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    訪日外国人ツアー密着 農家と触れ合い満喫 

    • みよ子さん(右)らの説明を聞き、すし飯を混ぜるコーラーさん(大津市で)
      みよ子さん(右)らの説明を聞き、すし飯を混ぜるコーラーさん(大津市で)

     地域の観光振興に向け、訪日外国人客(インバウンド)に視線が注がれている。政府観光局の発表では、2015年度の外国人旅行者数は約2136万人となり、今後も増加見込み。観光都市がひしめく関西で、県内でも彼らをどう呼び込むか、様々な取り組みが模索されている。大津市で行われた体験ツアーを取材した。(生田ちひろ)

     先月下旬、米国のテレビなどで活躍する料理人・ダニエル・コーラーさん(32)が、琵琶湖の西側にある大津市仰木を訪ねた。

     今回が初来日。近年、米国で餅に対する関心が高まっており、本場の日本でその文化に触れようと機会を探る中、湖西で開かれる外国人向け農村体験ツアー「ツールドラック」を見つけた。料理研究も兼ね、東京や大阪、京都を巡る中での訪問だった。

     迎えたのは、築100年近い古民家を構える農家の上坂与市さん(74)、みよ子さん(68)夫妻。「仰木を世界に発信したい」と、自作の農作物を使った餅つき体験や郷土料理で外国人観光客らを歓待している。

     コーラーさんはまず、添乗員と棚田が広がる地域を散歩。1年を通じた稲作の流れのほか、古くからの米どころとして比叡山延暦寺と縁が深く、今も祝い事の度に餅を使うという歴史、風習を学んだ。

     続いて夫妻に教えてもらいながら、臼ときねの餅つきを体験。和気あいあいとした雰囲気で、ちらしずしも作り、鶏のすき焼き、納豆餅なども並んだちゃぶ台を囲んで食事を楽しんだ。

     米国で知られる「モチ」は求肥ぎゅうひで作られ、粘りが少なく、甘い。コーラーさんは食感の違いや砂糖を使わない作り方に驚き、「同じ名前なのに全く別物。本物の餅や文化を米国に伝えたい」と意欲を語った。

     生産現場と消費地が分断され、食品がどう作られるのか、消費者の基本的な知識が乏しくなっているのは、農業の産業化が著しい米国でも同じだ。

     食品の歴史や作り手、栄養素などの紹介を重視するコーラーさんは今回、餅がどう育まれ、地域に息づいているかを知った。そしてこの地で受けた温かいもてなしに、「これこそ求めていたもの」と笑顔を見せた。地域で暮らす人たちと心を通わせられたことが、何より満足だったようだ。

     ◇郷土文化で「非日常」体験

     県によると、2014年に県内を訪れた外国人観光客は28万2940人。前年比44・2%増で、3年連続の2桁増だ。

     成田空港に到着後、東京や富士山などを訪れ、関西で買い物を楽しんで関西空港から帰国する「ゴールデンルート」を利用する団体旅行が多いが、リピーターによる個人旅行も目立つ。

     大津市のびわこビジターズビューローの杉山弘志・海外誘客部副部長は「団体旅行だと、夜、ホテルや旅館に入って朝には出ていた。今は個人旅行が増え、その土地らしさに触れる体験型が好まれるようになっている」と分析する。

     県内でも琵琶湖でのレジャーや汽船観光、スキー、サイクリング、果物狩り、信楽焼きの絵付けなどが企画され、各地でアピール合戦が続く。

     ただ、課題も少なくない。駅からの交通の利便性確保のほか、大津市中心部では琵琶湖を生かした誘客、街並みを歩いて楽しめる仕掛け作りの必要性も指摘されている。

     コーラーさんが参加したツアーを企画した同市のBSCインターナショナルの川口洋美・事業部代表は「滋賀らしいおもてなしを突き詰めると、質での勝負になるはず」と強調。「地域には連綿と受け継がれた文化が息づく。その日常こそ外国人にとっての非日常」と誘客へのヒントを示す。

     買い物や食べ歩きが好評な大阪、兵庫、神社仏閣が集まる京都、奈良との違いをどう打ち出せるか。外国人観光客への期待の高まりとともに、県内の取り組みの本気度が問われている。

    2016年07月31日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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