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    ともに歌い心の復興へ

    音楽療法士の智田さん

    • キーボードで歌謡曲を演奏する智田さん(5日、宮古市の仮設住宅で)
      キーボードで歌謡曲を演奏する智田さん(5日、宮古市の仮設住宅で)

     盛岡市の音楽療法士智田邦徳さん(46)が、仮設住宅の巡回ボランティアを続けている。被災者と一緒に歌謡曲や民謡を歌い、リラックスした状態から被災体験などを聞き出すことでストレス発散につなげている。「仮設がなくなっても、被災者に向き合っていく」と心の復興まで見届けるつもりだ。(菅原智)

     「私は福田こうへいさんの歌が大好きなのよ」

     「じゃあ歌いましょうか」

     宮古市宮町の仮設住宅の集会所で5日、住民と智田さんの会話から演奏が始まった。参加した4人は、智田さんのキーボードに合わせて歌声を響かせた。1曲終わるごとにリラックスした状態で、被災体験やこれまでの人生、仮設住宅での生活について自ら話し始めた。

     「おやじの海」(村木賢吉)を歌った後は、「津波で家は流されたけど、やっぱり海は恋しいよな」と、「港町十三番地」(美空ひばり)を歌うと「亡くなった船乗りの旦那を思い出すわ」。1時間ほど歌と話が続いた。

     同市向町の自宅が全壊した木村修さん(64)は、「ここに来てみんなと歌って話すことが生きがい。気持ちが和らぐ。智田さんが来てくれなかったら、仮設に閉じこもってたよ」と話す。

     智田さんは、妹が障害者だったこともあって、「自分の大好きな音楽で医療や福祉に携わりたい」と日大芸術学部に進学。オペラを専攻すると同時に音楽療法について学んだ。現在は、盛岡市内の病院に非常勤職員で勤める傍ら、一般社団法人「東北音楽療法推進プロジェクトえころん」の代表理事として、県内の福祉施設で高齢者や障害者の心のケアにあたっている。

     ◇沿岸部の仮設回り話聞く  レパートリー400曲に

     東日本大震災の約1か月後から2011年7月までは、毎週末に避難所約10か所で音楽に合わせた体操などをし、避難者の心と体の健康維持に努めた。今は宮古、大槌、大船渡の3市町の仮設住宅33か所を回っている。

     巡回では、忘れないように、参加者の名前と好きな曲、曲にまつわる思い出などをパソコンに記録。リクエスト曲も受け付け、初めは150曲ほどだったレパートリーは約400曲にまで増えた。最近は、歌を1曲も歌わずに被災体験を聞いて終わることもあるが、「音楽はあくまで話してもらうきっかけ。信頼関係が築けてきた証拠」と喜ぶ。

     「仮の住まいに住んでいても、それは仮の人生ではない。音楽を通じて被災者の人生を少しでも楽しいものにしたい」

    2014年04月12日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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