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    〈14〉育児ママ 再就職に「壁」

    企業理解・保育施設不足

     出産を機に退職する女性の割合が高止まりしている中、乳幼児を抱えたまま求職活動を行う母親の支援が急がれる。行政は母親の再就職支援を強化しているが、企業の理解や保育施設の不足など現状は厳しい。一方、退職した女性の即戦力を期待し、積極的に再雇用する企業も現れた。

    ■出産1年目から求職

     「企業は(乳幼児を抱えた社員が)突然休むのではと不安を持つ。子どもが風邪の時に面倒を見てくれる人はいますか」

     前橋市のハローワーク前橋で16日に開かれた、子育て中の女性の再就職を支援するミニセミナー。働く母親の心構えに関する講師の問いかけに、赤ちゃんを抱いた母親6人は真剣な表情で考え込んだ。11か月の長女を連れて参加した市内の女性(38)は「産休、育休に対応できないと言われ、派遣の仕事が雇い止めになった。次は正社員になりたいが、相当な努力が必要と分かった」と気を引き締めた。

     同ハローワークが2010年度に再就職セミナーを始めた際には、1歳以上の託児しか受け付けていなかった。ところが、0歳児を持つ母親からも参加したいとの要望があり、12年度には0歳児を連れて参加できるミニセミナーを10回開催。今年度は11回開催予定だ。厳しい雇用情勢や社会変化のスピードを背景に「離職期間が長いと再就職できないのでは」と不安を抱き、子どもが小さい時期から再就職を目指す人が増えているという。

     出産を機に、会社の理解不足やフルタイムで働く難しさから退職を余儀なくされている女性は多いとみられる。国立社会保障・人口問題研究所が10年に実施した調査では、第1子を出産した就労女性のうち約6割が退職し、この20年間、ほぼ変化がない。群馬労働局には「有期雇用者は育休の対象にならないと会社に言われた」など、企業側が法律を理解していないことによる相談も寄せられている。

    〈ミスマッチ解消へ後押し〉

    ■県が無料相談拠点

    • 子供が遊ぶスペースが隣に設けられているジョブカフェ・マザーズ(24日、高崎市旭町で)
      子供が遊ぶスペースが隣に設けられているジョブカフェ・マザーズ(24日、高崎市旭町で)

     幼い子どもを持つ女性の再就職を取り巻く現状は厳しい。同ハローワークが6年前に設置した母親向け窓口「マザーズコーナー」担当の茂木洋子さん(60)は「ママたちが応募できるのは求人の中のごくごく一部」と指摘する。子育て中の母親の正社員採用を事実上、門前払いする企業もある。土日出勤や夜勤がある介護の求人数は多いが、子育てとの両立が難しく、母親は敬遠しがちだ。土日休みが多い事務職は人気が高く、採用される母親は少ない――。求人と求職のミスマッチが生じている。

     県は12年度、母親向けに無料カウンセリングを実施する「ジョブカフェ・マザーズ」を高崎市に設置した。無料相談には、「製造業でも子育てと両立しやすい求人もある」など、仕事を求める母親の視野を広げられる利点があるという。

    ■就業者優先の保育

     保育サービス不足も、母親の再就職を妨げている。待機児がいる市町村の保育園利用は就業中の母親が優先され、就職活動中の母親は断られることが多い一方で、企業側は子どもの預け先が決まっている母親を採りたがるためだ。県によると、県内の待機児数は保育所で37人(昨年10月時点)、小学生を預かる放課後児童クラブは47人(昨年5月時点)。自宅に近い希望施設を断られたり、満杯で諦めたりした人は数に含まれず、潜在需要はより多いとみられる。病児や夜間、休日など多様な保育を実施している施設もまだ一部だ。

    〈復職推進の企業も〉

    ■エントリー制度導入

     子育て中の母親の雇用環境が厳しいなか、退職前の経験を買って復職を勧める企業もある。

    • 復職エントリー制度で再就職した梅沢さん。笑顔で買い物客にあいさつしながら、全体の様子に気を配る(4月16日、栃木県内で)
      復職エントリー制度で再就職した梅沢さん。笑顔で買い物客にあいさつしながら、全体の様子に気を配る(4月16日、栃木県内で)

     「こちらのレジへどうぞ」

     県内を中心にスーパーを展開する「とりせん」(館林市)の栃木県内の店舗。同店チーフの梅沢美幸さん(29)が、小さい子ども連れの女性にいち早く気付き、素早く買い物かごを持って空いているレジに案内した。

     梅沢さんは1年間の育休を取得後、正社員として復帰。2年ほど働いたが、店頭が混む夕方の時間帯には退社しづらく、土日勤務もあるスーパー特有の環境に悩んだ。保育園の迎えを親に頼らざるを得なくなり、「子どもが小さいうちは一緒に過ごす時間を作りたい」と退職した。

     梅沢さんが退職から約1年半後の08年、正社員として復職できたのは07年に同社が導入した「復職エントリー制度」のおかげだ。育児や介護を理由に退職した社員を再雇用する仕組みで、会社側はいったん育てた人材を即戦力として再活用でき、従業員は再就職の不安なく子育てや介護に専念できる利点がある。「職場の手引変更などについていけるか不安だったが、仕事が好きだったので復職できてありがたい」と梅沢さん。今はパート社員を指導教育する立場にある。同店の岡田雅勝副店長(54)は「復職前に培った能力もあって頼りになる。またゼロからキャリアを始めていたらもったいなかった」と話す。来年復職を予定する館林市の松沢千之衣さん(34)も「慣れた職場への復帰が決まっているのは安心」という。

     県の10年度の調査では、出産などで退職した社員を再雇用する制度について、パート採用への変更などを含めて「ある」が26・6%で、前回06年度調査から9・2ポイント増加。「(明文化されていないが)慣行としてある」が22・9%、「今後検討したい」が25・3%に上った。

    2013年05月31日 00時44分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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