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    <1>響け平和のゴング

     ◇現役プロレスラーで英語教員 サウザー・アシュリさん(アメリカ)

     ◇尊敬の念忘れない

    • リングで躍動するサウザー・アシュリさん(広島市南区で)=近藤誠撮影
      リングで躍動するサウザー・アシュリさん(広島市南区で)=近藤誠撮影
    • 異文化を知ることの大切さを生徒に伝える(東広島市黒瀬町で)
      異文化を知ることの大切さを生徒に伝える(東広島市黒瀬町で)

     「赤コーナー、カンザス・トルネード、サウザー」

     約300人の観客の熱気に包まれた会場に、アナウンスが響いた。広島市南区で12月下旬に開かれたプロレスマッチ。サウザー・アシュリさん(40)がリングに上がった。ロープからジャンプして体重100キロの鍛え上げた体を相手に浴びせる「サウザー・ボム(爆弾)」をはじめ、大技を次々と決めた。

     しかし、開始5分過ぎ、右腕を負傷。劣勢に追い込まれながら力を振り絞って立ち上がる姿に会場から声援がわき起こった。

     東広島市在住。市内の私立武田中・高の英語教師という顔も持つ。

              ◇

     米国で田舎とされるカンザス州で育った。「アメリカは世界の中心。世界のポリス」と信じていた。

     日本に興味をもったのは、好きだったプロレスで、活躍する日本人レスラーを見たのがきっかけ。1997年にALT(外国語指導助手)として、世羅町に赴任した。

     ある日、学校で生徒たちがアニメ映画を見ていた。「はだしのゲン」だった。同僚から「多くの市民や子どもたちも、被爆した」と聞かされた。

     「原爆投下は正しかった」と教えられていた。「世界のポリスが、悪いことをするわけないじゃないか」。自問自答した。

              ◇

     「正義とは何かを知りたい」。父親が牧師だったこともあり、聖書に登場するイスラエルやパレスチナに関心を持っていた。「紛争地で何かが見えるかもしれない」と、同町での勤めを終え、99年に足を向けた。

     パレスチナでNGOに加わり、医薬品を配布した。

     移動を制限する検問所があちこちにあり、壁の建設も始まった。自由なアメリカとは対照的な「監獄のような世界」で現地の人が開放的になれる時間。それが、プロレスだった。何度、倒されても立ち上がり、最後は勝利するヒーローの姿に、人々は自らの姿を重ね合わせていた。

     英語講師として大学で働いていた2003年、知人に誘われて訪れたジムには、さびたトレーニング器具や手作りのリングで懸命に体を動かす子どもたちがいた。指導する元レスラーの男性は、「戦車に石を投げるのではなく、鍛えることで自分をコントロールできるようにさせたい」と見守っていた。

     「プロレスはただのエンターテインメントじゃない。生きる力を与えてくれるんだ」。共感し、現地の人たちと一緒に汗を流した。

     04年に広島に戻り、翌年にプロデビュー。県内を拠点にする団体「ダブ・プロレス」に所属する。「ダブ」は平和の象徴である「ハト」の意味だ。

              ◇

     広島暮らしも10年を超えた。「戦争の惨劇を知るからこそ、弱い立場の人の気持ちが誰よりも分かるはず。広島にしか発信できないメッセージがある」と信じる。

     07年から勤務する武田中・高では国際交流を行う「インターアクトクラブ」の顧問を務める。「異文化を知る喜びを感じてほしい」と昨年11月、イスラム教徒との交流会を開いた。

     異なる文化を持つ多くの人たちと、体をぶつけあってきたからこそ、言えることがある。「相手をリスペクト(尊敬)し、互いに理解し合うことが平和への第一歩。僕は広島やパレスチナの人たちからそれを学んだ」(山上高弘)

     ◇どんなとこ

     アメリカの真ん中、グレートプレーンズと呼ばれる広大な平野に牧場や小麦畑が広がります。「オズの魔法使い」や、西部劇の舞台としても知られています。

     そして何よりの自慢はカンザス・ビーフ。脂身の多い日本の牛肉とは違って、かみごたえがあるのが特徴です。かめばかむほど味が出てきて、これぞステーキという感じ。食べた後は、顎が痛くなるほどです。

    2016年01月01日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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