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    農家「放射能」に涙

    シイタケ栽培断念「誇り失われた」

    • 放射性物質に汚染されたほだ木を眺める千葉さん(2月27日、一関市狐禅寺で)
      放射性物質に汚染されたほだ木を眺める千葉さん(2月27日、一関市狐禅寺で)
    • 平泉中学校周辺の未舗装の町道では、放射線量の高かった路肩の土が除染された(2月28日撮影)
      平泉中学校周辺の未舗装の町道では、放射線量の高かった路肩の土が除染された(2月28日撮影)

     東京電力福島第一原子力発電所の事故で飛散した放射性物質の影響は、県内で今も深刻だ。

     「これまでやってきた原木シイタケ栽培がダメになり、シイタケを育てる『ほだ場』に行くのもつらい」。一関市の農家約80戸で作るJAいわて南椎茸(しいたけ)生産部会長の千葉孝夫さん(63)は、雪をかぶったほだ木を見ながら肩を落とした。

     原発事故の影響で出荷停止が続く露地ものの原木シイタケを栽培していた同市の農家のうち、71・6%に当たる240戸が、今年1月の市の調査に、生産再開を断念する意向を示した。干しシイタケだけで2010年の生産量が約35トンあった県内有数の産地だが、かつてない危機を迎えた。

     千葉さんは中学卒業後、16歳で農業を始め、「新しい特産品を」とシイタケ栽培に乗り出した。年間300キロ・グラムの干しシイタケを生産するまでになり、約150万円の収入を得ていた。しかし、昨春から出荷できなくなり、収穫をやめた。

     汚染されたほだ場の落葉層を取り除いたり、新たな施設を設けたりして、シイタケ栽培が再び軌道に乗るまでには6、7年かかる。同部会は60歳以上の農家が中心だ。「高齢者に再開は難しい」と千葉さん。後継者もおらず、50年近く続けてきたシイタケ栽培をやめざるを得ない状況だ。

     一緒に栽培を続けてきた妻のむつ子さん(64)は、「『シイタケは健康に良い』というイメージが、放射能で一変した。農作業の喜びや誇りが失われ、こんなことってない」と涙ぐむ。雪解けを待ち、ほだ木の片づけを本格的に進めるが、苦しい作業だという。

     奥州市で、側溝にたまった汚泥を一時保管する共同仮置き場の設置計画が難航している。2月には江刺、胆沢、前沢の3行政区で検討されていた候補地が、放射性物質の集積や風評被害を心配する地元住民の反対で変更される見通しになった。

     衣川区では住民が一定の理解を示し、市は住民との協議を続ける考えだが、不安や設置反対の声は皆無ではない。

     同区の候補地は、国道4号から約3キロ離れた林野内の工業団地跡。周辺に住宅が比較的少ないことなどから選ばれたが、標高が低い東側の土地で米作りをする農業男性(74)の気持ちは複雑だ。「候補地から田んぼの方に水が流れてくる。一時保管の必要性は分かるが、納得できない」。住民説明会で、市の担当者から「二重、三重に防水対策をする。汚染された水は漏れない」と説明されたが、反対の立場は変わらない。

     「設置に向けた市の前向きな姿勢を評価している。ただ、放射線に対する住民の不安を考えると、反対意見が出るのも当然だ」。同区の住民代表として候補地を決めた検討会員の一人も、計画推進の難しさを実感している。

    ■学校など除染、117か所で終了 一関、奥州、平泉

     除染が必要な空間放射線量が毎時0.23マイクロ・シーベルト以上の場所がある「汚染状況重点調査地域」に指定された一関、奥州、平泉の3市町では、今年度、除染実施計画などに基づき、子どもが長時間過ごす学校や保育園など162か所の施設で除染を行い、2月末現在、うち117か所で終了した。

     平泉町では、平泉中学校近くの町道約200メートルの除染も2月上旬に完了。毎時0.23~0.27マイクロ・シーベルトだった放射線量が、0.13~0.16に下がった。

     除染の課題は多い。一関市は2013年度、住宅や事業所の除染を進めるため、約2万3000軒の放射線量を測定する予定だが、対象軒数が多く、当初は今年8月としていた除染の完了時期は遅れる見通しだ。現在の除染実施計画では、住宅で表土除去など効果的な除染が困難なため、同市は民家など3か所で雪解け後に試験的な除染を行い、まず効果を判定する。奥州市と平泉町は、一関市のような住宅ごとの測定は行わず、除染の作業も住民頼みの部分が大きい。

     放射線に対する子どもの健康対策の充実を平泉町に要望している住民グループ代表、遠藤セツ子さん(61)は、「放射線量が高いのに除染が済んでいない場所には注意喚起の掲示をするなど、行政にはきめ細かな対応をしてほしい」と話している。(福浦則和)

    2013年03月04日 01時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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