文字サイズ

    <9>65歳まで雇用企業着々

    65歳まで雇用企業着々

    • 連合群馬沼田地域協議会が行った改正高年齢者雇用安定法の学習会
      連合群馬沼田地域協議会が行った改正高年齢者雇用安定法の学習会
    • 高崎市のイーケーエレベータで高年齢者の労働環境を説明する新井さん(左)
      高崎市のイーケーエレベータで高年齢者の労働環境を説明する新井さん(左)
    • 職場で同僚と談笑する桑原さん(左)
      職場で同僚と談笑する桑原さん(左)

     希望者全員を65歳まで雇用するよう企業に義務付けた改正高年齢者雇用安定法が4月に施行された。少子高齢化の進展で年金の支給開始年齢が引き上げられ、高齢者も社会の担い手になることが求められる今、どのように働き、どのように生きるべきか。現場の対応を探った。

    ■改正法4月施行

     「今回の改正で、事業主が継続雇用の対象者を限定することは(労使協定に基づいても)できなくなりました」

     3月21日夜、沼田市内の集会場で開かれた連合群馬沼田地域協議会による改正高年齢者雇用安定法の学習会。講師を務めた群馬労働局の高齢者対策担当官高橋千秋さん(56)(現ハローワーク安中所長)が説明すると、地域の労組幹部ら42人はしきりにうなずいていた。同協議会の宮下昌文議長(52)は「法改正が企業にどのような影響を及ぼすのか。労使協議のヒントになる」と話した。

     昨年3月に国会に提出された高年齢者雇用安定法改正案は、衆院の解散時期を巡り与野党の攻防が激化する中で審議され、法案成立は昨年8月までずれ込んだ。厚生労働省の運用指針が決まったのが11月。施行まで半年足らずの間、各労働局は大急ぎでの周知活動を迫られた。

     高橋さんも企業や経済団体、労働組合などを半年間で15回ほど同法の説明に回った。「施行が差し迫っていることもあり、企業の関心は非常に高かった」と振り返る。

     ただ、既に2006年の同法改正で、企業は65歳までの雇用を実現するよう努力を求められていた。今回の改正で義務付けられた希望者全員の雇用について、高橋さんは「既定路線。各企業の準備は決して遅れてはいない」と指摘する。

     実際、同労働局によると、従業員31人以上の企業のうち希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は、昨年6月現在で56・2%と全国平均の48・8%を大きく上回っている。継続雇用制度の導入などの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は、全国平均(97・3%)とほぼ等しい96・7%に達する。

     同労働局は、今後は違反企業の把握・指導を行って改正法の更なる浸透を図る方針だ。

    ◆将来の職・家計個人設計の時代◆

    ■意識付けへ勉強会

     同法改正に伴い各企業も対応を強化し始めている。

     高崎市箕郷町上芝のメーカー「イーケーエレベータ」。同社会議室で4月12日夜、この日の仕事を終えた48歳以上の社員約20人が参加して勉強会が開かれた。

     「皆さんの給料は本当に実力に見合った額だと思いますか」

     高崎市の社会保険労務士、新井政信さん(69)が、企業による手厚い福利厚生を前提とした日本型の社会保障制度は変わりつつあると説明した。「まだ老後の実感が湧かないが、準備の必要性を感じた。家族とよく相談したい」と同社の男性社員(49)。海老沼孝之社長(46)は「長期のキャリア形成を意識してもらうことで仕事への向上心が高まる」と勉強会の意義を強調した。

     希望者を65歳まで雇用するにあたって、多くの企業は定年を引き上げず、60歳で定年した社員と再契約を結ぶ。そのため、給料はそれまでの水準から下がるのが一般的だ。厚生年金の支給開始年齢が引き上げられる中、社員は個人で早くから老後の準備に取り組むことが迫られている。

     群馬労働局からの委託事業で高齢者の職業設計のセミナー講師も務める新井さんは、「多くの企業は社員の老後を支える体力が残っていない。将来の職業や家計の設計を個人が考えなければならない時代に入った」と対応を呼びかける。

    ◆県はマッチング支援に力◆

    ■149人決まる

     高齢者の労働参加を促すには、働く場の確保も不可欠だ。県は、高齢者と企業のマッチング事業で労働環境の整備に乗り出している。

     4月上旬、高崎市吉井町多比良にある精密加工メーカー「タヒラ」。前橋市広瀬町の桑原健次さん(61)は、3月に契約社員として入社、機械部品の手仕上げを任されている。

     高崎市内の板金工場で43年間働き、最後は工場長まで務めた桑原さん。昨年3月に退社し、趣味の山登りや川釣りを楽しんでいたが「再び手を動かしてモノを作りたい」との思いに駆られ、昨年6月に職探しを始めたという。就職に向けフォークリフトの運転免許も取得したが、年齢が障害となり、面接に進んでもなかなか採用が決まらなかった。

     そんな桑原さんが利用したのが、県シニア就業支援センターだった。今年2月に同センターのスタッフと面談して自分の技能や希望職種を登録すると、金属製品の磨きができる熟練工を探していたタヒラからすぐに連絡があり就職が決まった。

     同社の篠崎健一社長(60)は「仕事への熱意を感じたので採用した。若い社員の面倒もよくみてくれる」と説明する。

     センターは2年前からマッチング業務を開始。現在は4人の就業支援アドバイザーが、再就職の相談や企業への情報提供を行っている。

     センターを通じて就職が決まった高齢者は、3月末時点で149人。県労働政策課の沼沢弘平課長(34)は「これまで培った高い技術や知識を持つ高齢者はたくさんいる。その能力を企業で発揮してもらうことは、地域の活性化にもつながる」と語る。

     高齢者が働く社会の実現には、企業と個人、行政など社会全体での取り組みが求められている。

    2013年05月22日 01時35分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て