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    ウイスキーのボトラーを岐阜市で営む ミューリー・ラファエルさん(48) 「いい酒」自社ラベルで

     琥珀こはく色に輝く液体をたたえた試験管のような容器が、事務所の棚に並ぶ。欧州の仲買人から届く、ウイスキーの商品サンプルだ。少量ずつグラスに注ぎ、香りと味を品定め。そうやって、年間100種類近くの商品価値を見極めている。

     「楽しい仕事。ただ、自社ラベルを貼って売ろうと思えるほど、いい酒と出会えることは少ないけどね」

     ウイスキー市場では、メーカーや蒸留所の公式ボトルだけでなく、仲買人を介して流通して「ボトラー」と呼ばれる会社が販売する商品も人気がある。ボトラーが扱う酒はえてして、原酒を熟成させる環境や年数が公式ボトルと異なったり、アルコール度数を加水で整えたりしていないため、個性的な味わい。本場・英国などでは多数のボトラーが活動しているという。

     ミューリーさんが岐阜市で営む洋酒輸出入の会社「e Power(イー・パワー)」は、日本では数少ないボトラーの一つだ。2007年、輸入食品や飲料などのインターネット販売を手掛ける業者として創業。高品質のウイスキーと商品サンプルの入手元を確保できた10年頃から、業務を洋酒の取引に絞った。ここ3年間で、売上高も販路も倍増。「来年は創業10周年の記念ボトルを出したい」と意気込む。

     スイス西部のドイツ語圏とフランス語圏が共存する商業都市に生まれ育った。20歳代の前半、日本で2年半を過ごし、言葉と空手をマスター。後に妻となる同い年の弥生さんを伴ってスイスへ戻ると、多言語を操るセールスディレクターとして活躍した。30歳代後半になって「自分の会社を持とう」と決意。再来日し、妻の故郷・愛知の隣県で起業した。

     関東を中心に販路が全国に広がる洋酒ビジネスで、なぜ岐阜に拠点を置いているのか――。そう尋ねられるたびに、電車に乗れば名古屋市街まで約20分、洋酒の船便が着く港にも1時間ほどで出られ、生活費も安くていいと力説する。「大抵の日本人が思うより、岐阜って便利なところ」だと思う。

     何よりも、美しい山と川がお気に入り。休日に4歳の娘を連れて、水辺でバーベキューをすると、仕事への意欲が湧くという。「故郷も湖畔で山が見える。僕は自然が近くにないと、落ち着かないんだ」(込山駿)

                                            

     ◇スイス西部の、時計製造の町として知られるビール出身。20歳代前半は、精密機械のエンジニアだった。セールスとマーケティングの学位も持ち、空手は黒帯の腕前という。酒は「プライベートでも飲むけど、少しだけ。酔っぱらうのが嫌だから」。

    2016年09月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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