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    <7>連合、非正規取り込みに力

    組合員減、組織拡大策

    • 県勤労福祉センターで行われた組織拡大実践セミナー
      県勤労福祉センターで行われた組織拡大実践セミナー

     非正規労働者の急増という雇用情勢の変化は、企業だけでなく労働組合や行政の役割にも大きな影響を及ぼしている。労組や行政は労働者の生活の安全網をどう築こうとしているのか。県内の状況を探った。

    ■戸惑い

     前橋市野中町の県勤労福祉センターに4月20日、連合群馬に加盟する労組幹部ら96人が集まった。連合群馬事務局から県内の雇用環境の現況を聞き、連合本部から派遣された専門家に組織拡大のノウハウを学ぶセミナーだった。

     「職場は組合員だけでなく再雇用者、パートもいて成り立っている」

     非正規労働者が急増している職場環境について統計資料を基に事務局が説明すると、参加者は熱心に聞き入った。

     連合は非正規労働者への関与を本格化させている。今年の春闘では、全ての労組に非正規労働者の待遇改善に取り組むよう初めて要請した。取り組むかどうかの判断を各労組に委ねていた昨年までと比べ、関与の度合いを強めたかっこうだ。

     背景にあるのが連合の組合員数の減少だ。1989年の発足時に約800万人いた組合員は、2013年2月時点で約680万人に落ち込んだ。一時は12万人を超えた連合群馬も約9万5000人にまで減った。

     金子裕昭事務局長(42)は、「組織拡大なくしては企業への影響力がなくなる。非正規労働者を含めた組織の結束が求められている」と危機感を募らせる。

     連合群馬が電話などで解雇やパワハラといった悩みを受け付ける「なんでも労働相談」で、12年の相談458件のうち、非正規労働者からの相談は42%を占める。4月の改正高年齢者雇用安定法の施行で、企業は定年者が希望すれば65歳まで再雇用するよう義務付けられたため、定年者の多くは非正規雇用となり、非正規労働者数はさらに増加する見通しだ。その取り込みは、連合が組織として社会的影響力を維持するためには不可避となっている。

     だが、連合の現在の組合員はほとんどが正社員。その利益を代弁するため「正社員クラブ」とやゆされてきた組合員からは戸惑いの声も聞かれる。

     セミナーに参加した電機メーカーの労組幹部(45)は、非正規労働者の待遇改善に取り組む方針に不満を漏らした。

     「賃金や待遇の改善といっても、非正規の人たちとは求める内容が違う。組織拡大しろと言われても、どこまでやるのか」

    ■ジレンマ

     非正規労働者を組織に取り込むことの難しさは、ほかの労働組合も感じている。

     メーデーの5月1日、太田市中心部の公園で、太田地区労働組合協議会の関係者ら約200人が参加して集会が開かれた。参加者はスローガンを読み上げて市内を行進したが、スローガン7項目のうち、非正規労働者に直接言及しているのは「非正規雇用をなくして雇用を安定させ、あらゆる貧困と格差の解消をはかろう」の一言だけだった。

    • 太田市中心部で行われた「太田地区メーデー」で行進する参加者
      太田市中心部で行われた「太田地区メーデー」で行進する参加者

     同地区労は市内の中小企業などの正社員約2000人で構成している。入沢金太事務局長(56)は「負担軽減のため組合員の会費を低く抑えている。非正規雇用を含めた労働相談も実施しているが、相談を告知する予算さえ簡単には捻出できない」と打ち明けた。

     県内には所属する職場や雇用形態に関係なく組織する労組もあるが、課題は少なくない。群馬合同労働組合(前橋市)の清水彰二書記長(49)は「非正規労働者は(解雇などの)問題が解決すると、それで(組合との)関係が終わる方が多い。組織拡大につながりにくい」と明かす。

    ■ナビゲーター

     一方、行政は非正規労働者の実態に即した支援策を模索している。中でも注目されているのが、生活保護受給者などを対象とした就職活動支援事業だ。

     5月9日、前橋市天川大島町のハローワーク前橋。

     「この仕事はどうですか。あなたのこれまでのキャリアが生かせると思います」

    • 求職者の相談に乗る就職支援ナビゲーター(ハローワーク前橋で)
      求職者の相談に乗る就職支援ナビゲーター(ハローワーク前橋で)

     相談窓口を訪れた求職者に対し、同ハローワークの「就職支援ナビゲーター」が丁寧な口調で仕事を紹介していた。

     就職支援ナビゲーターは、キャリアコンサルタントなどの資格を持つ人や、企業で人事労務管理を経験した元会社員らからなる。求職者個々人に対し、その人にふさわしい求人の開拓から資格取得などの能力開発、実際の就職まで一貫してきめ細かく支援する役割を担っている。

     群馬労働局は昨年度、ナビゲーターを倍増し県内のハローワークに計20人を配置。仕事が見つけられずに生活保護や児童扶養手当を受給している人を対象に支援を図ってきた。ナビゲーターによる支援の利用者は40~50歳代で派遣労働を長期間続けてきた男性が多いという。ハローワーク前橋に3人いるナビゲーターの1人で、臨床心理士の資格も持つ生形啓子さん(60)は「対象者のスキルや経験はそれぞれ違う。じっくり話を聞き、その人の可能性を引き出すように心がけている」という。同労働局は今年度、非正規労働者の正社員化を図る企業への助成も始めた。

     日本の社会保障制度は、正社員の終身雇用を前提に設計され、保育や住宅など労働者の社会福祉は企業に委ねられてきた。そのモデルが崩壊しつつある今、新たな安全網の確立に社会の柔軟な対応が求められている。

    2013年05月17日 00時42分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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