文字サイズ

    魚を釣る   帰す   増やす

    • 渡良瀬川で釣れた48センチのヤマメ(中島さん撮影)
      渡良瀬川で釣れた48センチのヤマメ(中島さん撮影)
    • 渡良瀬川のキャッチアンドリリース区域で、石の裏に付いた水生昆虫を調べる中島組合長(右)
      渡良瀬川のキャッチアンドリリース区域で、石の裏に付いた水生昆虫を調べる中島組合長(右)

     栃木県から流れ出し、みどり市や桐生市を通って利根川に合流する渡良瀬川は、水質が良く、ヤマメなどの渓流魚が多い川として昔から釣り人の人気を集めてきた。しかし、釣り人の減少傾向が続き、美しい魚が育つ環境を整えることで川の魅力を高めようとする動きが出ている。

     ■魚育む流れ

     桐生市の市街地を流れる渡良瀬川。川底までくっきりと見える流れの上をシラサギが滑るように飛び、淵には紅葉が始まった山々が映り込む。浅くなり、水が勢いよく流れる瀬のわきで、両毛漁協の中島淳志組合長(41)が川底から拾った石についた虫を見ながら、「この川は魚の餌となる水生昆虫が豊富なんですよ」と話した。

     桐生市や、みどり市で渡良瀬川は深い森の中を流れる。そのため餌となる昆虫や水量が豊富で魚が多く、昔から釣り人の人気を集めてきた。さらに、東京や埼玉などの都市部に近いこともあって、1990年代後半には連日のように釣り客を乗せた団体バスが訪れた。10メートル間隔で釣り人が並ぶ日もあったといい、自身も釣りを楽しむ桐生市農業振興課の田村正夫次長は「川の両岸に釣り人が並んでいた」と振り返る。

     ■減る釣り人

     しかし、釣りをする若者が減るなどしたため、釣り客は大きく減少した。両毛漁協によると、ピークの96年には、年間入漁券が1万枚以上、1日券も延べ約1万4000枚売れていたが、昨年の年間入漁券の売り上げは、約1400枚まで落ち込んだ。

     釣り人を呼び戻そうと魚の放流量も増やしたが、釣り人の姿がいないためにカワウが川に降りるようになり、食べられてしまう魚が増加。川の魚が減り、釣り人もさらに減るという悪循環に陥っていたという。

     ■C&R

     そこで、同漁協は昨年3月のシーズン開始から、約3・7キロの区間をキャッチアンドリリース(C&R)区域に指定。釣った魚を川に戻すことや、魚の口を傷つけにくい針の使用などを義務づけた。この区間はダムの直下にあって多くの魚の産卵場所になっているため、放流に加え、親を残して自然に産卵させることで魚の数を増やそうと考えた。

     その結果、魚は増えている。15年ほど前から渡良瀬川に通っているというさいたま市の乾一郎さん(66)は「10年ほど前から魚が少なくなったと感じていたが、今年はいつ行っても魚がおり、増えたのが目に見えて分かる」と話す。さらに、川で自然に生まれ育った魚が釣れることも魅力で、乾さんは「やっぱり、自然の魚が釣りたい。魚が増えるまで、食べるのは我慢ですね」と話す。

     釣り人も戻りつつある。シーズン中、C&R区域の入り口には神奈川県や東京都のナンバーの車が並び、近くにあるコンビニ店では、日帰り客が利用する1日券の販売量が2年前の40枚から119枚まで3倍近くも増えたという。中島組合長は「渡良瀬川は本来、魚が育つのに適している川だ。きちんと維持すれば、多くの釣り客が呼べるはず」と今後に期待する。

     ◇キャッチアンドリリース(C&R) 釣り上げた魚を生きたまま川に戻すこと。魚を傷つけないよう、返しのない針を使うことも多い。渡良瀬川のC&R区域は高津戸ダムの下流から、山田川との合流部分の下流までで、違反した場合には罰金がある。外来魚のコクチバスについてはリリースが禁止されている。

    2013年11月06日 01時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て