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    <3>盲点補う「僕の役目」

     ◇宮島の食事処で働く アーロン・スミスさん(アメリカ)

    • 宮島に魅了されたアーロン・スミスさん(廿日市市・宮島で)=近藤誠撮影
      宮島に魅了されたアーロン・スミスさん(廿日市市・宮島で)=近藤誠撮影

     「Here is your conger eel on rice(穴子飯です)」。アメリカ・ミシガン州出身のアーロン・スミスさん(52)は、世界遺産・厳島神社(廿日市市)の参道沿いにある老舗旅館「錦水館」内の食事処でホールスタッフとして働く。ベルギーから来た女性客は容器のふたを開け「サンキュー」と笑顔を見せた。

     外国人観光客が年々増加している宮島でおもてなしにあたる数少ない外国人の一人だ。

              ◇

     大学在学中の1988年、「難しい日本語に挑戦しよう」と来日。東京の語学学校で学びながら、英会話学校の講師を務めた。知り合った県出身の女性との結婚を機に92年、庄原市へ移住した。英会話教室を開くなどしたが、2013年に離婚。「すべてをやり直そう」と同年4月、知人のいたこの島に来た。

     観光で数回訪れており、「外国人が必要とされている」と考えたからだった。島内での仕事はすぐには見つからなかったが、住み続けたい理由は出来た。

     「タイムレス ビューティ(時代を超えた美しさ)。懐の大きさに心身ともにリセットされる」。早朝の弥山みせんの澄んだ空気には、宗教を超える「神」の存在を感じた。深夜、遮るもののない対岸に広がる夜景に息をのんだ。歴史や文化財の魅力に加えて、住んでみて初めて分かった<ごほうび>だった。

              ◇

     対岸の宮島口のコンビニエンスストアでアルバイトをしながら、旅館組合に売り込みに行った。真剣な姿に「うちで働かないか」と声を掛けたのが、錦水館社長、武内恒則さん(61)だった。「フレンドリーで物おじしない。何より宮島への愛を感じた」。13年秋から店に立つ。

     メニューの英訳も担当し、「ニュアンスが伝わるように」と気を配る。例えば、外国人になじみの薄い、はんぺんは「フィッシュ・マシュマロ(魚のマシュマロ)」。「食感がよくわかるでしょう」と笑う。

     外国人観光客の中には、厳格なベジタリアン(菜食主義者)も少なくない。和食なら大丈夫と注文された場合には、天ぷらやみそ汁に魚介のダシを使っていることを告げる。「日本人の考えが及びにくい部分。それをできるのは僕だ」と自負している。

              ◇

     島で働くうち、ベジタリアンも安心して食事を楽しめ、アロマセラピーでくつろげる店を島内でオープンさせるという目標ができた。

     「訪れる全ての人にも心身ともにリラックスし、リセットしてほしい。数え切れないほどの島の魅力を伝えたい」

    (内田郁恵)

     ◇どんなとこ

     五大湖に面しています。お薦めは、ヒューロン湖に浮かぶリゾート地・マキナック島。周囲13キロほどの島では、車の使用が禁止され、馬車で移動します。独立戦争当時の要塞や130年近い歴史を持つホテルがあり、19世紀にタイムスリップしたような気分を味わえます。大学生時代にツアーガイドのアルバイトをし た思い出の場所です。

    2016年01月04日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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