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    はっ水生地のヒントは「蓑」…羽生の企業

    介護、災害時のジャージーに

    • 「『昔を今に』が私の物作りのテーマ」と語る金子社長。MINOは簑をヒントに生まれた(5月25日、羽生市で)
      「『昔を今に』が私の物作りのテーマ」と語る金子社長。MINOは簑をヒントに生まれた(5月25日、羽生市で)
    • MINOの生地に水をたらすと、生地の表面で水滴になり浸透しない
      MINOの生地に水をたらすと、生地の表面で水滴になり浸透しない

     羽生市の衣料品製造会社「カネマス」の金子隆社長(70)が、はっ水性の高いジャージー用の生地をつくった。風通しが良く動きやすい利点はそのままに、水や汚れをはじくという、これまでにない生地。開発のヒントは、農作業でかつて雨具として使われたみのだ。東日本大震災の被災地の声を受けて生まれ、介護や災害現場での活用が期待されている。

     新しい生地は、その名も「MINO」。通常のジャージーは糸をらせん状に絡めて編むため、糸どうしの隙間が大きく水を通しやすい。MINOは生地の表面を山なりにし、内部に空気をためる編み方を採用。布に染みこむ水の浸透力に空気の層で対抗する仕組みで、はっ水性を高めることに成功した。

     MINOの開発構想は、2011年の震災直後に始まる。カネマスは、福島県などの小中学校向けに体操着やジャージーを製造・販売してきた。金子社長は震災後、顧客が多かった同県いわき市に見舞いに訪れた。宮城県の知人からは「風雨に強い温かい上着がほしい」という声を聞いた。被災地で清掃ボランティアをしていた団体からは「服がすぐに泥で汚れてしまう」との電話もあった。

     「被災地のために、水や汚れに強いジャージーを開発できないか」。思いを巡らせた。昔はどうやって風雨をしのいでいただろう――。そして、幼少期に近所の農家が着ていた蓑にたどり着いた。

     インターネットで探し出した職人に蓑を作ってもらい、構造を調べた。素材のワラは内部に空洞があり、水が中に浸入しにくい。同じ構造を生地で再現すれば、はっ水性のあるジャージーが実現できるはず、と考えた。

     だが、開発には更に数年を要した。取引のある生地の製造会社に試作品を依頼。できあがった生地を雨にさらして実験した。生地の内部にできる空気の山が大きくても小さくても、水を通してしまう。「私の仮説は間違っていたのか」と悩んだ。試作と実験を繰り返し、ついに水を通さない絶妙な編み方のバランスを見つけた。最終的に、100回水洗いしてもはっ水性が落ちないことを確認した。

     MINOは昨年2月、県内中小企業の創造的な取り組みに贈られる「渋沢栄一ビジネス大賞」のベンチャースピリット部門で最高賞を受賞した。同年7月に特許を取得し、ブランドとして本格的にスタートした。業務中に傘を差せない介護職員向けのジャージー上衣(税抜き8000円)や、車いす利用者が生地を巻き込む心配のないレインコート上下(同1万1000円)などを開発。更に多くの分野での活用を目指し、販路につながる業者を募っている。

     「物作りは発想力。あるものを組み合わせ、なかった物を作るのが面白い」と金子社長。今後も培ってきた技術で物作りを「死ぬまで続ける」決意だという。

    2018年06月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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