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    課題解決 自ら導く…奈良女子大授業

     「カフェに増えてきた外国人客に対応したい」「図書館のパソコンは今、使えるかな」――。そんな街の<困りごと>から始まる授業が、奈良女子大(奈良市)で行われている。ICT(情報通信技術)を用いて、オーダーメイドの解を提案するPBL(課題解決型学習)。目指すのは、日々のちょっとした不便の解消に技術を役立てる「企画設計力」の養成だ。(大橋彩華)

    • 学生たちが作った弁当予約システムの予約画面。〈1〉種類〈2〉個数〈3〉メールアドレス(任意)を入力して送信する
      学生たちが作った弁当予約システムの予約画面。〈1〉種類〈2〉個数〈3〉メールアドレス(任意)を入力して送信する

     1月31日、学内で行われた発表会では、生活環境学部の2年生16人が半年間の成果を報告し、依頼者や同級生の前で作り上げたシステムを実演。円滑に運用できるようマニュアルも添えた。使えなければ、「お客さんの課題」が解決したことにならないからだ。

     「教室では最善だと思ったものが、必ずしもお客さんの要望とは合致しなかった」と、発表を終えた安浪涼花さん(20)は振り返った。安浪さんら5人が向き合った<困りごと>は「生協の弁当が売り切れで買えなかった」という学生の声。

     大学生協からの聞き取りを重ね、スマートフォンなどから弁当を予約できるシステムを構築した。利用する学生の役に立つのはもちろん、生協側には、曜日ごとの予約データが蓄積されるメリットも生まれる。

     当初提案したのは、利用者が予約画面にメールアドレスを入力し、自動送信されるメール画面と引き換えに商品を渡す案。しかし生協との協議で、忙しい昼の時間帯の確認作業は、手間がかかりすぎると気付かされた。厳密な本人確認より利便性を優先し、注文個数の上限を設定した上で、アドレス入力は任意とした。

     「使い勝手を考えて、本当に必要なシステムを作るのは想像以上に難しかったが、その分やりがいもあった」と安浪さん。技術に状況を合わせるのではなく、現場の声に耳を傾けることの大切さを実感したという。半年を終え、会議の記録は山のように積み上がった。

     担当の駒谷昇一教授(56)は、3年前にIT企業から転身したPBLの第一人者。「技術は高度化したが、それを世の中のために活用できる人材は少ない」と現場で感じてきた問題点を解決しようと、専門情報教育の基礎となる必修科目として昨年度、開講した。

     情報通信技術が身近になる一方、専門企業は小規模な注文まで対応できず、地域のICT化は遅れている。身の回りの不便が問題として把握されていない場合も多く、依頼者が気づかない隠れた課題を掘り起こす作業が求められるという。

     「大切なのは技術をどう社会に生かすかを主体的に考える力。実践的な教育が必要だ」と駒谷教授は語る。教室を一歩出れば、悩みも状況も人それぞれ。教えられた解法を記憶するだけでは通用しないのだ。

     駒谷教授が注目するのは、世界中から観光客が集まる奈良の立地。多彩な文化を背景にした人が集う、多様なニーズがあふれる街には、PBLの種があちこちに転がっている。

     「寺社や街など幅広く地域の協力を得て、ICTとは無縁だと思われる世界にまで切り込んでいく。そんな創造的な学生を育てたい」と、奈良ならではのPBLに期待を込めている。

     <PBL> 「Project Based Learning」の略。一つの課題を題材に、チームで解決に向けて計画、実行する学習法。「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の一つの形として注目されている。

    2017年03月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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