文字サイズ

    <13>女性の「社内進出」推進中 「男性中心」メーカー改革

    会社の会議 今では出られます

    • プロジェクトで作成した冊子に並ぶ当時の女性社員の不満を読んで「今では笑っちゃうようなことばかり」と振り返る常木さん(右)と初期メンバー(伊勢崎市のサンデンで)
      プロジェクトで作成した冊子に並ぶ当時の女性社員の不満を読んで「今では笑っちゃうようなことばかり」と振り返る常木さん(右)と初期メンバー(伊勢崎市のサンデンで)

     人口が減少する中、政府の成長戦略の中核に位置づけられた女性の活躍。現状では、女性管理職の割合は先進国の中でも突出して低く、仕事と家庭の両立支援制度も不十分だ。女性が生き生きと働ける環境をどう築いていけるのか。県内の現状と課題を探った。

     自動車関連機器サンデン(伊勢崎市)。人事部門の部長を務める常木美幸さん(41)は、2004年から3年間手掛けた事業「女性活躍推進プロジェクト」の資料を大切に保管している。

     「雑用は女性がするのが当たり前の雰囲気。会社の奥さん的な存在では嫌だ」「全員出席の会議にも女性には声がかからない」

     06年に作成した社内向け冊子やポスターには、女性社員の不満を男性に理解してもらうための刺激的な言葉が並ぶ。「あまりに率直で上司からストップされそうになったけれど、女性が集まったパワーで押し切った」と常木さんは振り返る。

     「今読むと笑っちゃう」ほど、現在は女性の会議参加は当たり前になり、弁当の注文などの雑用も女性に偏らなくなった。この間、プロジェクトを率いた常木さんを含め女性2人が部長に昇進した。

     同社は1943年創業で、グループ会社を合わせ23か国で展開するグローバル企業。プロジェクトが始まったのは、約250人が集まる幹部会で出た創業者の次男、牛久保雅美会長(78)の一言がきっかけだった。

     「誰も女性がいないのはおかしいじゃないか」

     当時、同社の正社員約3000人のうち女性は約1割で、幹部会に出席する部長級はおろか、課長級の管理職もいなかった。

    ■男女から反発

     女性社員15人で発足するプロジェクトのリーダーとして白羽の矢が立ったのが常木さんだった。大学卒業後、人事畑を歩み社会保険労務士の資格を取得、「人事のプロ」を目指していた。出世に特別興味があったわけではない。ただ、男性優位の職場に不満はあった。出産してすぐ職場復帰し、子どもが熱を出しても隠した。「弱音を吐くと『女だから駄目だ』と思われそうで、馬車馬のように働いた」。それでも「女性は頑張っても無駄」と言われ、悔しい思いをした。

     プロジェクトが動き出すと激しい反発が起きた。「うちの女性社員にできる訳がない」「男に対する逆差別だ」。男性社員からメールで容赦ない批判が相次いだ。常木さんが女性で初めて部内の戦略会議に出るようになると「男の更衣室に女性が入ってきた」と皮肉られた。

     「余計な刺激はしないでほしい」。反発の声は女性からも上がった。常木さんは当時の風当たりを「社内をヘルメットかぶって歩いた方が良いかもと思った」と表現する。

     それでも、常木さんたちは改革を進めた。会社に不満をぶつけるだけでなく、「育児中の時間短縮勤務を当然と思わず、周囲に感謝してほしい」と女性の側の意識改革も促した。09年から2年間は、外資系企業から招いた女性が役員を務めた。

     

    ■女性管理職 県内は4.7%

     

     プロジェクトが終わった今も、課題は残る。課長級以上の管理職約500人のうち、女性は常木さんを含めいまだに4人。女性が活躍する職場が人事や総務などに限られていることに加え、家事の負担が女性に偏りがちで、今の労働環境では管理職を望む女性が増えにくい事情があるという。常木さんは「女性もあるがままで活躍できる環境を整えてこそ、自然と女性管理職は増えるはず」と力を込める。意識改革は進んでも、女性登用には何重もの壁が残る。

     厚生労働省の雇用均等基本調査によると、管理職(係長以上)に占める女性比率は最新の11年度で過去最高の8・7%(前回09年度8・0%)。県の10年度調査では4・7%で、全国と比べて低水準にある。「県内は男性中心の製造業が多いことが一因」(県労働政策課)とみられる。公務員を含めた女性管理職比率が40%前後の米仏英など先進諸国にははるかに及ばない。

    ■女子学生 育つ人材

    • 安斎准教授のゼミで、女性の活躍推進に向けた現状や制度について意見発表する県立女子大の学生(玉村町の県立女子大で)
      安斎准教授のゼミで、女性の活躍推進に向けた現状や制度について意見発表する県立女子大の学生(玉村町の県立女子大で)

     女性登用を妨げる壁を突き破り、リーダーとして活躍する人材を育てようと、大学教育の試みも始まっている。

     今月16日、玉村町の県立女子大。05年度に設置された国際コミュニケーション学部の3年生8人が、「育休後の活躍状況を調査するなど、育児に積極的な企業を実態に基づいて認定すべきだ」と議論していた。

     女性の活躍できる社会を研究するこのゼミは、昨年4月に民間企業から転身した安斎徹准教授が担当している。ビジネスアイデアを競う大会への出場や企業インタビューなど、実践的な学習を重視している。

     昨年度ゼミを受講し、県内企業へ就職を希望する4年の林ひろみさん(21)は「ゼミを機に社会で活躍する女性と出会い、困難を乗り越えて仕事を続けたいと思うようになった」と話す。自動車関連業界への就職を予定する金子有貴さん(21)も「女性が少ない業界でも輝ける環境を自分で作りたい」と笑顔だ。

     県人権男女共同参画課は今年度初めて、ゼミ生と連携して企業調査を実施する。「女子学生の厳しい視点を取り入れたい」と同課担当者はもくろむ。

     近年の厳しい雇用情勢などから、若い女性の家庭志向が強まっているという調査結果もある。安斎准教授は「不本意な形で仕事を諦めずに、自ら道を開けるような女性を育てたい」との目標を掲げている。

    2013年05月29日 01時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て