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    <16>母救う安産ひしゃく…種間寺・高知県

    • お遍路さんが立ち寄る大師堂(高知市で)
      お遍路さんが立ち寄る大師堂(高知市で)

     高知市の市街地から西南に約10キロ。穏やかな田園風景が広がる同市春野町に、第三十四番札所・種間寺が立つ。山門はなく、外壁も低いため、広々とした境内。境内に入ると右手に大師堂が見え、奥の本堂には、国指定の重要文化財である薬師如来坐像がまつられ、「安産の薬師さん」として親しまれている。

     本堂の手前にある観音堂には、左手に赤ちゃんを抱いた子育て観音像が優しいまなざしでたたずんでいる。観音堂は、100本以上の底のない木のひしゃくで、ずらりと取り囲まれている。底がないひしゃくは「通りがよい」ことから、母親が苦しまず安産できるように、との祈りが込められている。

     妊婦が持参したひしゃくの底を抜き、1週間かけて安産祈祷きとうをした後、お札を添えて妊婦に返す。無事に安産すれば、ひしゃくを寺に納めるという。年間約60人が安産祈祷のために訪れるといい、種間寺の中岡信海住職(76)は「安産祈祷をした人が『赤ちゃんが無事に生まれました』と報告に来てくれるのが何よりもうれしい」とほほ笑む。

     境内で東京都東大和市の若林憲一さん(50)に出会った。神社仏閣が好きで、京都旅行中に寺で見た巡礼者のたたずまいに憧れ、関東の「坂東三十三観音」も巡ったという。昨年、糖尿病と診断された。動きが緩慢になり、目もかすむ。死が近づくのを実感し、「やり残したことはないか。今しかできないことは何か」を考えて思い切って仕事を辞め、遍路に挑戦した。

     大きな荷物を背負って遍路を続けていたところ、道中に出会ったオーストラリア人男性から「遍路は『捨てる旅』。心の中の嫌なものも、持ち物も捨ててスリムになりなさい」と助言された。10月末には130キロだった体重は、遍路で15キロ減った。「しんどいけど、歩き続けることで自分はこんなに根気強いと気付くことができた。回り終わって自分がどう変わるかが楽しみ。心も体も身軽になって帰ります」と笑顔で話す。

     別れ際に、「よかったら」と、若林さんが納め札をくれた。お接待のお礼や、自分の功徳を分けるという意味がこめられているという。私にはもったいないと思いながらもありがたく受け取った。無事に結願を果たして、ご家族のもとに帰れますように、と願った。(山田絵里子)

     <ガイド>

     577年、百済の仏師や大工らが、大阪の四天王寺を完成させて帰国する途中に土佐沖で暴風雨に遭い、種間寺の近くに流れ着いた。仏師らは、薬師如来を刻み、寺が立つ本尾山の頂に安置して海上の安全を祈願したのが始まりとされる。その後、平安時代に弘法大師が訪れて、薬師如来坐像を本尊としたといわれている。弘法大師が唐から持ち帰った五穀の種を境内にまいたことが、寺の名前の由来という。薬師如来坐像は普段は非公開だが、毎年3月8日に開帳される。

     <ここにも立ち寄って>

     ◇自然に囲まれ作陶

     種間寺の約450メートル南に、竹林に囲まれた「春野陶芸村」がある。

     3人の講師が日替わりで陶芸を指導。電気窯のほか、まき窯=写真=もあり、1年に1度の窯出しの日には窯出し体験もできる。

     初心者向けの体験コースは粘土800グラムと焼成代込みで2000円。いつでも好きな時に作陶に挑戦できる「ろくろコース」と「手ひねりコース」は入会金2000円、月会費6000円(いずれも材料費、焼成代別)。成形して窯で焼き、約1か月で陶器が完成する。

     講師の高橋孝典さんは「自然に囲まれた静かな空間で、若い女性から老人まで、幅広い年代の人がマイペースに陶芸を楽しんでいます」と話している。

     午前10時~午後5時、年末年始とお盆を除き、年中無休。問い合わせは(088・894・4930)。体験コースは予約が必要。

    2015年12月06日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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