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    <ポストこしひかり 決定へ>見えぬ味 決まらぬ売り

    • 収穫される「ポストこしひかり」候補の稲(9月、坂井市で)
      収穫される「ポストこしひかり」候補の稲(9月、坂井市で)

     県が<ポストこしひかり>として開発を進める新品種が、今月中に決まる。60年前、県で誕生した「元祖」を超えるブランド化を目指すが、具体的にどんな米か、まだ見えてこない。近年、全国各地でご当地米が相次いで誕生し、競争が激化する中、ポストこしひかりに勝算はあるのか。(内田郁恵)

     コシヒカリは県農業試験場が育成に成功し、1956年に品種登録。しかし、いち早く生産を拡大させ、ブランド化に成功したのは新潟県で、「コシヒカリ」の代名詞のイメージを定着させた。軟らかくふんわりとした味の良さから全国に広まり、79年には作付面積が全国1位に。現在も30年以上連続してトップだが、その割合は2005年をピークに下落傾向にある。

     背景には、暑さに弱く倒れやすいため、気候変動で品質が低下していることや、各地でその土地に合った新品種が開発されていることがある。

     福井県は「生みの親」としてのプライドをかけ、11年度からポストこしひかりの開発に着手。当初の20万種から、収量、品質、食味などで選別し、今年は最終候補に絞り込んだ4品種を栽培、収穫した。いずれも、コシヒカリより「おいしい」「育てやすい(病気になりにくい)」「環境に優しい(減農薬)」といった、県が求める条件を満たしているといい、今月中に、料理人や百貨店バイヤーなど食の専門家らの意見や、日本穀物検定協会による食味ランキングを基に最終決定する。

     ただ、最大の課題は、何を「売り」にして市場に斬り込むかだ。

     全国で生産されている主食米は約270品種にも上る。米に関する幅広い知識を持つ「五ツ星お米マイスター」の金子真人さん(埼玉県)によると、最近のトレンドは「ゆめぴりか」(北海道)、「つや姫」(山形県)のように、一口食べてもちもちとした粘りを感じられる品種。価格は上がっても、米にこだわる人たちの人気を集めているという。

     県もそうした需要を狙い、ポストこしひかりのターゲットを「首都圏在住で、年収1000万円以上の若年富裕層」と設定した上で、「コシヒカリ同様、長く愛される米に」(県食料産業振興課)とするが、食味や生産に関する方向性は定め切れていない。

     おいしい米が各地で開発される一方で、米の消費量は右肩下がり。農林水産省の食料需給表によると、国民1人1年間当たりの米消費量は54・6キロ(15年度概算)と、コシヒカリが全国に広まった50年前の半分以下だ。

     JA県五連の田波俊明会長は10月、「農業者としては、多くの人に食べてもらいたいが、各地で客を奪い合っている状況。コシヒカリ同様に全国で認められなければ『超える』と言えるかは疑問だ」と話した。

     金子さんは「トレンドの後追いでは、埋没してしまうだろう」と指摘。「健康長寿の福井県が『たくさん食べたくなる米』という新たな観点から食味を選び、生活スタイルとともに発信すれば、商品として説得力が出るのでは」と提案する。

    2016年11月22日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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