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    <近江と人と>水の浄化技術 海外へ

    • 琵琶湖のほとりで培った水環境技術をミャンマーで生かす事業を進める権田さん(草津市で)
      琵琶湖のほとりで培った水環境技術をミャンマーで生かす事業を進める権田さん(草津市で)

     ◇大五産業社長 権田五雄さん57

    「湖国だからこそ育めた水環境技術を、ミャンマーの生活環境改善に役立てたい」

     経済成長が続き、アジア最後のフロンティアと呼ばれるミャンマーで、国際協力機構(JICA)の支援事業として、水環境の改善に向けた実証実験に取り組んでいる。県内の6社で協力して進めている事業を主導する立場だ。

     人口約500万人の旧首都・ヤンゴン市は、英国統治時代の130年前に敷設された下水道施設があるものの老朽化が激しく、雨が降ると排水が地表にあふれてくる劣悪な状況という。

     5年前、この話を現地の市長から聞いたとき、「かつて琵琶湖を守った浄化槽。それを設置すれば、必ず効果を実感してもらえる」と確信した。

     ◇琵琶湖守るノウハウ

     県内企業の浄化槽を管理する技術は高い。1977年の赤潮発生を機に、琵琶湖の水環境を守るための「せっけん運動」が起こった。県内の浄化槽の放流水規制値は条例で、水質汚濁防止法よりも厳格に設定された。

     その基準を満たすには、浄化槽を設置するだけでは足りず、槽内の気温、水温、酸素量を厳密に管理する“職人技”が欠かせなかった。浄化槽を設置、管理する県内のほとんどの事業者が、そういう技術者を育成し、ノウハウを蓄積していった。

     ところが、下水道の敷設が進んで県内の普及率が国内上位の89%に達し、設置される浄化槽が減っていくと、10年ほど前から技術者の活躍の場がなくなり始めた。

     「自社だけでも十数人いた。せっかくの技術がなくなってしまうのは、もったいない」。そこで活路を見いだしたのが海外だった。下水道の普及が遅れている途上国で、生活排水をきれいにする浄化槽を設置し、その管理をする技術を伝える。国内では需要が減りつつある技術でも、海外ではまだまだ役に立ち、国際貢献にもなると、JICAが支援してくれた。

    • ミャンマー・ヤンゴンに浄化槽を設置する従業員(2016年3月)=大五産業提供
      ミャンマー・ヤンゴンに浄化槽を設置する従業員(2016年3月)=大五産業提供

     ミャンマーでは、JICAが1年間の現地調査を経て、昨年2月から実証実験を開始した。1億円を投じ、ヤンゴン市内の公園2か所に浄化槽を設置して効果を検証するとともに、管理の技術を伝えている。

     この中で期待しているのが、草津市職員も関わって策定を進めている汚水処理関連のガイドライン。現地の条例のたたき台になるといい、そこに浄化槽の設置推進が盛り込まれれば、事業者にとってもビジネスチャンスが膨らむ。

     今夏にも現地企業と合弁会社を設立するほか、現地で維持管理を教える学校の設立も検討している。「琵琶湖のほとりで培われた高いレベルの技術を海外にも広げたい」と夢は広がる。(川本修司)

      ◇草津市出身。1959年に父が創業した会社を82年に継ぎ、社長に就任した。清掃業、浄化槽事業のほか、飲食業、ビルメンテナンス業、福祉介護事業にも手を広げ、多角的な経営を続けている。グループ全体の従業員数は約1100人。

    2017年03月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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