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    <8>「家族」育む 同胞35人

    ◇留学生が集まるアパートの世話役 シティ・マイムナーさん(インドネシア)

    • 千鶴コーポの前で談笑するマイムナーさん(左から3人目)、福村さん(中央)、ゴザリさん(左から5人目)ら(東広島市で)
      千鶴コーポの前で談笑するマイムナーさん(左から3人目)、福村さん(中央)、ゴザリさん(左から5人目)ら(東広島市で)

     広島大にほど近い東広島市西条中央のアパート「千鶴コーポ」。築35年の2階建て2棟に、留学生ら35人のインドネシア人が暮らす。

     千鶴コーポでは、定期的に忘年会や卒業生の送別会といった様々なイベントが開かれる。イスラムの教えに即して処理された「ハラール」の鶏肉や羊肉が出される。教義で禁じられた酒はないが、ジュースやお茶で乾杯する。

     「新しい家族のようです」。頭を隠す布「ヒジャブ」をまとった広大大学院国際協力研究科の研究員シティ・マイムナーさん(37)は3年余り暮らし、住民の世話役の一人だ。

     ジャカルタ出身で、エネルギーの節減など先進的な環境経済学を学ぶマイムナーさんは、広大には2度目の留学。最初は別のアパートに住んだが、家族4人で来日した今回は迷わずここに決めた。夫のアハマド・ゴザリさん(38)も同研究科の大学院生で、研究が夜遅くまで続くと、小学生の長女(12)と長男(9)の世話を周りの部屋の友人に頼む。

     「助け合うことができ、ホームシックになりません。おかげで日本語はなかなか上達しませんけど」。マイムナーさんが冗談交じりにほほ笑む。

     留学生らが頼りにしているのが、千鶴コーポの大家、福村明士さん(73)。かつて建設会社で香港に6年駐在した経験があり、英語が堪能な福村さんを頼って、7年前からインドネシア人留学生らが次々と入居した。「陽気で結束力があり、マナーもいい。同じ文化の人同士がいいだろう」と、不動産会社などの仲介は受けず、同国の留学生に入居を絞っている。

     4年前にはアパートに住む留学生と地元の市民、広大生らと「東広島インドネシアフレンドシップクラブ」を設立し、一緒に様々なイベントを開いてきた。「インドネシアの学生はよく学び、よく遊ぶ。日本の学生は手本にすべきだ」。福村さんはつくづく思う。

     インドネシア人が多く集う市内には県内初のモスクを備えた「広島イスラム文化センター」がある。インドネシアやアフガニスタン、シリアなどのイスラム教徒が協力し、寄付を集めて5階建てビルを買い上げ、2012年にオープンした。

     ゴザリさんは1日5回の礼拝のうち、4回は8人乗りワゴン車で仲間とモスクに通う。広大でも礼拝のスペースが設けられ、マイムナーさんも祈りをささげる。

     マイムナーさんが会長を14年までの1年間務めた「在広島インドネシア留学生協会」には100人余りが所属する。同協会や千鶴コーポに入居していた留学生らは帰国後も連絡を取り合い、親交を深めている。

     マイムナーさんは「広島で人のネットワークを内外に広げることができたのが、大切な財産。帰国してもつながりを持ち続けたい」

     広島で生まれた輪が広がっていく。(阿部健、おわり)

     ◇どんなとこ?

     インドネシアの首都でジャワ島西部に位置し、人口が1000万人近くに達する巨大都市です。

     見どころは、東南アジア最大のモスクで10万人以上を収容する「イスティクラル・モスク」や高さ137メートルの独立記念塔。近代的なビル群、オランダ統治時代の旧市街、庶民が集うマーケットと、異なる風情を楽しめるのが魅力です。

    2016年01月12日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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