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    大槌から音の恩返しを

    楽団長岩間さん 育った町のため演奏

    • おそろいのピンクのTシャツを着て演奏を楽しむ岩間さん(13日、西和賀町の銀河ホールで)
      おそろいのピンクのTシャツを着て演奏を楽しむ岩間さん(13日、西和賀町の銀河ホールで)

     大槌町の若者などによる楽団「大槌ウインド・オーケストラ」が、積極的に演奏会を行っている。団長は、同町出身の岩間由華さん(26)。ふるさとや自分を支えてくれた人たちに「音楽で“音返しおんがえ”したい」と笑顔で話す。 (柿沼衣里)

     「生まれ育った大槌町のために何ができるのか。その答えが音楽でした」

     13日に西和賀町の楽団などと合同で開いた演奏会。ステージから観客にあいさつをする際に、はっきりとした声でそう話した。

     楽団は約1年前に発足した。東日本大震災で自宅が流失し、仮設住宅暮らしが2年目を迎えるころだった。大槌中、大槌高の吹奏楽部の後輩だった菅谷安美あみさん(24)に食事に誘われたのがきっかけだ。

     震災当時、東北学院大の吹奏楽部員だった菅谷さんは、被災地で何度か演奏会を開いた。来場者の中には、涙を流して演奏を聴いてくれる人もいたという。音楽の大きな力を実感し、「地元でも楽団を作りたい」とかつての仲間に声を掛けて回っていた。

     震災直後は音楽を聴く心の余裕さえなかった。日々の生活で精いっぱい。しかし、自分と同じように津波で自宅を失いながらも、前向きに生きる菅谷さんの熱意に心を打たれた。

     「よし、やろう。できるかぎりのことをしてみたい」。老人ホームでの介護の仕事で忙しかったが、楽団の団長を引き受けた。

     当初は、楽器集めにも苦労したが、被災地に中古楽器を無償で提供する団体「楽器forKids(フォーキッズ)」が協力してくれた。フルートやトロンボーンなど9種類計21個をそろえることができた。

     高校卒業以来、約6年ぶりにクラリネットを手にしたときの感動が忘れられない。そっとクラリネットに息を吹き込むと、あの懐かしい低く温かみのある音が体中に響いた。

     自然と涙がこぼれた。演奏ができる喜びと、吹奏楽に夢中だった頃のふるさとの町並みや家を失ったやるせなさが、ぐっとこみ上げてきたからだ。

     練習は週に2回、仮設団地の集会所で行っている。仮設住宅では隣の住民に迷惑がかからないよう、いつも音を立てないように暮らしている。「約10人の仲間と一緒に思い切り音が出せるのがうれしい。何よりの気分転換です」

     これまでに大槌町の体育館やスーパーなどで約10回演奏会を開いた。今後は、幼稚園や老人ホームでも演奏をしたい。100年後も大槌の音楽好きが集える楽団に成長させることが、いまの夢だという。

     「楽団を作ったことで、音楽は演奏する自分たちだけでなく、聴いてくれる人にも笑顔を届けられることを学びました」

     未来を見つめた強いまなざしだった。

    2014年09月20日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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