文字サイズ

    外国人に人気の旅館「冨岳」営業代表 呉 子文(くれ しぶん)さん37

    • 観光客に夕食のメニューを説明する呉さん
      観光客に夕食のメニューを説明する呉さん

    ◆下呂と海外の懸け橋に

     

     下呂温泉の一角にある部屋数22室の中規模旅館だが、世界最大級の旅行口コミサイト・トリップアドバイザーが発表した「外国人に人気の日本の旅館2015」で全国3位に輝いた。下呂温泉でのランキングは、現在も常にトップクラス。宿泊客の3割近くが香港、台湾、中国、シンガポールなど外国人観光客だ。

     香港出身で、愛称は「ベン」。広東語、中国の標準語、英語、日本語を操る。「ベンという有能なスタッフがいる」「ベンのおもてなしに感謝する」。宿泊した外国人が書き込む口コミは、ベンの話題でいっぱいだ。そうした口コミを読んだ外国人が「ベンはいますか」と尋ねてくる。

     「建物や設備が豪華な旅館はいっぱいあるが、うちはサービスしかない。お客さんの質問に丁寧に答え、長い場合は1時間も雑談します。ただし、おいしい料理と清潔な部屋は不可欠。元々旅館の土台がいいから良い口コミが広がった」と、スタッフに感謝する。女将おかみの久保田貴子さん(64)は、「今ではベンに頼りっぱなし」と相好を崩す。

     神戸大を卒業後、東京の化学製品商社に就職し、営業マンとしてアジア各国を飛び回った。久保田さんの長女・恵さん(35)と結婚した翌年の09年に退職し、香港で起業を図ったが、リーマン・ショックで頓挫。「仕事が見つかるまで」と恵さんの実家で働き始めた。

     外国人宿泊客は当時、年に数人程度。「営業マンだった僕がPRすれば、外国人を増やせる」と、香港の旅行会社に電話などで売り込んだが、「全く相手にされず、『下呂ってどこ』と聞かれる始末」。何度も香港の旅行会社に足を運び、「香港発3泊4日」の商品が発売されるまで半年以上かかった。

     宿泊客への対応や、多い時は60通に上る電子メールへの返信に忙殺される毎日だが、海外旅行会社との顔つなぎは欠かせない。年数回、香港や台湾、中国などを回っては、下呂温泉の四季折々の魅力を売り込む。

     神戸大の卒業式では、「君たちは母国と日本の懸け橋」と送り出された。その言葉通り、「下呂温泉と外国人観光客の懸け橋になることが、僕の務めです」と意気込みを見せた。(伊藤幸典)

     

     香港の公立・香港城市大在学中、日本の国費留学生選考にパスし、2000年に来日。妻・恵さんとは、神戸大時代、ボランティア活動を通じて知り合い、08年に結婚した。旅館「冨岳」(下呂市湯之島)は、1968年創業。スタッフ約40人。一緒に働く恵さんとの間に2人の子どもがいる。香港に暮らす母と弟を年1度家族で訪ねている。

    2017年06月26日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て