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    遠い企業再建

    量産体制整うが売り上げ半減

    • 半導体を一つずつチェックしていくウェーブクレストの従業員(7日、宮古市松山の「ウェーブクレスト宮古工場」で)
      半導体を一つずつチェックしていくウェーブクレストの従業員(7日、宮古市松山の「ウェーブクレスト宮古工場」で)

     シミ一つない壁の内側は、静電気を防ぐため常に湿度が40~60%に保たれている。室内には、最新鋭の機材で構成された長さ30メートルほどの製造ライン4本が並ぶ。製造されているのは、レーザープリンター用の電子基板。別の場所では15人の従業員が一つずつ確認し、納品トレーに入れていく。

     電子部品メーカー「ウェーブクレスト」(本社・川崎市)宮古工場は、宮古市の誘致を受けて21年前に進出したが、津波で工場が全壊。約100人の従業員のほとんどを、一時解雇せざるを得なくなった。震災2か月後の2011年5月には市内の民有地を確保し再建に動き出し、12年1月に操業を再開した。

     再建には、建設費と設備費計16億円がかかった。12億円はグループ補助金で賄った。4億は同社で負担したが、佐々木勲工場長(49)は、「一刻も早く再開しなければ、取引先を失ってしまうという危機感があった」と振り返る。

     同年3月に量産体制が整ったが、売り上げは震災前の半分以下だという。津波で流失した機材のリース料の未払い金も1億円以上残っている。

     「グループ補助金がなければ、到底再建は無理だった。5~10年たって復興に向けた公共事業も無くなっても、地域経済が成り立つように頑張らなければ」。佐々木工場長は自らを奮い立たせる。

    ■自己負担分めど立たず

    • 津波被害を受けた「たろう観光ホテル」の前に立つ松本社長(3日、宮古市田老で)
      津波被害を受けた「たろう観光ホテル」の前に立つ松本社長(3日、宮古市田老で)

     再建の手前で足踏みを強いられている企業も少なくない。

     津波で甚大な被害が出た同市田老地区。更地の中に、時間が止まったように「たろう観光ホテル」が被災した当時のままに残っている。6階建てのうち、2階までは骨組みしか残っていない。

     「本来ならもう着工している予定だったのに……」。松本勇毅社長(56)は、再建予定地の近くの山に目をやる。

     同ホテルの再建に向けた計画に対して、11年12月、被災した他のホテルと共に、グループ補助金の採択が決まった。補助金を除き、建設費の4分の1を自己資金で賄うことになったが、金融機関からの融資を受けられないでいる。松本社長は、「土地の売却が決まらないためだ」とため息をつく。

     被災した同ホテルの建物は、市が計画する「津波遺産等保存整備事業」で保存される方針が決まっている。しかし、市が用地取得費に充てる予定の復興交付金は、まだ認められていない。「交付金が決まらない中で、不動産鑑定士に依頼できない。事業の採算性や整備内容の調査をしっかり行ってからになる」と市復興推進課は説明する。

     新しいホテルは当初、今年の秋に完成する予定だったが、着工は今年7月、完成は早くても来年の1月になる。松本社長は「魅力的な田老地区の将来像を早く示さないと、人口流出にもつながるのに……」と、自己負担分のめどが立たないことに危機感を募らせている。

    ■営業再開“北高南低”久慈97%陸前高田55%

     被災地の持続的な雇用創出に不可欠な企業の営業再開は、沿岸北部で着実に進む一方、被害の大きかった沿岸南部では約半数にとどまるなど、復興の度合いは企業再建でもまだら模様になっている。

     県経営支援課が沿岸12市町村の商工会議所、商工会の会員についてまとめた2月1日現在の再開状況によると、被災4325事業所のうち営業を再開したのは、仮設施設を含め3201と74・0%に上った。1年前の63・4%に比べ約500事業所が再開したことになる。

     再開した割合をみると、洋野町、久慈市、普代村、岩泉町の4市町村が95%以上となる一方、陸前高田市が55・6%、大槌町が56・3%と低く、地域差が顕著となっている。

     被災地の企業再建の最大の支援策と位置づけられているグループ補助金は、1月31日現在、県内では882事業者に交付が決定している。アンケート調査を基にした同課の推計によると、61・5%に当たる542事業所が今年度末までの再開を予定しているが、37・8%に当たる333事業所は新年度以降にずれ込む見通しとなっている。

     今年度後半にグループ補助金の認定が決まったことによる時間不足のほか、資材費や人件費の高騰で当初の発注額で工事を進めることができなくなった例や、自治体の土地利用規制によって工事が着工できなかったり、代替地の確保が難航したりする例が報告されている。取引先の撤退や販路縮小などのため、グループ補助金の受給が決まっていながら再建を断念した事業所もある。

     同課は、「震災から2年近くがたちながら、土地の確保難などで再建に踏み出せていない企業も少なくない。意欲を失わせないような一層の支援が重要になる」としている。

    2013年03月09日 02時19分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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