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    北の生活「家族守るため」

     ◇地村さん、小浜中で拉致講演

     トランプ米大統領が米朝首脳会談で北朝鮮による拉致問題を取り上げた12日、小浜市の拉致被害者・地村保志さん(63)が市立小浜中で講演し、夫婦で拉致された状況や北朝鮮での生活を率直に語った。1978年7月7日夜に拉致されてから間もなく40年。「これからの長い人生の中で、拉致問題を記憶にとどめて」。1年生125人に、願うように呼び掛けた。(布施勇如、大川哲拓)

     講演は「拉致問題啓発講座」として、市と「北朝鮮に拉致された日本人を救う福井の会」が初めて開催。「問題を風化させないよう、地元の小中学生に話をしていきたい」という地村さんの思いに応えた。今年度中に市内全14小中学校で行う予定で、この日はたまたま米朝首脳会談と重なった。

     「小浜公園の展望台の2階にベンチがあった。七夕でいい天気だったので、星空を見ようと上がった。8時頃だったと思う」。地村さんは拉致当夜の様子を話し始めた。当時婚約中だった妻富貴恵さん(63)と共に、4人組に手錠をされ、袋に入れられて、浜からモーターボートで連れ去られた。「家内を狙った事件で、海に放り込まれて死ぬんだなと思った」と振り返った。

     その後、平壌ピョンヤンの「招待所」に移され、同じ拉致被害者の蓮池薫さん(60)と数か月間、一緒に過ごしたことに触れた。「同じ仲間がいると心強いもので、話をする過程で前向きになれた」と述べた。

     「向こうで生きようと思ったのは、家内との再会だった」。富貴恵さんと、1年半ぶりに招待所で会い、結婚。やがて子どもが生まれた。「家族ができると、守らなければいけない。だんだんと『北朝鮮で生きていこう』という決心につながっていった」。現地では「日本語や日本人の生活状況を教える役目」を負わされたという。

     生徒との質疑応答で「自由な時間はありましたか」と尋ねられると、「一定の区域内で生活をしたので、みなさんが思っている自由はない。普通の市民がどこかに行くにも通行証が必要で、そこらじゅうに検問所がある」と不自由な生活の一端を明かした。

     講演は「拉致問題は人権侵害。抗議して、解決していかなければならない」と強い言葉で締めくくられた。1年溝裕衣さん(12)は「拉致された詳しい状況を聞けたので、身近に感じるようになった。まだたくさんいる拉致被害者を早く、家族に帰してあげてほしい」と話していた。

         ◇

     終了後、地村さんは市役所で記者会見に応じた。拉致から40年、帰国から16年を迎えることについて「拉致された24年は、本当に取り戻せなくて、人生で一番大事な時期だった。それを向こうで過ごしたことは悔いが残る。もう63(歳)ですから」と、北朝鮮に翻弄ほんろうされた長い年月をしみじみとした様子で振り返った。

    2018年06月13日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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