文字サイズ

    「薬物防止」若者に歌で 依存症を克服し、講演ライブ活動をする 杉山裕太郎さん 43

    • 高校生たちの前で自作の歌を歌う杉山さん(大垣工業高校で)
      高校生たちの前で自作の歌を歌う杉山さん(大垣工業高校で)

     10代から非行に走り、薬物依存症でぼろぼろになった実体験を赤裸々に語った。大垣市の県立大垣工業高校で1月に開かれた薬物乱用防止講演会。「家族の絆」を失っていた十数年を振り返り、共感の大切さ、家族の愛の素晴らしさを訴え、自ら作詞作曲した「ありのままを受け止めて」を歌い上げる。約1時間半、約900人の高校生たちはステージにくぎ付けになった。

     大垣市の小学校高学年の頃、親からの期待感が重荷となって、反抗が始まった。中学では、ぜんそくで好きなサッカーを続けられなくなり、部活を辞めた。目標を失い、たばこを吸ったり、バイクを無免許運転したり。

     県立大垣西高校に入ったが、2か月で退学。暴走族のリーダーになり、薬物乱用が始まる。19歳で覚醒剤に手を出し、坂を転げ落ちるように中毒症状が悪化。依存症から幻覚や幻聴が表れ、いつも誰かに追われている被害妄想に襲われた。

     そこから逃れようとまた薬に頼る「負のスパイラル」に陥った。23歳の時には、薬で意識がもうろうとなりながら車を運転し、ダンプカーと正面衝突しそうになった。「このままでは命がなくなる」と震えた。

     ある日の深夜、自宅で父が「話がある」と待っていた。「今からでも遅くない。大学へ行ったらどうか」と諭す父。また激しい口論になり、父親の前で覚醒剤を注射。錯乱状態の中、「俺は2年前からやめれん体になっとる。おれは廃人や」と叫んだ。

     父親は「知らなんだ俺が情けねえ」と言った後、「俺が悪かった。俺の言い分だけを押しつけていた。済まなんだ」とその場で号泣した。「今さらおせえ、もう取り返しがつかねえ」とふてくされると、父は「よう聞けよ。お前はおれの息子、宝物なんだ。こんなことやっとったらいかん。お前が立ち直るためなら何でもやる」と、思い切り抱きしめてくれた。父の泣く姿を見たのは、生まれて初めてだった。

     その瞬間、「愛されとったんやと感じた」。胸を撃ち抜かれたような気持ちになり、一緒に大泣きした。

     その夜を契機に、何度も挫折しそうになりながらも、両親に支えられて立ち直った。

     2年後に瑞穂市の朝日大学法学部へ。教師の道も考えたが、「全国を回って薬物乱用の怖さを訴え、好きな歌を通して、自分のような若者に寄り添い、救いたい」と、シンガー・ソングライターの道を選んだ。

     30歳で上京。自らの体験を語り、歌う「魂のうた講演ライブ」を、2008年から全国の学校など各地で開催している。

     道を外しかけた若者にどう接するべきか。

     「話を聞いてあげる。それが『共感』『愛情』だと思う。それだけで子どもは孤独にならず、自分を大事にする。ネットで顔も知らない誰かに誘われても、『お母さん、どう思う』って相談ができ、悲劇は減らせるはずです」

     穏やかだが、確信に満ちた言葉で言い切った。(湯山誠)

    ◆さいたま市在住。家族は妻と娘2人。大学では中学の社会、高校の地理・歴史と公民の教員免許を取った。2010年に自らの体験をつづった「よみがえれ、魂の歌声」(主婦と生活社)を出版。CDも制作、FMラジオのパーソナリティーなど、幅広く活動している。所属は「ソウルボイス」(http://yutarosugiyama.com/)。

    2018年03月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て