文字サイズ

    広がるトワイライトステイ 子の孤立、地域で防ぐ

     夜に1人で過ごしている子どもに“居場所”をつくる取り組みが、県内で進んでいる。今年度から始まった国の生活困窮者自立支援制度の一環で、「トワイライトステイ」と呼ばれ、NPO関係者や地域のボランティアが子どもたちと一緒に遊んだり、食事をしたりしながら優しく見守る。(北瀬太一)

     大津市野郷原のNPO法人「あめんど」の理事・恒松勇さん(48)は毎週火曜、近くの放課後児童クラブに小学生を迎えに行く。往復20分ほどの道のりだが、道草に付き合い、往復90分ほどかかることも。児童が自宅の部屋から出て来なくなり、根気よく待ち続けたこともある。

     2日夕も、恒松さんは携帯ゲーム機を持って友人宅へ向かった児童を30分ほど外でじっと待っていた。児童は時折、ドアを開けて恒松さんが待ってくれているかを確認する。その様子が愛らしい。恒松さんは「子どもとの距離感が大切。何事も強制せず、つかず離れず、見守るような感じですかね」と説明する。

     活動は火曜の午後5~9時。現在は学校を通して紹介を受けた小学生3人がスタッフと竹とんぼを作って遊んだり、手作りの料理を食べたりして過ごす。

     マンツーマンで大人が子どもに向き合えるよう、運営はNPOの4人に加え、龍谷大の学生や地元の民生委員ら3、4人がボランティアで手伝う。子どもやスタッフらの食費は、約10人全員分で1食計1500円。市や民間団体の支援で賄い、遊び道具などは施設にあるものを工夫しながら使う。

     活動を続けて1年がたち、子どもたちには変化が現れてきている。当初は自分の意見をうまく伝えられず、粗暴な言動が目立ったが、家庭的な雰囲気を大切にすることで、落ち着いて気持ちを言えるようになってきた。

     恒松さんは「1人ひとりをじっくり見ることで、『私は気にされている』と感じてもらい、子どもたちが安心して居られる場所になれば」と語る。

     ◇

     こうした「トワイライトステイ事業」は、市が市社会福祉協議会に委託し、2013年度に国のモデル事業として採用された。通常の放課後児童クラブなどは時間が夕方までで、その後の時間に子どもたちを支える取り組みとして期待されている。

     市内では現在、「あめんど」、地元のNPO法人「CASN」、幸重社会福祉士事務所(京都市山科区)が実施。小学生から高校生までの計6人が週1回通っている。

     ◇

     取り組みの輪は広がり始めた。県内の社会福祉法人や福祉団体など約230の個人・団体で作る「滋賀の縁創造実践センター」(草津市)もトワイライトステイに着目し、特別養護老人ホームの交流スペースを開放している。

     今年2月から始め、現在は大津、甲賀両市の福祉施設4か所に未就学児や小中学生11人が通う。年明けには高島、彦根両市でも始まる予定だ。

     老人ホームには24時間職員がいるため、子どもたちは一人でいる夜でも訪ねられる。入所する高齢者との交流を通じて、自分に自信を持ったり、達成感を感じたりして成長するきっかけになっているという。

     地域で子どもたちの孤立を防ぐため、同センターの谷口郁美所長は「取り組みを県内全域に広げて、1人でも多く滋賀の子どもたちに寄り添えたら」と意欲を見せる。

     ◇高い貧困率問題の要因

     核家族化や少子化、地域の付き合いの希薄化などに加え、子どもが孤立に陥る要因の一つとして、貧困の問題が指摘されている。昼に加えて夜に仕事を掛け持ちし、長時間、子どもを残して自宅を空けざるを得ないケースもあるためだ。

     国の「国民生活基礎調査」によると、国内の相対的貧困率は2012年で16・1%。子ども(17歳以下)の貧困率は6人に1人にあたる16・3%で、データがある1985年以降、過去最悪となっている。県内でも増加傾向にある一人親家庭の貧困率は54・6%とさらに高い。

     孤立は学習面での格差や問題行動にもつながりかねない。学校の勉強や人間関係につまずき、相談相手がいないことで、孤立を深めてしまう恐れもある。

     幸重社会福祉士事務所の幸重忠孝代表は「支援の取り組みは全国で広がりつつあるが、子どもの内面に踏み込んで、心のケアをしている自治体や団体はまだ少ない」と指摘。

     大津市社協の井ノ口浩士さん(40)は「機運をさらに高め、行政や団体、専門家が連携して子どもを孤立から救い出せるようにしたい」と語る。

     ◇

     相対的貧困率 国民の世帯所得を基に算出。全体の真ん中に位置する人の半分の額(12年は122万円)に満たない人の割合を示す。経済協力開発機構(OECD)が定義している。

    2015年12月12日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て