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    <11>社会貢献、退職後生きがい

    培った技術、知識を還元

    • アートバルーンを披露する富沢さん(前橋市の市中央児童遊園「るなぱあく」で)
      アートバルーンを披露する富沢さん(前橋市の市中央児童遊園「るなぱあく」で)
    • 活発な議論が交わされた「あいてぃ塾」の運営会議(高崎市下之城町の市産業創造館で)
      活発な議論が交わされた「あいてぃ塾」の運営会議(高崎市下之城町の市産業創造館で)

     少子高齢化が進む中、高齢者が社会の一員として活動し続けることは、高齢者本人と社会の双方にとって望ましい。社会参加の手段は、企業で働くことだけではない。非営利組織(NPO)法人などでのボランティア活動も地域の重要な役割を担っている。

     「なぜ日程を固定するのか」「とりあえず隔週で始めてみよう」

     4月19日、高崎市下之城町の市産業創造館。同市のNPO法人「あいてぃ塾ぐんま」の運営会議でメンバー18人が会議の開催日を巡り活発な議論を交わしていた。メンバーは60~80歳代。全員が通信機器大手・沖電気工業の高崎事業所で働いていた元社員だ。パソコンで資料を見ながら議論を交わす姿には、技術者時代の働きぶりがうかがえる。

     あいてぃ塾は2001年に活動を始め、高崎や前橋市で住民対象のパソコン講習会を開いている。メンバーが講師を務め、基本ソフトの使い方を教える教材も全て手製だ。パソコンに精通した大手メーカー元技術者による講習会として人気があり、講師の派遣先は、主婦などのサークル約50団体に上る。

     「40年以上前の電子計算機時代からコンピューターと付き合っている。パソコンの仕組みから分かるのが我々の強みだ」。同法人理事長の中司和雄さん(82)は強調する。

     高度経済成長の時代、中司さんもほかのメンバーと同様に同社の「猛烈サラリーマン」だった。技術者として設計から開発、品質管理など何でもこなしたという。中司さんは「夜8時に帰宅するのも『早引け』という感覚で、徹夜が普通だった。子どもの面倒を見た記憶はほとんどない」と苦笑いする。

     関連会社の役員を務めて63歳で退職。その時、頭に浮かんだのが「自分の持っている技術や知識を社会に還元したい」との思いだった。「パソコン技能を生かしたボランティア」は退職当時からの構想だったが、「技術も性格も全部わかり、一番信頼できる」会社の仲間が定年になるのを待ち、70歳の時、同僚9人で塾を発足させた。

     活動当初は順調ではなかった。当時はパソコンが1台約20万円と高価だったため、メンバーの持ち出しで購入した。公民館に「飛び込み営業」し、何度もあしらわれながら周知活動を続けた。

     現在も基本ソフトの進化に対応するための学習は欠かせない。教材や指導方法向上のため、年に数回、勉強会を開くなど「趣味」の範囲を超えた活動が必要だ。

     それでも続けるのは「会社員時代に希薄な関係だった地域に貢献したい」との思いがあるからだ。講習会の参加者が、学んだ知識で写真入り年賀状や旅行記を作成できるようになるのが一番の楽しみだという。

    ◆高まる参加意識

     総務省の労働力調査(2012年)によると、60~64歳の57・7%、65歳以上の19・5%が会社などで働いており、高齢者の労働参加は着実に浸透している。県の調査(11年)でも、「働ける間はいつまでも」働きたいとの回答は55~64歳で34・1%、65~74歳で43・8%に上った。

     一方で、地域社会に参加するボランティアへの意識も各世代で高まっている。内閣府が2月に行った「社会意識に関する世論調査」によると、「社会のために役立ちたい」と答えた割合は66・7%で1980年の45・3%に比べて大きく上昇。年齢別でも60~69歳は71・2%と全体より高かった。

     同省の11年実施の社会生活基本調査では、ボランティア活動をした人のうち、まちづくりのための活動を行った人が最多の10・9%で、子どもを対象とした活動は8・2%、安全な生活のための活動は4・8%だった。

    ◆ボランティアつながり実感

     中司さんのように会社員時代の技能を生かす人もいれば、退職後に未経験の分野で活躍する人もいる。

     12日、前橋市大手町の市中央児童遊園「るなぱあく」。風船をひねって動物などの形を作るアートバルーンを披露する富沢康邦さん(64)の周りにたくさんの親子連れが集まっていた。

     富沢さんはアートバルーンの販売で得た金を国連児童基金(ユニセフ)などに寄付するボランティア団体「SIEN2」の代表だ。

     前橋市出身。54歳の時、勤めていた県内の会社から、ボランティア団体で構成する「群馬NPO協議会」に出向した。

     それまでボランティアとは無縁だった富沢さん。同協議会で知り合ったボランティアの活動を手伝ううちに、ボランティア活動自体の面白さに気付いたという。

     60歳で同協議会を辞めると同時にSIEN2を設立、「子どもの頃、学校給食の脱脂粉乳などでお世話になった」ユニセフへの募金活動を始めた。アートバルーンは04年の新潟県中越地震のボランティア活動で体験し、独学で身に着けた。

     現在はイベントでのバルーン販売のほか、材料の仕入れ、バルーンに張り付けるための動物やアニメキャラクターの目や鼻が描かれたシールの作成などに週4日を費やす。バルーンで作る動物などの題材は自身で考える。

     富沢さんは「夜中にアイデアを思いついて跳び起きることもある」と笑う。

     スキー、パラグライダー、旅行。趣味の多彩な富沢さんだが、ボランティアのやりがいは全く別物だ。富沢さんは「社会とつながっている感覚を得られるのが最大の魅力」と言葉に力を込めた。

     社会貢献を通じて生きがいを追求する高齢者。そのエネルギーが地域を豊かにすることは間違いない。

    2013年05月24日 23時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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