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    <4>産業技術 歴史に光

     ◇備後のものづくり研究 張楓さん(中国)

    • 唐川社長(左)から制御盤の説明を受ける張さん。「高い技術力を持ち、経済を支えている企業が多い」と備後の産業の調査を進めている(福山市で)
      唐川社長(左)から制御盤の説明を受ける張さん。「高い技術力を持ち、経済を支えている企業が多い」と備後の産業の調査を進めている(福山市で)

     このロボットは、どんなところで使うのですか」。昨年12月21日、福山市でロボットや工場機械の制御盤などを手がける電気機械器具卸売業「栄工社」の工場で、福山大准教授の張楓ちょうふうさん(43)が質問していた。

     唐川正明社長(68)の説明を聞き、「産業用機械の分野を支える技術力が、備後のものづくりの魅力だ」と改めて確信した。だが、精密機械工業で栄える諏訪(長野)や楽器製造などが盛んな浜松(静岡)のように知られていない。「大企業に頼らない独立精神で育った備後の産業の変遷を発表すれば、評価は高まる」

         ◇

     出身地、大連市の大学に通っていた1992年、「改革開放が進む今の時代を生き抜くには一度、海外に行くべき」との父親の助言で留学を決意。先進国で経済学を学ぼうと日本を選んだ。戦前日本の軍国主義を学び、嫌悪感はあった。ただ、高校時代から日本語講座のテレビ番組で富士山、規律正しいサラリーマンらを見て、「興味があった」。

     95年、広島市内の大学に留学。担当教授の指導を受け、日本史にのめり込んだ。「特に幕末、明治維新の激動期を駆け抜けた志士に憧れた」。自然と日本経済史の研究者を志した。

     広島大大学院に進学後、企業調査を始めた。伝統産業に焦点を当て「松永下駄げた」や「府中家具」の歴史に関する論文を発表。府中家具については、高級婚礼家具の新興産地として高度経済成長期に量産化を図り、大規模見本市を成功させて急成長した背景を分析した。

         ◇

     企業調査では創業の由来や業績、取引先などを経営幹部から聞き取る。だが、調査の真意などを伝えられず、どなられたことも。それでも、「この地域の魅力を伝えないと埋もれてしまったままだ」と自身を奮い立たせた。「備後の産業の変遷をまとめる研究者がいなかったから、うれしい」と唐川社長も喜ぶ。

     調査した企業は福山、府中両市を中心に100社を超える。飲料水の容器製造会社やパンの中に具材を入れる専用機メーカーなど縁の下の企業ばかり。「目立たないが、確かな技術で経済を支えている」からだ。

         ◇

     2014年7月、人と人をつなごうと、異業種交流会を設立。小売店や食品店関係者らが月1回、業界の歴史などを話し合う。一緒に主宰する経済誌「備後レポート社」(尾道市)の二宮恵社長(47)は「産業の歴史を振り返る作業は必要。そこから新商品などが生まれるはず」と指摘する。

     2年前から備後の主要産業の一つ、機械金属工業の変遷を調査。「下駄や家具などの伝統産業を支えてきた機械工業が今日の主力産業になるまで成長してきた経緯を紹介したい」。今年度中に完成させる論文で、協力してくれた人たちに恩返ししたいと考えている。(浦野親典)

     ◇どんなとこ?

    遼東半島南端に位置する中国北部最大の港湾都市です。多くの日本企業が進出しており、日本料理店や日本スーパー、人気の衣料品店も出店しています。日本とは歴史的にも関係が深く、日露戦争の舞台となった旅順、日本の租借地時代の歴史的建築物が多い大連駅周辺は観光スポットです。広島市内と同じように路面電車も走っています。

    2016年01月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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