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    「本物」を気軽に…美術館で心豊か

     JR掛川駅近く、湾曲した建物のガラス窓に東海道新幹線の列車が映る。建物自体がアートと言われる美術館「資生堂アートハウス」(掛川市下俣)だ。昨年秋からの耐震補強工事を終え、今月4日に新装オープンした。訪れるたびに静寂さが体にしみ込み、心落ち着く。ちょっぴり異次元の雰囲気を楽しめる空間でもある。

     同館は1978年にオープンし、来年で開館40周年を迎える。設計は、後にニューヨーク近代美術館新館などを設計した国際的建築家谷口吉生氏と高宮真介氏が手がけた。銀色に輝く外観や、上から見るとS字形のカーブを生かした斬新なデザインで、70年代を代表するモダニズム建築と評価され、80年に日本建築学会賞を受賞した。美術ファンは、建物と美しい芝生、野外彫刻がある風景も楽しむことができる。同館マネジャーの丸毛敏行さんは「建物ができた時、UFOが現れたようだと言われた」と振り返る。

     資生堂はメセナ活動(芸術文化支援)の先駆けといえる企業だ。初代社長の福原信三氏は現存する日本最古の画廊といわれる東京・銀座の資生堂ギャラリーを創設(1919年)。新進気鋭の作家たちに発表の場を提供するとともに、作品を買い上げるなどして支援した。福原義春名誉会長は著書で「人間らしい感性を取り戻すためには本物に触れる、美しいものに触れることが必要不可欠です」と指摘している。

     資生堂アートハウスは、それら収蔵作品を中心に常設展や年4回ほどの企画展を開催する。有料の美術館や博物館が多い中、優れた美術品を気軽に鑑賞してもらいたいと、入館料を無料にしている。有料にすることで作品鑑賞の環境が整備できるといった意見もあるが、美術品は企業が独占するものではないとの同社の考え方にもうなずける。美術とは縁遠い生活を送る記者も、時折その恩恵に浴している。

     「見た人に感動を与え、心が豊かになる美術館を目指したい」。福島昌子学芸員の言葉が、静かなエントランスホールに響いた。

    (掛川通信部・磯部濤資 69歳)

    2017年07月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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