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    「感覚」頼りに造る魅力

    • みそ蔵「宮入醸造」4代目 宮入正孝さん
      みそ蔵「宮入醸造」4代目 宮入正孝さん

    みそ蔵「宮入醸造」4代目 宮入正孝さん

     従業員は私と71歳の父のわずか2人。大手メーカーには人手も設備も劣る小さな蔵ですが、ここで造った「信州マルミヤみそ」が2013年、みその全国ナンバーワンの称号「農林水産大臣賞」を受賞しました。電話で知らせを受けた瞬間、地域のお客さんの顔が浮かび、喜びがこみ上げてきました。

     大学卒業後は都内のITサービス企業に就職し、主に地方銀行のシステム管理をしていました。コンピューターの世界は、全て「0」と「1」です。仕事は「理屈と計算」でこなすのが当たり前でした。

     全国転勤を繰り返すよりも、故郷に根を張りたいと思い、1999年に実家に戻りましたが、そこは今までの常識が通用しない世界でした。大豆を煮たり、こうじを加えたりする過程で必要なのは、香りや色合いを見きわめる「感覚」。言葉では説明できません。

     先輩の職人さんがよく「良いあんばいで出来上がった」と言うのですが、意味がわかりませんでした。

     コンピューターならシステムの修正はギリギリまで可能です。最終的に間違いがないことが重要。ただ、みそはそうはいきません。味に納得がいかず、完成間近に手を加えて「微修正」しても、お客さんからは「いつもの味じゃないね」と見抜かれてしまいます。

     そんな時、黙々とみそに向き合う父の背中が目に映りました。寡黙な父ですが、「説明書なんてない、体に染みつかせろ」と語っているようでした。その隣で大鍋やみそだるの前に立ち続け、15年がたちました。

     「信州マルミヤみそ」はここ5年ほど、全国2位にあたる食料産業局長賞を受賞し続けました。ただ、やるからにはトップを目指したかった。大豆の産地を変えるなどの工夫も加えましたが、勝因は、理屈と計算で説明できない世界にのめり込めたことだと思います。

     いつか、自分の手で大豆も育て、昔ながらの信州みそを造ることが夢。言葉で伝えきれない魅力をお客さんに発信し続けたいです。(聞き手・柳沼晃太朗)

     

     1969年生まれ。長野市出身。同市の「宮入醸造」は明治45年(1912年)の創業で、4代目として蔵を切り盛りしている。みそ以外に、しょうゆの製造も行っている。

    2015年01月13日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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