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    <NEWS EYE>遊覧船彩る船頭の歌

    • 堀川遊覧船の船頭として町並みを案内する錦織さん(松江市で)
      堀川遊覧船の船頭として町並みを案内する錦織さん(松江市で)

     ◇堀川就航20周年…錦織さん、楽しませる努力15年

     松江城(松江市殿町)の外堀と内堀の3・7キロを巡る「堀川遊覧船」が20日で就航20周年を迎え、17日に記念式典が開かれる。2016年度の乗船客は31万2159人に上り、20年で観光の目玉に成長した。支えるのは平均年齢65歳の船頭64人による個性あふれるガイド術だ。船頭歴15年のベテラン女性を取材して人気の秘密を探った。(土谷武嗣)

     「♪何の因果で 貝殻こぎなろうた」。7月初旬、堀川遊覧船から、船頭の錦織登志子さん(68)の歌声が響いた。民謡「貝殻節」だ。「橋の下で歌うと、お客さんから、カラオケに来てるみたいと言われるの」と笑う。

     岡山県出身で、12歳の時に両親と松江へ。城や宍道湖のある暮らし、住民の温かい人柄を伝えたくて02年7月、53歳で船頭に。それまでの化粧品会社の事務や営業所経営の仕事は「何か違う」と感じていた。

     「最初の1年は低い橋の下や狭い水路を通るのが怖かった」と振り返る。マニュアル通りの案内しか出来ず、船を桟橋にぶつけ、客を驚かせたこともあった。

     民謡や流行歌を披露し始めたのは5年ほどたった頃だ。一周45分間の旅を楽しんでほしかった。「歌、良かったよ」という手紙も届き、やりがいを感じていた7年目、肺がんが見つかった。「戻りたい。船頭を続けたい」。医師に訴え、手術で右肺を全摘したが、2か月で復帰した。

     ただ、階段の上り下りや走るのもつらく、歌うこともできなくなっていた。「もう一度、船で歌いたい」。肺活量が多くなければ歌えない曲を練習して左肺を鍛え、3年後、再び船上で歌えるまでになった。

     「いろいろなお客さんとの出会いが醍醐だいご味」と話す。「3回目だよ」と声をかけてくれた人など、乗客との思い出は尽きない。

     近年は中国や台湾、韓国からの旅行客が増え、中国語や韓国語の勉強も始めた。懸命に覚えた台湾の流行歌も披露する。「少しでも楽しんで帰ってほしい。歌いながら、水上での案内を続けたい」。今日も堀川に元気な歌声が響く。

     ■様々な企画で人気

     松江市観光振興公社によると、1960年代半ば以降、悪化していた堀川の水質を改善しようと、松江青年会議所が80年、「よみがえる堀川の会」を発足。船の運航を提案したことが就航につながった。

     就航した97年度は7万5447人が乗船。2年目に屋根付きを導入し、3年目は32万4632人に達した。季節限定の「こたつ船」「風鈴船」や、「花嫁船」などの企画で、ピークの2013年度には36万5436人を記録するなど、30万人台で推移している。

     同公社の天野昭男事務局長(56)は「安全運航を第一に、観光施設との連携を強めて魅力ある遊覧船を目指す」と意気込む。

    2017年07月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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