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    カヤニスト 保護に情熱

    • (上)「カヤネズミを探し、自分のフィールドとして観察すれば楽しいですよ」と話す畠さん(彦根市で)(下)草むらに生息するカヤネズミ=畠さん提供
      (上)「カヤネズミを探し、自分のフィールドとして観察すれば楽しいですよ」と話す畠さん(彦根市で)(下)草むらに生息するカヤネズミ=畠さん提供

     ◇カヤネズミ研究者 畠 佐代子さん 48

     自らを「カヤニスト」と称する。カヤネズミを愛する人たちを指す造語だ。

     国内最小のネズミで、大人でも体長約6センチ、体重は7、8グラムと500円玉ほど。田んぼや河川敷などのカヤと呼ばれるイネ科の植物の上に巣を作り暮らしている。

     初めて野生のカヤネズミと出会ったのは大学院時代の1998年6月。探していた京都の草むらで「カサッ」という音が聞こえた。バッタより重く、鳥より軽い感じの音。周囲を見回すと巣があり、そこに緑の草に映える薄いオレンジ色のカヤネズミが。最も感動した一瞬だった。

     子ども時代から動物が大好きだったが、数学が苦手だったこともあり、大学では国文学を専攻した。転機は24歳で結婚し、会社をやめた時。今後を考えたとき、夫が「本当に好きなことをやれば」と言ってくれた。

     頭に浮かんだのは動物、哺乳類の保護活動だった。大学で専門的に学ぼうと受験を重ねたが失敗。そんな時、オープンキャンパスで訪ねた大阪市立大の教授が大学院の受験を勧めてくれた。半年ほど猛勉強して見事、合格。研究対象を、生態がよく分かっていなかったカヤネズミと決めた。98年の4月のことだった。

     以来、カヤネズミ一筋。車で6000キロを走り、生息するフィールドを探し、車中泊しながら研究を進めた。研究するほど、そのかわいさ、魅力にはまっていったが、生息できる環境が激減していることにも気づいた。研究のフィールドも翌年には残土置き場になって破壊されていく。「こういうことが日本中で起こっているとしたら」。保護活動にも取り組み始めた。

     99年には生息分布の全国地図「全国カヤマップ」作りを開始。反響は予想以上で、目撃情報が次々と集まった。宮城から鹿児島までの42都府県で生息が報告されたが、滋賀を含む30都府県以上で絶滅が心配されていた。

     一方で、河川敷の生息環境を守るため、国土交通省の河川事務所に草刈りを一気に行わないように要望する活動も行った。地道な活動が実り、一部の事務所は配慮してくれるようになった。

     昨年、稲を食べる害獣と思われていたカヤネズミが、実は害を及ぼすほど稲を食べていないことを、ふんのDNA分析で突き止め、“ぬれぎぬ”を晴らした。「これまで駆除していたが、これからは守っていきたい」。農家から届いた便りがうれしかった。

     「カヤネズミは人の住んでいる近くにひっそりとすんでいます。ぜひ探してカヤニストの仲間入りを」と、呼び掛ける。(森川明義)

     県立大非常勤講師。京都市在住。2001年、カヤニストの集まり「全国カヤネズミ・ネットワーク」を設立し代表を務める。会員は学者のほか、自然保護に関心のある市民や博物館の学芸員ら全国に約60人おり、情報交換を続けている。著書に「すぐそこに、カヤネズミ」(くもん出版)など。

    2017年08月28日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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