新橋演舞場のこけら落としとして始まり、川端康成や谷崎潤一郎ら文豪が脚本を手がけたこともある。演舞場を料亭に見立て、「芸者総揚げで、日本人で良かったと思える文化のサロンにしたい」と岡副さん。今年は、新人からベテランまで約60人が、日頃磨いた芸を披露する。

     今回、小優さんもたまきさんも花道での見せ場をもらった。小優さんは「声が小さいから、大きな声が出るようにお稽古しています」、たまきさんは「私がやっていたのは素人の踊り。形じゃなくて心で表現することが課題」と、それぞれ奮闘している。

    受け継がれる「芸が誇り」

    • 花道で華麗に舞う芸者衆(昨年の東をどりで)
      花道で華麗に舞う芸者衆(昨年の東をどりで)

     新橋芸者の誇りとは何か。「芸しかない。真摯(しんし)に取り組み、尽くしていると思えることが誇り」と言うのは尾上さん。加津代さんも小喜美さんも「品良く、お客様への思いやりを忘れない。後輩には1人の女性としてちゃんとした人になってほしいし、私たちも一生努力」と話す。

     そんなお姉さんたちを見て、たまきさんは目を輝かせる。「うちのお姉さんが一番かっこいい。私もいつか後輩に、うちのお姉さんが1番と思ってもらえる芸者になりたい」。誇りは確かに受け継がれている。

    ◆第93回東をどり

     会場は新橋演舞場(東京都中央区銀座6の18の2)。 25、26日は午後1時~、同3時50分~。27、28日は午前11時半~、午後1時40分~、同3時50分~。
     古典的な踊りを披露する「星月妓夜譚~ほしとつきめぐるよばなし~」と、「夜空に輝く物語」の2部構成。幕あいには、ロビーで芸者衆がたてたお茶(有料)を楽しめるほか、周辺の「金田中」や「新喜楽」などの一流料亭による弁当(要予約)や卵焼きも味わえる。入場料は2500~9000円。
     申し込みはチケットホン松竹(0570・000・489、午前10時~午後6時)へ。

    2017年05月23日 12時28分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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