文字サイズ

    レールマウンテンバイク「ガッタンゴー」の運営スタッフ 田口由加子さん(38)

    ◆廃線生かし古里に活力

     飛騨市神岡町の旧神岡鉄道の廃線路を、台車付きの自転車で走るレールマウンテンバイク「ガッタンゴー」で、10年前の開業時から、風を切って鉄路を走る体験客を送り出してきた。

     「家業を継ぐつもりだったんですけど……。今は、ガッタンゴーのために、帰ってきたと思っています」。運営するNPO法人「神岡・町づくりネットワーク」事務局の中心的役割を担う。

     高校を卒業後に上京し、専門学校を出て、音響関係の会社で働いて6年ほどたった時、実家の化粧品店を切り盛りしていた母親が亡くなった。8年ぶりに戻った古里を「さびしいところ」と感じた。東京での仕事への思いが断ち切れず、戻ることを考えていた時、ガッタンゴーの試運転の運営を手伝ってくれないか、と誘われた。

     鉱山の町を支えてきた旧神岡鉄道が2006年に廃線となり、地元住民が一部区間を再利用した自然と鉄路を体験できるツアーを発案、翌07年から運行を始めた。

     当初あまり興味はなかったが、ある日、体験客の車が他府県ナンバーばかりなのに気がついた。こんなさびしいところに、どうして遠くから来てくれるのか――。不思議に思っていると、体験客から「ありがとう。面白かったよ」と笑顔を向けられ、古里に「楽しんでもらえる力があるんだ」とうれしくなった。

     「家族連れやカップルのニーズに応えられる車両を」と提案すると、地元の鉄工所が、トロッコ付き車両や電動アシスト機能付き車両を作ってくれた。1年目は休日だけで約1300人だった利用者が、雪の時期を除いて毎日営業するようになった12年には2万人を超えた。今年は213日の営業で、4万1988人が訪れた。

     廃線と自転車の組み合わせは秋田県や岩手県など全国各地に広まり、NPOは10月、日本観光振興協会などが主催する「産業観光まちづくり大賞」の金賞を受賞した。「廃線になった大切な鉄道遺産を活用しようと、悪戦苦闘を繰り返す全国のみんなで受けた賞」と受け止める。

     NPOでは、旧奥飛騨温泉口駅―旧神岡鉱山前駅間(約2・9キロ)の現行区間を、さらに山深い漆山地区まで延伸することを計画している。「一度は古里を捨てた自分」がネガティブな気持ちで戻ってきた時、改めて神岡の良さを知らされた、渓谷の美しい場所だ。安全確保などハードルはあるが、「漆山地区こそ、このバイクに乗って見てもらうのにふさわしい場所」。次を見据える目は輝いていた。(川口武博)

    ◇飛騨市神岡町出身。76歳の父親と2人暮らし。ガッタンゴーには、市観光協会が運営していた2007年当初から携わり、10年から事務局員として本格的にかかわるようになった。11年から「神岡・町づくりネットワーク」事務局。自身を含む常勤スタッフ3人と、シニア世代のアルバイト12人で運営。営業は4~11月。

    2016年12月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て