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    震災の痛み 整体で癒やす 陸前高田の菅野さん 開業1周年

    • 患者の背中を丁寧にもみほぐす菅野さん(7月26日、陸前高田市気仙町で)
      患者の背中を丁寧にもみほぐす菅野さん(7月26日、陸前高田市気仙町で)

    陸前高田市気仙町の菅野秀喜さん(50)が自宅の倉庫を改装して始めた小さな整体院が、開業1周年を迎えた。東日本大震災後の激務などが原因で腕のしびれや痛みに襲われ、仕事が続けられなくなったが、東洋医学の整体療法に救われた経験から整体師への転身を決意。「同じ苦しみを抱える被災者を癒やしたい」と患者に向き合う。

    (安田信介)

    ■100人が通院 7月26日午後に整体院を訪れた患者は、近くで漁師を営んでいる男性(52)。腰痛があり、日々の船上作業がつらいという。

     菅野さんはベッドに男性を寝かせ、首筋や背中をもみほぐしていく。1時間半の施術後、整体院を出た男性は「体が楽になったよ。ここが一番丁寧にやってくれるんだ」と晴れやかな表情を見せた。

     整体院は約13平方メートルと手狭でベッドは1個だけ。一度に多くの予約は受けられないが、患者からは「他の人と顔を合わせなくて済む」とかえって好評だ。この1年で100人ほどの患者がついた。

    ■激務で病気仕事断念 菅野さんは26年間、大船渡市で自動販売機の納品・管理を請け負う事務所で働いてきた。事務所が震災の津波で全壊し、市内の実家に拠点を移して2011年夏に業務を再開したが、しばらくすると右手の指や肩がしびれ、右腕が上がらなくなった。

     医師の診断は、神経や血管の圧迫でしびれや痛みが起きる「胸郭出口症候群」。長年、約10キロの工具入りかばんを右肩から提げ続けたことに加え、仮設住宅の建設で自販機の設置依頼が急増し、負担が大きくなったことが原因だった。

     投薬治療を試したが効き目はなく、仕事は諦めざるを得なかった。

     ようやく痛みを和らげてくれたのは、県内外の接骨院を回った末に見つけた宮城県内の整体院。東洋医学を基にした整体療法を取り入れていた。

    ■今度は自分が 新たな仕事を探す際、「今度は自分が患者を楽にしてあげたい」という思いに駆られた。12年の年明けから半年間、群馬県の施設で毎月の講習を受け、夏に開業認可を取得。その後、100万円以上をかけて設備を整え、昨年7月の開業にこぎ着けた。

     妻と3人の子供の家計を支えられるかどうか不安もあるが、痛みを抱えてしかめ面で来院した患者が笑顔で帰っていく様子を見ると、疲れが吹き飛ぶ。

     「もっと多くの笑顔のため、体力のある限り続けます」と意気込んでいる。予約などの問い合わせは、菅野矯体院(090・3368・3873)。

    2014年08月16日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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