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    <2>一緒に保育園 行きたい

    • 彩愛ちゃん(手前)と保育園に通う姉の瑞希ちゃん(左)。看護師の大黒さんも笑みを浮かべる(東近江市で)
      彩愛ちゃん(手前)と保育園に通う姉の瑞希ちゃん(左)。看護師の大黒さんも笑みを浮かべる(東近江市で)

     東近江市の私立「八日市めぐみ保育園」。ここに医療的ケアが必要な田中彩愛あやめちゃん(4)が1月から通園している。1953年の開園以来、ケア児の受け入れは初めて。川上信園長(50)は「地域で支える仕組み作りの一助になれば」と話す。

     11月6日午後、彩愛ちゃんは看護師の大黒美代子さん(42)に抱かれ、姉の瑞希ちゃん(6)と一緒に絵本の読み聞かせの輪に加わっていた。3~5歳児のクラスに在籍し、遠足や芋掘りなどのイベントにも参加。通園を始めてからの11か月間で以前より、表情が豊かになったという。

         ◎

     彩愛ちゃんは、生後間もなく脳に障害があることがわかった。四肢が不自由で寝たきり。人工呼吸器が必要で、てんかん発作も頻繁に起こす。話すことができないため、目や体の動きで、感情を表現する。父の恵司さん(34)は「怒っていると目つきがきつくなるし、嫌なことがあると歯を食いしばる。分かりやすいですよ」と笑う。

     生まれてから一度も家に帰ることなく、2年を超える入院生活が続いた。一方で母の美由紀さん(38)たちには在宅介護への不安もあった。そんな時、瑞希ちゃんが言った。「なんで、一緒に暮らせないの」。その言葉に背中を押され、2015年7月に大津赤十字病院(大津市)を退院。美由紀さんは「瑞希はほとんど妹に会えなかった。ずっと寂しかったんだと思う」と振り返る。

     家族での暮らしが始まった。すると、また瑞希ちゃんが「なんで、一緒に保育園に行けないの」。

     美由紀さんは働いて、少しでも家計の助けにもなりたかった。相談を受けた川上園長は「どんな子どもでも保育所に通える。そんな世の中に変える一歩にしたい」と受け入れを決めた。主治医も「刺激を与えることで、脳に変化が起きるかもしれません」と応援してくれた。

         ◎

     しかし、すんなりとは進まなかった。初めてのケア児への対応。医療行為ができる看護師を探したが、断られることが続いた。困ってハローワークに求人を出したところ、手を挙げてくれたのが看護師の資格を持つ大黒さんだった。

     昨年11月から同園で働き、医師や訪問看護師、自治体と緊急時の対応を確認した彩愛ちゃん専用のマニュアルを作成。新たな連携を作り、1月からの通園にこぎつけた。

     今、彩愛ちゃんは週3日通園する。周囲の子どもたちは彩愛ちゃんを自然に受け入れているという。大黒さんは気づいた。「子どもにとってはわずかな違い。結局、大人の方が距離を置いているだけかもしれません」

     彩愛ちゃんは友だちに囲まれて成長している。そして、彩愛ちゃんから広がる輪も、どんどん大きくなっている。

    2017年12月14日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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