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    退居後も被災者のまとめ役 北上の雇用促進住宅 大槌出身の服部さん

    • 北上市の雇用促進住宅堤ケ丘宿舎の集会所の前に置かれたプランターの花に水をかける服部さん(右)と中村さん(4日)
      北上市の雇用促進住宅堤ケ丘宿舎の集会所の前に置かれたプランターの花に水をかける服部さん(右)と中村さん(4日)

     北上市村崎野の服部正身さん(77)は、日曜日を除きほぼ連日、自宅近くの雇用促進住宅堤ケ丘宿舎の集会所に自転車で出かける。東日本大震災で大槌町の自宅が被災し、自身も一時、身を寄せた宿舎には今も42世帯88人の被災者が暮らす。市内に新居を構え、宿舎を退居してから既に1年半が過ぎたが、今も被災者のまとめ役として信頼されている。(一條裕二)

    ■集会所でお茶っこ 5階建て集合住宅4棟が並ぶ片隅に、小さな平屋の集会所はある。4日午後、宿舎に住む高齢女性が姿を見せた。手には、2日前に被災地を視察した安倍首相とのツーショット写真。うれしそうに見せる女性に、服部さんら居合わせた4人が「すごい記念だ」「これは天国に持っていぐにいい。お茶っこでお祝いだ」などと冗談交じりで声をかけ、自分のことのように喜んだ。

     服部さんは、津波で大槌町新港町の自宅が流失。妻と親戚の家で世話になった後、2011年5月に堤ケ丘宿舎で暮らし始めた。

     集会所には当初、鍵がかかっていたが、「被災者が集える場を」とみんなで声をあげ、北上市がコミュニティー活動支援として使用料を負担することで利用可能となった。

     忘年会や新年会、小正月のみずき団子の飾り付けなどのイベント、囲碁、将棋、お茶を飲みながらの座談会……。集会所は、沿岸各地から着のみ着のままでやってきた被災者たちの心のよりどころになった。

    ■出勤率100% 服部さんは12年12月に新居に移り住むまで、被災者代表として1年近く、イベントの企画や行政などとのパイプ役を担ってきた。「小間使いと一緒」と謙遜するが、現在の代表を務める大槌町出身の中村秀世さん(72)は「我々はおんぶに抱っこだった。今も出勤率100%だし、オレは名前貸してるだけだ」と話す。

     震災から3年が過ぎ、服部さんのように市内の別の場所で新生活を始める被災者が増え、被災住人は半分になった。集会所にいつも顔を見せる被災者も6~7人に減っている。それでも、ホームセンターやスーパーが近いこともあり、退居した被災者が立ち寄り、イベントを企画すれば多くの被災者が集まる。

     「ずっと家にこもってたら精神的にまいってしまうが、集会所があるから色んな話ができる」と服部さん。「この集会所は本当に元気が出る。大事な大事な場所だ」。そう話す中村さんの言葉に、服部さんは大きくうなずき、みんなで集会所前に植えた花に、いとおしそうに水をやった。

    北上市の雇用促進住宅堤ケ丘宿舎の集会所の前に置かれたプランターの花に水をかける服部さん(右)と中村さん(4日)

    2014年07月12日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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