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    アスベストによる中皮腫の闘病記を出版した            橋本 貞章さん 68(稲沢市)

    がん治療希望胸に 生存率20%・・・日常細かく描写

     「手術をしても、3年後の生存率は20%」――。アスベスト(石綿)が原因のがん「中皮腫」を発症、2012年8月に受けた手術などを詳細につづった闘病記「ほのかな希望」を出版した。闘病中のつらさや苦悩だけをつづるのではなく、趣味のゴルフの話、家族で出掛けた初詣のうれしさなど、日常の場面もふんだんに取り込んだ「小説風」に仕立て、肩ひじを張らずに読んでもらえるよう工夫した。

     中堅ゼネコンで1971~95年に勤務、アスベストが舞う中でも、現場監督として立ち会った。「アスベストについて健康被害が叫ばれたり、厳しく禁止されたりしていた記憶はなく、現場では、気づかないうちに吸っていた」

     会社の健康診断に加えて、毎年のように人間ドックに行くなど人一倍健康には気を使っていた。しかし、2011年、会社の屋上でストレッチをしていた時、口からトロッとした鮮血のつばを吐いた。寝ていると、足の裏が痛がゆく、千枚通しのような鋭くとがったもので突き刺されるようなチクチクとした痛みを感じる日が続くようになった。

     不安を感じて受診した病院では原因は分からず、紹介された病院を転々。様々な検査を受けた後、最終的に大病院で告げられた病名は「悪性胸膜中皮腫」というがんだった。9時間に及んだ手術と約30回にわたる放射線治療。その後の苦しい闘病生活。医師から「3年生存率は20%」と宣告されても、20%は生きられるという希望を胸に前に進んだ。

     物語の中で驚かされるのが、細かな描写だ。医師の発言、受けた検査、体調の変化、家族の様子――など、その場に居合わせているかのように錯覚する。「一言も聞き漏らしたくなかった。私の命の問題だから」と、神経を集中させていた記憶をよみがえらせて書いた。

     出版前には、かなり悩んだ。「あまりに弱く情けない自分をさらけ出して、みっともないという気持ちがあった」。しかし、中皮腫のことを知ってもらうとともに、「死は突然襲ってくる」ということを人ごとではなく、自分のこととして考えてもらいたいとの思いから、15年6月、100部を自費出版した。

     著書は「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の会員らの目に留まり、今年、かもがわ出版から全国発売された。同会東海支部事務局の成田博厚さん(44)は「同じ立場の患者らがどう行動していいか分からない時の道標みちしるべになる」と高く評価する。

     手術から4年が過ぎた。体重は20キロほど落ちて45キロになったが、散歩もできるまでになった。「毎日、生きているという幸せをかみしめています」――。“仄かな希望”を胸にしっかりと抱いてこれからも生きていくと誓った。(沢村宜樹)

               ◇

     高知県生まれ、芝浦工業大学建築学科卒業。1級建築士。建築業界で働いた経験を生かし、欠陥マンションを巡る人間模様を描いた小説「藤堂主任助けてください」も自費出版している。娘2人は嫁ぎ、今は妻と2人暮らし。「仄かな希望」は四六判、304ページ。1700円(税別)。問い合わせは、かもがわ出版(075・432・2868)。

    2016年12月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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