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    水産加工人が足りない

    工場長「遊んでいる機械も」

    • サンマの加工作業にあたる従業員たち(1日、大船渡市大船渡町で)
      サンマの加工作業にあたる従業員たち(1日、大船渡市大船渡町で)

     三陸有数の水産加工会社「阿部長(あべちょう)商店」(本社・宮城県気仙沼市)の大船渡食品工場(大船渡市大船渡町)では1日午後も、衛生服姿の従業員が忙しく手を動かしていた。サンマの頭と尾を切り落とし、揚げ物用の衣を付ける。魚の水揚げが少ないこの時期でも、魚を載せたコンベヤーは動き続けている。

     同社は9工場のうち8工場が津波で被災した。復旧したのは現在、3工場だけ。1工場当たりの仕事量は増えた。11年夏から再開した大船渡食品工場では、従業員を震災前の52人よりも多い76人まで増員した。それでも受注に生産が追いつかず、繁忙期には夜遅くまでの残業はざらだ。午前6時から機械を動かすこともあるという。

     操業再開から求人を続けているが、今年1月の応募はゼロ。2月には5人が加わった。大畠正広工場長(48)は、「100人ぐらいまで増やしたい。人が足りず、工場の中で遊んでいる機械もある。力仕事もあるので若い人に来てほしい」と話す。

     従業員のうち16人は、操業が中断したままの気仙沼工場からの応援組。気仙沼工場が再開すれば元の職場に戻る。従業員確保に頭を悩ませる日々が当分続く。

     県沿岸部では水産加工場の復旧が進む一方、人手不足が深刻だ。

     岩手労働局によると、水産加工が大部分を占める「食料品製造」のハローワーク別の有効求人倍率(今年1月)は、久慈1・41倍、宮古2・49倍、釜石3・00倍、大船渡2・28倍と高い水準になっている。

     人手不足以外にも、水産加工業者が抱える悩みは多い。工場の再建・移転。再開後の販路の縮小。三陸漁業の柱となってきたサケの不漁。東京電力福島第一原発事故による風評被害。“5重苦”とも言える厳しい環境の中でも、好機をつかもうと動き出した業者もある。

     2月中旬に大船渡市内で開かれた、危険度分析に基づく重点衛生管理(ハサップ)の研修会には、水産加工業者13社などの22人が出席。丸一日かけて、米航空宇宙局(NASA)が宇宙食の安全確保のために開発した高度な手法を学んだ。

     換気の徹底や清潔な区域の設定など、工場の設計段階からの取り組みが必要なため、ハサップ対応の水産加工場は「県内にはほとんどなかった」(県水産振興課)。だが被災後の工場再建をにらみ、ハサップに注目する業者は多く、今年度開いた3回の研修会には計約60人もの出席があった。

     工場移転を機にハサップ導入を検討しているという、宮古市内の水産加工業者はこう意気込む。

     「せっかく復旧するのだから、大手業者を相手にしても負けない、消費者にアピールできる商品を出したい。三陸沖は『世界三大漁場』の一つ。まだまだ可能性はある」(小林雄一、安田信介)

    ■水揚げ量2割増 金額横ばい サンマ安値響く

     県内13魚市場の2012年の水揚げ量は10万9155トンで、震災のあった11年(9万1282トン)と比べて約2割増えた。被災した定置網の復旧などが相次いだためで、県水産振興課は「県内の水産業は徐々に回復傾向にある」とみている。

     一方で水揚げ金額の先行きは不透明だ。12年は157億6915万円で水揚げ量が増えたにもかかわらず、金額は11年からほぼ横ばい。サンマの価格が2割ほど下落したことなどが響いた。

     県内漁業の柱となるサケ漁は2年連続の不漁で、漁業の復興に悪影響を与えそうだ。

    ■求職者数の減少響く

     沿岸部の有効求人倍率は上昇傾向にあるが、中でも水産加工業などの「食料品製造」の倍率が急伸している。その要因は、求職者数の減少にある。

     1月の食料品製造の求職者数をハローワーク別でみると、久慈49人(昨年7月比46人減)、宮古55人(同83人減)、釜石34人(同94人減)、大船渡89人(同195人減)といずれも大きく減少。一方で、求人数は半年前と比べてほぼ横ばいだった。

     岩手労働局の熊谷一郎地方労働市場情報官は、「求職者がここまで減るとは予想していなかった。震災前よりも少ないハローワークもあり、深刻な状況だ」と嘆く。被災地向けの失業手当の給付延長が昨年9月で終わったことで、他業種に就職した人が多いことなどが求職者減につながったとみている。

     水産加工業に人を呼び込もうという取り組みも始まっている。

     大船渡、陸前高田、住田の3市町を管轄するハローワーク大船渡は昨年4月~7月に、管内の水産加工業者7社を会場にした見学会を開催。参加した延べ87人のうち、25人の就職に結びついたという。伊藤忠雄所長は、「まずは仕事を知ってもらうこと。水産加工は大切な地場産業。これからも手厚く支援していきたい」と話す。

     県雇用対策・労働室は昨年12月、再建した水産加工業者の仕事ぶりを収めたDVDを作成。沿岸部のハローワークや高校などに配布した。新年度には加工業者の工場を回る見学会を6回ほど開く予定という。

    2013年03月02日 01時15分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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