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    震災 時止まったまま

    • 生死を分けた屋上に続く2階の踊り場。奥の壁のはしごを上って屋上に逃れた職員らは助かった(13日、大槌町で)=関口寛人撮影
      生死を分けた屋上に続く2階の踊り場。奥の壁のはしごを上って屋上に逃れた職員らは助かった(13日、大槌町で)=関口寛人撮影
    • 2階の議場。奥の議長席後ろの壁は津波の水圧で外側にせり出し、光が入り込む
      2階の議場。奥の議長席後ろの壁は津波の水圧で外側にせり出し、光が入り込む
    • 1階宿直室の床には泥が積もり、電話が埋もれていた
      1階宿直室の床には泥が積もり、電話が埋もれていた

    大槌旧庁舎の内部公開

     生死を分けた屋上へ続くはしごはび、コンクリート壁の鉄筋がむき出しになっていた。床には泥に埋もれた電話と、あの時から止まったままの時計――。東日本大震災の津波で全壊した大槌町の旧役場庁舎が13日、解体工事を前に初めて報道陣に公開され、内部に入った。震災から7年3か月たった今も、大津波に襲われた爪痕が生々しく残っていた。

     中に足を踏み入れると、静けさと冷気を感じた。1階は大量の泥が積もり、町民課の床には、津波が到達したとみられる午後3時15分で止まった卓上時計が転がっていた。泥の中に電話や蛍光灯、電卓などが埋もれ、雑草が生えていた。

     正面玄関近くの階段を上って2階に行くと、屋上に続くはしごにたどり着く。 あの日、正面玄関前に災害対策本部が置かれ、職員は押し寄せる黒い波に気づいて逃げた。屋上に逃れた職員らは助かった。はしごに触れた時、以前、助かった職員が「黒い壁が土煙を上げて襲ってきた」と話していたことを思い出し、身震いした。

     天井付近まで津波が達した2階は、窓が窓枠ごとなくなり、天井が崩れかけていた。議場は赤いカーペットが破れ、議員席は土台だけ。議長席後方の壁は、厚さ10センチのコンクリートが津波の圧力で外側にせり出し、崩れ落ちそうだった。2階からは建設中の防潮堤と静かな大槌湾が一望でき、隣のかさ上げ地に立つ新しい住宅に時の流れを感じた。

     遺族らの聞き取り調査を続ける岩手大の麦倉哲教授も中に入り、「何らかの形で残すべきだと改めて感じた」という。役場職員の兄が犠牲になった倉堀康さん(34)は旧庁舎前を訪れ、「解体を望んでいたが、将来にわだかまりが残る形で手続きが進み、心が晴れない。遺族にも公開してほしかった」とつぶやいた。

     解体を望みながら心が揺れる遺族の姿に、この問題の重さと難しさを感じた。(柿沼衣里)

    2018年06月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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