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    <4>家族にも楽しむ時間

    • 徒競走では、大声援を背に車椅子に乗った子どもらが順位を競った(野洲市で)
      徒競走では、大声援を背に車椅子に乗った子どもらが順位を競った(野洲市で)

     10月14日。野洲市のなかよし交流館で、あるイベントが開かれた。「気管切開の子どもと家族の運動会」。医療的ケア児とその家族ら約70人が出場し、徒競走やパン食い競走、大玉転がし、騎馬戦の4種目で得点を競った。

     昨年に続いて参加した大津市の斉藤綾さん(42)は、車椅子から長女の緑ちゃん(4)を下ろし、抱っこひもで体を固定した。緑ちゃんは脳性まひで体を動かせず、人工呼吸器が欠かせない。「スタート」。大声援のなか、2人は数十メートルを走り終えた。

     会場は、医療機器を使う際に必要な電源を完備し、容体の急変に備えて、医師や看護師ら約30人が見守る。斉藤さんは声を弾ませた。「いつもは人の目が気になってしまうけど、ここではありのままでいられる。だから落ち着くんです」

     企画したNPO法人「びわこファミリーレスパイト(BFR)」(守山市)は、県立小児保健医療センター(同)の小児科医・熊田知浩理事長(44)が2014年、ケア児らの介護で休む暇のない家族に、少しでも休息できる環境や楽しめる時間を提供できたらと、同僚ら約10人で設立した。

     運動会のほかに1泊2日の親子で参加するショートステイや新年会、花見などを行い、6月には初の沖縄旅行も実施した。熊田理事長は「参加者のリラックスした表情を見ると、やりがいを感じる」とほほ笑む。

     ケア児の介護で家族にかかる負担は重い。

     厚生労働省の調査(2015年)によると、主な介護者の睡眠時間は、6時間未満が半数以上を占める。細切れにとっている人も約2割に上り、平均2・3時間。負担を感じることでは時間的拘束が約4割と最も多く、学校などへの通学時の付き添い、夜間の介護が続いた。仕事に就いていない人は7割を超えた。

     全国医療的ケア児者支援協議会役員でNPO法人「ソーシャルデベロップメントジャパン」(東京)の矢部弘司理事長(41)は「家族は介護に追われ、働くことはもちろん、社会とのつながりも作りにくく、当事者なのに改善に向けた声を上げづらい」と指摘。さらに「ケア児を医療、教育、福祉から横断的に支援する体制が確立されておらず、相談窓口も一元化されていない。今後も増えると予想されるケア児と家族が安心して生活できるように対応が急がれる」と訴える。

     BFRは24日、草津市内のホテルでクリスマスパーティーを開催する。費用はインターネット上で寄付を呼びかけるクラウドファンディングを活用したところ、わずか10日間で目標額の50万円が集まった。熊田理事長は「活動に共感してくれる人が想像以上に多く、驚いた。これからも家族の助けになれたら」と話す。

     50組の親子が参加するパーティーに、熊田理事長はサンタクロースになって登場する。楽しいひとときをプレゼントするつもりだ。

    2017年12月16日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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